898回目 2021/8/28
『三つ子の魂百まで』、なんて言葉がありますが、自覚できてもふつうは直せませんよね。
一回目
お題『穢されたつるつる』
必須要素(無茶ぶり)『豚肉』
文字数『1024文字』 未完
タイトル『変えられない性質』
「うわぁっ!?」
お気に入りのガラス製のお皿を持った瞬間、僕は悲鳴に近い声をあげてしまった。
「気持ち悪!?」
めっちゃヌルヌルしたのだ。たぶん、油か何かで誰かが触ったんだろう。
昨日も食卓にあげて洗ったばかりなのに、なんでこんなことに?
「どうしたの? なんかうるさいけど」
「母さん! 僕の皿がヌルヌルして、それかぁー!!」
ダイニングから顔を出した母さんに近づくと、まな板の上に広がる豚のロース肉。
そして、手に持ったすりこぎとベトベトヌラヌラした手を見て、母さんが豚の脂まみれの手で触ったのは明白だった。
「なんで僕のお皿を汚したの?! っていうかなんで朝から豚肉?! 重くない?!」
「え? 冷凍庫に保存するための下準備だけど?」
「だったら僕のお皿触る必要なくない?!」
「使いたかったすりこぎが、ちょうどあなたのお皿の奥に置いてあったから、つい」
「すりこぎを食器棚に置くなぁ!!」
母さんは自他共に認めるほど家事が得意だが、収納だけはかなりトンチンカンだ。
しかも、本人は場所が分かっている類の手合いなのがタチが悪い。
ものの場所がわからなくなる、という指摘が通用しないのだ。だって、全部把握してるんだから。
でも、弊害がないわけじゃない。今回みたいな『脂まみれの手でベタベタ触る』のなんて、日常茶飯事だ。
よく言えばおおらか、悪く言えば雑。それがうちの母さんであり、矯正不可能な性質だ。
「朝食のサラダに使いたかったのに、ベタベタじゃないか!」
「じゃあ洗えばいいんじゃない?」
「母さんがやったんだろ?! 母さんが洗ってよ!」
「あら、そうやってこれからも全部私に丸投げしていくつもり? 一人暮らしをするようになったら、困るのはあなたじゃないの?」
「ぐ、そ、そうだけど、今は関係ないし」
「それに、お皿なんて他にいくらでもあるじゃない。お気に入りなのは知ってるけど、そればかり使うのも変でしょう? そんなに大事なら、洗ったり収納したりも自分でやればいいじゃない」
「う……」
一応、正論な指摘に二の句が継げない。
まぁ、自分でも自覚はある。こだわりが強いくせに面倒くさがりだから、物を大事にするけど管理は丸投げしてしまうんだよな。
開き直ってしまうと、それが僕という人間なのだから仕方がない。
だって、面倒なものは面倒なのだ。
「ほら、//(時間切れ)
二回目
お題『贖罪のダイエット』
必須要素(無茶ぶり)『豚骨ラーメン』
文字数『987文字』 未完
タイトル『贖罪ダイエット』
「あっ」
気づいた時には、もう手遅れだった。
立ち上がろうとした椅子から浮いたお尻が、バランスを崩して再び落ちる。
すでに座面があった場所は着座場所から遠のき、わずかに落下距離が伸びて加速する。
その寸前には、運悪く手からスマホがこぼれ落ちていて……。
バキッ!
「いでっ!?」
最悪なことに、僕は自分の体重でスマホを完全に破壊してしまった。
「二十三、二十四……にじゅう、ご」
回数を数えながら、自分の部屋で上体起こしを繰り返す。
スマホを事故で壊してから、一ヶ月。
僕は今、ダイエットに苦心していた。
「にじゅ、ろく……にじ、なな……」
それが、親から言い渡されたスマホの買い替え条件だったから。それもある。
大好物だった豚骨ラーメンの食い過ぎでデブだった体が、スマホを簡単に割り砕いたから。それもある。
でも、一番はやっぱり、自分に罰が欲しかったから。
「に、はち……にじ、く……さ、んじっ!」
バタンッ! と騒がしい音を立てて体が床に叩きつけられた。
今まで運動を避けてきた体には、少ししか思えない回数の筋トレもキツい。
それでも、僕はやめたいと思えない罪悪感でいっぱいだった。
「はぁ! はぁ! はぁ! はぁ!」
僕が壊したスマホは、無理を言って購入してもらったものだ。
うちはあまり裕福じゃない。それなのに僕自身は大食いで、いつもお金ばかり使わせてきた。
そこに加えて、高校進学を機にねだったスマホは、本体価格もそうだけど月々の維持費もバカにならない。
スマホを契約してから、僕のご飯の量が明らかに減ったくらい、家計には痛手だったはずだ。
それを、僕はあっさり壊してしまった。
今まで迷惑をかけてきた食費の集大成である、太った体を使って。
「はぁ! はぁ、っ!!」
息を整えてから、僕は無理やり立ち上がって、今度はスクワットを始める。
膝への負担がすごいから、普通の人より足は曲げられない。
でも、自分の体を壊さない範囲で、ゆっくりと、確実に回数を重ねていく。
スマホを壊した、と誤った時の親の顔が忘れられない。
もう、怒る気力もないみたいな、疲れたため息をこぼしていた。
僕がダイエットを始めたのは、罪滅ぼしだ。
おやにくろうばか//(時間切れ)
お題の漢字が少し難しかったですが、何とかこじつけられたと思うしかないです。『食材のダイエット』なら、結構思いつくんですけどね朝バナナとか。




