表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
876/1238

877回目 2021/8/7

 何でこんなもんを主題にしたのか、ちょっと謎です。


 一回目

 お題『人妻の世界』

 必須要素(無茶ぶり)『京都』

 文字数『972文字』 完結


 タイトル『社会の底辺のその先で』


「誰か、お水もらえる?! この子吐きそうなんだけど!」


「ごめーん! お化粧品持ってくるの忘れたのー! 誰か貸してー!」


「あ! 誰?! こんなところに下着脱ぎ散らかしたの!!」


 大部屋の中でたくさんの女が行き交い、声が飛び回り、むせ返るような香水の匂いが充満する。


 男としては思うところがないわけではないが、どうも夢の世界の裏側を見せられた気分で、あまりいい気はしない。


「えっと、この人たちが商品、ですか?」


「ああそうだよ。あれ? 説明受けてない?」


「初耳です」


「ふぅん。でもまぁ来ちゃったもんはしょうがないから、諦めて女衒やってよね」


 今日から上司になった小柄な中年のおっさんは、人好きのする笑みでとんでもない仕事を押し付けてきた。


 ぜげんって……最初なんのことか分からなかったけど、今なら少しはわかる。


 多分これ、性風俗関係の仕事だ。裏にやばい組織とか絡んでるアレだ。


 歩合給の営業職って聞いてきただけなのに、なんで社会の裏側的な仕事やらされそうになってんの、俺?


「えっと……具体的にはどのような仕事を?」


「は? それも聞いてないの? なんだ、最近の人事部はマニュアルも読まねぇのか」


 面倒くさそうな上司さんは、「ここで待ってろ」とお達しした上で、人事部? の人たちの悪口を散々言いながらこの場を離れていく。


 あの人、人事の人だったのか……普通にスーツ着て清潔そうな見た目だったから、あっさり騙されてしまった。


 ノリで京都まで来たのに仕事をすぐにクビになって、ホームレス寸前まで行った時に声をかけられたんだから、人材の再利用って感じなのだろうか?


 人間、やっぱり見た目じゃないな。しっかりしたように見えても、こんなやばい仕事斡旋するような人もいるんだ。もう少し疑ってかかろう。


「あれー? 君見ない顔だね? 新人さん?」


「あ、はい。仕事内容も知らされずに来ました。すみません……うわ、めっちゃ美人」


「あらありがとう。出会い頭にご挨拶ね」


 ぼーっとしてたら大部屋のお姉さんから声をかけられて、振り返ったら超絶美人で普通にビビった。


 仕事着なのか、やたら色っぽいというか露出が多いというか、そんな格好で近づかれたもんだからドキドキが収まらない。


「君は//(時間切れ)




 二回目

 お題『楽観的なババァ』

 必須要素(無茶ぶり)『醤油』

 文字数『801文字』 完結


 タイトル『さよなら』


『きっとなんとかなるさ』


 それが、うちの祖母の口癖だった。


 実際、なんとかなるようなことなんてなくても、あの人はひたすらそう言い続けた。


 台風で家が潰れた時も、親父が仕事をクビになった時も、両親が借金を作って蒸発した時も、破産手続きから家財を手放した時も、家そのものを失った時も。


 祖母は呪文のように唱え続けた。


『きっとなんとかなるさ』と。


「あぁ……そこにいるのかい?」


 暗くなった部屋の中で、祖母の声が聞こえる。


「ごめんね……ちょっとばあちゃん、足が痛くってね。悪いけど、お醤油買ってきてくれないかい? お小遣いもあげるから」


 本当に痛いのだろう。いつも元気な祖母の声は、とても弱々しくて聞いていられなかった。


「……ねぇ。いるんだろ? 返事くらい、しておくれよ」


 僕は返事をしない。できない。動けない。


「あぁ……ダメだ。ばあちゃん、まだ昼間なのに、眠くなってきちゃったよ」


 僕も同じだ。ものすごく眠たい。


 でも、寝たら終わりだって気づいている。


 僕と祖母は、親戚の家の離れに居候させてもらっていた。築年数を怖くて聞けないほどのボロ屋だ。


 意識を失う前、大きな地震があった。


 たぶん、建物の下敷きになったんだ。僕も、祖母も。


 祖母の言葉は、本気かうわごとか、僕には分からない。


 認知症ではなかったはずだけど、命の限界が近づいた時に、人が正気を保っていられるかなんて、僕には分からない。


「……だいじょうぶ」


 でも、一つだけ。


 ばあちゃんが日常の妄想に逃げることができていたのなら、良かったと思ってしまった。


「きっと、なんとか、なるさ」


 こんな終わりしか見えない現実なんて見たくもないだろうし、見せたくもないんだから。


「…………」


 それきり、祖母の声はしなくなった。


 僕もすぐに、そっちに行こう。


 それに二つ目も二つ目でなんか暗いですし。あんまり好きじゃないのに、気づけばバッドエンドを書いていること、ありますよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ