873回目 2021/8/3
かなり対照的な短編二つです。
一回目
お題『遅すぎた善』
必須要素(無茶ぶり)『Twitter』
文字数『926文字』 未完
タイトル『余計な一言』
言葉は、考えているよりも扱いが難しい。
成長過程で自然と身につけるものだからか、言葉の善悪を放った後で考えてしまう傾向がある。
Twitterで炎上する例でも、お酒を飲んでいたためにこぼれた言葉を考えなしに投稿した、なんて理由が本当にあったりする。
後悔先に立たず。
自分が引き起こした悪いことは、自分の不用意な発言から始まることが多いんだ。
「おい! 何やってんだよお前!」
その日は学校の屋上にいた。
下足箱の中に入っていた手紙に、呼び出された形になる。
「……え?」
振り向いたのは、一年の時にクラスが一緒だった男子生徒。
体が小さくて中性的な顔だから、女だなんだとからかっていたのを、今思い出した。
そいつは、屋上の落下防止用フェンスの、外側にいる。
「危ねぇだろ! さっさと戻ってこい!」
この時に出た言葉は、純粋な心配よりは不純な焦燥の方が強かった。
自殺する直前で、そのことを伝えたのが俺だけだったとしたら、自殺の原因は俺にあるんじゃないか?
そう考えてもおかしくないし、実際にそうだったのかもしれない。
「……いや、いいよ」
「いいわけねぇだろ!」
「君が言ったんだろ? 死んだら生き続けるより楽になるって」
こいつはいじめられていた。俺が加担したことはないが、見て見ぬ振りはしていた。
小さくて女顔のこいつは、女子に人気があった。妹みたいとかなんとかで。
だが性別は男で、変な嫉妬を買って影でいろいろやられていたみたいだった。
不意に、屋上に上がるこいつを見かけて、少し話したことがある。
どうしてもしんどくて死にたくなったら、どつすればいい?
……それに俺は、思ったことをそのまま口にした。
「あんなの冗談だろ!? 生きてりゃ、あー、たぶんいいことあるから!」
「……そうだね」
無表情だった顔がようやく動いた。
小さな笑顔に、安堵しかけた。
「そう思えたら、よかったのにね」
「待っ、」
そいつは、一瞬で見えなくなった。
即死だったらしい。苦しまずに死ねたのは、不幸中の幸いだったのかもしれない。
おれがはじめて、//(時間切れ)
二回目
お題『うへへ、川』
必須要素(無茶ぶり)『チューペット』
文字数『980文字』 完結
タイトル『友達と夏休み』
冬場には足湯ってあるけど、夏場は足水が気持ちいいよね。
「はぁー、夏だねぇ」
「過ごし方はひと昔前の日本だけどね」
「いいじゃないの、情緒があってさ」
「川に裸足突っ込んでチューペット舐めるのが情緒か」
「クソ田舎なんだから、クソ田舎っぽいことしてもバチは当たらないでしょ」
「せめてど田舎って言えよ、間違ってないけど」
女二人で山の中、透き通った川で足を冷やしながら駄弁る、贅沢な時間の無駄遣いよ。
クソ田舎の過疎化した学校の学生なんて、山猿みたいな娯楽しかないよね。
まぁ、チューペットみたいな氷菓子があるだけマシか。
「にしても、外はこんなクソ暑いのに、どうして山から流れる川の水ってこんな冷たいんだろ? 温くならないかな普通?」
「どうだろ? ここにいる時だけならエアコン入らずだし、別段困ってないからいいんじゃない?」
「それもそうだね……あ、釣りする? なんか釣れたら食べようよ」
「釣り竿もバケツもクーラーボックスもあるんだから、最初からその気だったんでしょ?」
「勉強は手抜きでもいいけど、遊びは全力でやらないとね」
「あ、大学行く気ないな、こいつ」
とか言いつつ、釣りに付き合ってくれるんだからノリがいいよね。
ま、同年代の幼馴染で唯一の同級生だからかな。他に友達がいれば相手にしてくんないかも。
「んー? どしたー?」
「別にー? クソ田舎じゃなかったら、私たちってこんな風に遊ばなかったのかなーって!」
同じとこで並ぶのもなんだし、と距離を取って釣りをしてたから自然と声が大きくなる。
今日は少し風が強いのか、山の木がザワザワ騒いでうるさいし、余計に声を張ってしまう。
「あー、都会っぽいことしてたかもなー! カフェ行ったりとか、プリクラ撮ったりとかー?」
「んーや、そうじゃくてー! お互い別々の人と遊んでたんじゃないかなーって!」
「はぁー!? それはないでしょー! あたしらはどうせ、どこ行ってもおんなじようにダラダラつるんでるよ、きっとー!」
……へぇ、そんな風に思ってくれてたんだ。
「……うへへ」
「いつになく気味の悪い笑い方やめろー?」
どうやら私の嬉しくなった笑い方は、長年連れ去った幼馴染をもドン引きさせるらしい。
……ちょっとショック。
人間関係って、どこでどう転ぶかわかりませんからね。言葉の重みはいつも感じています。




