表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/1238

87回目 2019/6/10

 内から見ても外から見ても、『テンプレ』ってボコボコに叩かれている印象がありますよね。


『なろう』ではとかく非難の対象となりやすいテンプレ要素だが、それは『人間の感性からして外れのない王道』から作り出されたものを基盤にしている。


 それは文化で細部の違いはあれど、国も人種も時代も関係ないグローバルな価値観としての『王道』だ。


 共通認識、集合知、無意識下の普遍的価値観……言い方は何でもいいが、より多くの人間が等しく好ましいと思うストーリーラインが『王道』であるのなら、本来ならこき下ろされることはないはずだ。


 それでも流行と売れ筋を重視するラノベ、ひいては『なろう』で発展した『テンプレ』を攻撃するような声が増えてきたのはすなわち、『()きたから』という理由が大きいのだろう。


 どれだけ面白い物語であっても、それは『面白いと感じやすい』だけであって、『何度触れても絶対的に面白い』ものなどあり得ない。


 人間は水と食べ物や睡眠が足りなければ死ぬが、反対に『退屈』で満たされてしまってもまた死んでしまう。


 だからこそ、人間は生存欲求が満たされた状態になれば、次に重視するのは娯楽の(たぐい)なのだろう。


 しかし厄介(やっかい)なことに、人間は上述の通り『()きる=耐性がつく』生き物だ。あらゆる環境で生き延びるために必要な『適応能力』ではあるが、それは『悪環境』だけでなく『良環境』にも慣れてしまう。


 生き抜くのに厳しい土地や環境でも『住めば(みやこ)』や『(ごう)()っては(ごう)に従え』といえるように、すでに天国だとすら思える最上で快適な環境でもまだ『隣の芝生(しばふ)は青い』のだ。


 つまり、『なろうテンプレ』として地盤が固まった『異世界系』に分類する各種テンプレ(転移・転生・追放・スローライフ・悪役令嬢・乙女ゲームなどなど)以外の、新たな『王道(テンプレ)』を寄越せ! と言われているのだと考えられる。


 読者様側の意見は常に決まっている……()きないよう真新しさも加えながら、確実に面白いと安心できる物語を作れ、である。


 だから、一つの大ヒットした作品が出れば新たな『テンプレ』が生まれ、()きられるまで使いつぶされた後で新たな大ヒットが出るまで待ち、そうやってブームは人々の感性をすり切りながら移っていく。


 確かに、小説でもマンガでも映画でもドラマいいが、エンターテイメントは価値観の多様性を歓迎すべきだ。『誰でも刺さる』作品は作れやしないが、『誰かに刺さる』作品が出れば楽しんでくれるファンはできる。


 だが商業と密接に絡み合ってしまえば、『少数(だれか)に刺さる』だけでは『(たいくつ)』になり、『多数に(だれでも)刺さる』ものでなければ『(おもしろい)』と見なされなくなった。


 こうしてどんどん『個人の価値観』がつぶされ、もてはやされる『集団の価値観』に依存(いぞん)していく『孤独への恐怖マジョリティー・コンプレックス』が加速していくのだろう。


 と、どうにもならない私見(しけん)を垂れ流したところで何かが変わるわけでもない。


 それでも改善案を考えるならば、すでに『テンプレ過渡期(かとき)』に入っていると仮定して次なるブームを生み出すべきなのだろう。


 すなわち、『新たな王道(テンプレ)』の開発である。


 個人単位では『流行ジャンルとは別ジャンルで大ヒット作を作れ!』という無茶ブリ以外の何物でもないが、それが望まれている空気は感じられることだろう。


 前向きに考えれば、『ブームの火付け人』という絶対的な地位(そんざい)へ一気に駆け上れる可能性がある。自分の発想力や開発力への自負心に加え、荒野への冒険を楽しめるだけの挑戦心があれば、ぜひ試してもらいたいものである。


 ただ、作者側としては『テンプレにしやすい物語』である方が望まれるだろう。とあるエッセイで見かけたことではあるが、『自分でも書ける!』と思える物でないと『テンプレ』にも『ブーム』にもなりづらい。


『火付け役』はもちろん『鉱脈(たいくつ)』を打ち崩す爆弾として重要だが、次々と生まれてくる『鉱物資源(あとおい)』がなければ『黄金期(ブーム)』の寿命などたかが知れている。


 あくまで『マイナージャンル』を盛り上げたいと思うならば、後進に渡しやすいバトンを用意することまでしなければ、注目されるのは『作者(じぶん)』だけである。


 より面白く、より万人にウケ、より簡単な『作品群(テンプレ)』の開発……そう書けば、まるで新しい科学物質や物理法則を探すような、途方もないことを要求されている気分になるが、読者様側が求めるのはこういうことだ。


 そもそも、メジャージャンル以外がなぜ『マイナー』なのかと言えば、まさしく『テンプレ』の有無が原因の一端(いったん)だろう。


 作者側からすれば、『マイナージャンル』はハードルが高く間口(まぐち)も狭すぎるのだ。ほぼ同人作品に性質が近くなった『なろう』だと、特に『求められない=面白くない』というレッテルは常につきまとう。


 たとえどの分野であっても、素人(しろうと)は誰だって『面白い・楽しい・うれしい・好き』がきっかけでその道へ進む。


 最初に『つまらない・つらい・苦しい・嫌だ』と思えば、深入りする前に大半は逃げ出すだろう。恋愛物にありがちな『第一印象最悪からの好感度上昇』に近い効果など、『趣味』の世界で生じるはずもない。


 小説――特に『なろう』で言えば、より読まれて評価されて喜んでくれる『テンプレ』から始めようと思うのは、初心者の心理としては当然だ。まず彼らは『小説を書く楽しさ』を知らねばならないのだから。


 そのために『マイナージャンル』で必要なのは、需要(どくしゃ)にも供給(さくしゃ)にも認知度を広げられるだけの『誰もが書けると思えるテンプレ』ではないだろうか?


 たとえば『SF』だが、SA○に代表される『VRMMO』を含むゲーム系ジャンルをのぞけば、『宇宙系ではスペースオペラ』とか『パニック系ではディストピア世界』、後は『空想科学系ではスチームパンク』……は少し毛色が違うか?


 他に『文芸』だと、『純文学系テンプレ』とか『ヒューマンドラマ系テンプレ』、『推理(ミステリー)系テンプレ』に『ホラー系テンプレ』、『アクション系テンプレ』や『コメディー系テンプレ』などは明確なものがない印象だ。(まあ、ジャンルとして補佐(サブ)的な要素が強いというのもあるだろうが)


 まあ『歴史系』であれば、大河ドラマなどを参考にすれば歴史小説・時代小説の『テンプレ』的な進め方は存在するだろう……問題は『資料集め』の面倒くささや『資料の信憑性(しんぴょうせい)』の見極め、そして時に『史実の独自解釈』も必要になるという、とっつきにくいハードルの高さが残ることか。


 残りのジャンルは、残念ながら難しいだろう。


『童話』のテンプレといっても、絵本から古典童話作家まで含めると極端すぎて単一化が難しい。


『詩』などそもそも個別の心象を描写する分野であって(作法(マナー)的なものはあれど)定型化などできはしない。『エッセイ』も似たようなものだ。


『その他』など言い方を変えたらカテゴリエラーであり、完全にフリースタイルな魔窟(まくつ)である。このジャンルが隆盛(りゅうせい)を極めるとしたら、言論統制や弾圧が『とある社会主義国』以上に強まった時くらいしか思いつかない。


 というわけで、『なろう』から新たな『テンプレ』を作るなら、現状で『マイナー』の位置にあり『未開拓市場(ブルーオーシャン)』でもある『SF(ミルキーウェイ)』や『文芸(アンダーグラウンド)』に時間を()くべきだろう。


『テンプレ認定』に必要な条件は、『読者が読んで面白いこと』と『作者が書きやすいと思えること』。


 あとはヒット作を開発(しっぴつ)して、世間に認めさせるだけだ。


 さあ、『なろうテンプレ』に反骨心を抱く有志(さくしゃ)たちよ!


『なろう』に新たな(テンプレ)を吹かせるのは君たちだ!!


 でも、マイナーと呼ばれるジャンルで『初心者が書きやすい定番設定(テンプレ)』を作るのって、めちゃくちゃ大変じゃない? という疑問でした。


 誰か作ってくれませんかね?


 ……無理でしょうか?


 特に『個性の殴り合い』なイメージのある『純文学』とか、『統一規格(テンプレ)』とか作るの無茶ブリだと自分でも思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ