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866回目 2021/7/27

 思えば学生だった時代が遠い過去になってしまいました。


 一回目

 お題『僕の好きな弁当』

 必須要素(無茶ぶり)『胸キュン』

 文字数『1008文字』 未完


 タイトル『小さな勇気』


「ねぇ、よければ一緒に食べない?」


「え? う、うん……」


 四時間目の授業が終わって、いきなり女子から話しかけられたと思ったら、このお誘いだった。


 心臓が胸から飛び出すかと思った。普段、女の子と話もしないし、話しかけられもしないから、余計に。


「机、借りていい? この子と食べたいから」


「いいよー、私学食だし」


 呆然としている間も、隣に座っていた別の女子と交渉していて、その子は机を引っ付けてきた。


 物理的に隣同士になって、ニコッと笑いかけられる。


 胸キュンどころじゃない。胸ズドン! って感じの威力だった。


「いきなりごめんね? でも、ちょっとの間お願い」


「えっと……あ、うん、わかった」


 自分でも何を言っているかわからなくなりそうだったけど、その子の遠回しな言い方でようやく冷静になれた。


 少し頭を下げて目の前で手を合わせている子の視線を辿ると、クラスでもやんちゃな男子グループがいた。


 たぶん、しつこく言い寄られてたか何かしたんだろう。で、断る口実として、とっさに目についた僕を選んだんだ。


 まぁ、そうだよね。中学どころか、小学生からずっと目立たない存在感しかない僕が、女子に興味を持ってもらえるなんてありえないし。


「ほんとゴメン。何かされたら言って。その時は友達と一緒に言い返してやるから」


「ううん、別にいいよ。手を出されたら君も友達も危ないから」


 本音としては非常にありがたい申し出だったが、まぁ巻き込まれただけの僕からすれば当たり前のフォローかもしれないけど、反射的に断っていた。


 だって、さっきから男子グループが僕を睨みつけてきてるし。雰囲気的に、あとでケンカになってもおかしくない。


 僕はヘタレだけど、女子が怪我をするようなケンカにあうのはだめだ、なんて思うくらいの正義感はある。


 僕もただじゃ済まないだろうけど、本当にやばかったら先生や親に助けてもらおうと思う。


「ふーん、優しいんだ?」


「というより、僕が嫌だからかな。危ないのも怖いのも嫌だけどね」


「ありがとう。お礼に、私のお弁当からおかず、わけてあげるね」


 すごく早く話がまとまったのに少し驚きつつ、その子が開いた小さなお弁当を見てみる。


 量は少なめだけど、どれも美味しそうだった。手作りかな? あんまり冷凍食品っぽさがない。


「あ、たこういんなー//(時間切れ)




 二回目

 お題『忘れたい黒板』

 必須要素(無茶ぶり)『美容整形』

 文字数『966文字』 完結


 タイトル『消したい黒板』


 私は学校にいいイメージがない。


「……はぁ」


 登校が早い方で、教室に着くのが一番早かった私は、よく黒板の落書きに遭遇した。


 前日の放課後、誰かが適当に書いて消し忘れたもので、脈絡のない言葉からちょっとした秘密まで、見たくもないものを見せられていた。


 特に女子が描いたと思われる言葉は、たいていが誰かの悪口で、正直いい感情はなかった。


 たとえば、現代文の先生は絶対に美容整形で顔いじってるとか、どこぞのクラスの山田さんは男の趣味が悪くて彼氏が最悪とか。


 学生らしいと言えばらしいけど、それを毎日のように消していく私の身にもなってほしい。


「というか、ここまで毎日やられてるのって、間接的に私への嫌がらせなんじゃ?」


 今日も今日とて、誰かの悪ふざけか本気かわからない相合い傘を消し去った黒板消しにクリーナーをかける。


 この音、朝から聞くにはなかなかうるさくて不愉快なんだけど、指摘してくれる人もいないしなぁ。


 それが終わったら、ホームルームが始まるまで課題をやったり読書をしたり。


 あとは学校生活も友達付き合いもそこそこにやり過ごしてきた。


「……あー、こうきたか」


 早朝の黒板に、直接私への悪口が残されていた日までは。


 さすがに毎日はおかしいと思っていたけど、やっぱりわざと残していたものらしい。


 そういえば、うちの学校って先生か用務員さんが最終下校時間が過ぎたら、各教室を回って見てるって言ってなかったっけ?


 普通、そこで黒板くらい消していってくれてもいいと思うんだけど。サボりか?


「にしても、頑張ったなぁ」


 ルーチンワークで消えていく汚い言葉たちに、少し笑ってしまう。


 語彙力が小学生だし、事実もあればデタラメなこともある。


 そもそも、こんなに根気よく黒板のいたずら書きを続けているなんて、うちの学生はよっぽど執念深いか暇人なのか。


 どちらでもいいか。どっちもそうかもしれないし。


「これだけの情熱を、勉強の方に向けてもらいたいものだけどね」


 クリーナーのスイッチを消して、綺麗になった黒板を眺める。


「さて、今日も一日、授業を頑張りますか」


 私は、机に置いておいた出席簿を手に取った。


 ひとまず、生徒が来るまで雑務でもしていよう。


 たぶん、『黒板』は叙述トリックのつもりだったのでしょう。効果的かどうかはさておき。


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