85回目 2019/6/8
筆が乗ったので、木曜日のテレビネタを連続で書いています。
昨日に続き木曜日のテレビネタから『ヴェルナー・フォン・ブラウン』について話題を書いていく。
番組の題名では『宇宙に魂を売った男』と書かれたように、ドイツで生まれた彼はロケットを飛ばして宇宙(特に月)へ行くことを夢見た。
その思いを抱いて工学系の勉強に情熱を注ぎ、若いときから宇宙旅行協会(だったと思う、ちなみに民間団体)に所属して、当時のロケットによる飛距離の世界記録を更新したそうだ。
が、その記録も宇宙までにはほど遠く、さらなる開発には金がかかると知った彼はドイツ軍(後に○チスの軍にも所属する)に自分の技術を売り込んだ。
第一次世界大戦で敗北したことで『兵器類の製造禁止』となったドイツで、当時の兵器には存在しない『長距離弾道ミサイル』の構想を持ちかけたのだ。
構造が宇宙へ飛ばすロケットと同じ、という理由でヴェルナー氏は開発に邁進する。仲間やデータを集めて実験を繰り返し、ついに弾道ミサイルを完成させてしまう。
しかし、第二次世界大戦の末期にドイツの敗戦が濃厚となることを知ると、仲間をそそのかしてアメリカへの投降を決める――ナ○スの上層部に所属していたにもかかわらず母国を捨て、ロケット開発を行える環境を選んだのだ。
その時に『ドイツは(第一次世界大戦も含め)負ける側だったため、一度は勝つ側に立ちたい』というニュアンスの言葉を発していたらしい。元○チスとしてはとても珍しく、人種や国家への帰属意識がかなり低かったことがうかがえる。
降伏先の候補としてはアメリカとソ連があったらしいが、資金面を重視してアメリカへ渡ったらしい。
番組内では『日和見主義』と称されていたが、自分の夢や欲望に忠実な様子は個人的には好ましくない。
何せ、○チスの上層部に所属していた事実について(アメリカはロケット開発の技術を欲していたため、罪を問うためではなく形式的に)取り調べたところ、彼は『知らなかった』とか『従わなければ殺されていた』と証言したらしい。
ロケット製造のために、収容所から栄養失調気味な人々を集めて強制労働をさせていたのにもかかわらず、だ。伝染病など(およそ二万人が死亡したらしい)で人手が減ったら、他の収容所から積極的に人を集めさせておいての発言であり、開き直りも甚だしい。
ただ……小説のキャラとして見たら、ヴェルナー氏の言動がとてもおいしいキャラクター性であることは否定しない。ほぼ確実に、悪役として栄えるタイプだろう……人間的にはかなり嫌いな部類だが。
その後、アメリカ国籍を取得してアポロ計画にも参加し、人類最初の人工衛星の打ち上げや宇宙のロケット有人飛行(ガガーリンだっけ?)の成功をソ連に許しつつ、月への有人飛行を成功させた。
アメリカとソ連の冷戦における『宇宙開発』という代理戦争を利用して、幼少期からの夢をかなえたともいえる。その執念と行動力は素直にすごいと思うが、やり方も思想も完全に犯罪者に近い。
後にNASAにも所属したらしいが、宇宙への有人飛行が国家の予算をしても莫大であり、開発規模が縮小されると退職、すぐに病気が見つかって鬼籍に入ったらしい。
テレビの内容を思い出しながら書いているので、細かい部分は内容と違うかもしれないが容赦してもらいたい。
ともかくも、ヴェルナー氏は目的のためなら手段をいとわない、絵に描いたようなマッドサイエンティストといえよう。
子供の頃からの夢をかなえた、という面だけを切り取れば聞こえはいいが、その過程において人道的な観点など気にもしない経歴から、『血に染まった功績(というニュアンスの表現)』と称されたのもうなずける。
今までの放送(フランケンシュタインの誘惑E+)では、基本的に科学者の功罪を『功績→軍事利用』などの切り取り方が多かったが、今回の放送では構成が逆だったのが印象的だった。
先に功績をあげて名声が高まった後で、自分の考えに固執しどこか狂っていった人と違い、ヴェルナー氏の描かれ方は『純粋に狂っていた』としか言いようがない。
宇宙開発競争における人類初の月面着陸成功に導いたアメリカの英雄としての成功がなければ、ヴェルナー氏はサイコパス(=反社会的精神の持ち主)と扱われただろうことは間違いなさそうだ。
似たような科学者や研究者だと、『自身の興味や好奇心を満たすため』に人類に貢献する大きな成果をあげ、『それを誰がどう扱おうと関係ない(悪用した側の責任だ)』と主張することが多いように思う。
私は科学者ではないにせよ、そうした技術の『使い方・使われ方』について無関心になってはいけないのではないか? と思わされる、いい機会だと感じた。
ほとんど毎週視聴している番組ですが、一度だけ『水爆』を取り扱った回は見逃しちゃったんですよね。
番組の録画とかしない(できない)ので、また見たいなと思っても見返せないのが不満ですね。
再放送もしないみたいですし……面白いのに。




