826回目 2021/6/17
我ながら精神状態が心配になるわびしい短編でした。
一回目
お題『かっこ悪い道』
必須要素(無茶ぶり)『年収』
文字数『915文字』 完結
タイトル『選ばなかった人生を』
「お疲れ様です……」
アルバイトを終えて頭を下げても、反応してくれる人はいない。
職場では1番の年長とはいえ、バイトリーダーみたいな立場でもない。ただただ、勤続年数だけを積み重ねた役立たずが、俺だった。
四十も超えて、やってることはフリーター。ボロアパートに住んで、ただ生きているだけのしょぼい年収で食い繋ぐ人生。
何のために生きているのか、どうして生きているのか、もうわからなくなってきている。
たぶん、死ぬ理由がないから生きているんだろう。それくらい、夢も希望も絶望もなかった。
「……唐揚げ弁当、ないのか」
帰りしな、コンビニに立ち寄っていつもの晩飯を食べようとしても、目的のものさえ買えない。
仕方なく、隣の生姜焼き弁当を手に取る。あとは、いつものように烏龍茶でも買うか。
酒もタバコもしない。趣味も楽しみもない。無味乾燥な時間だけが過ぎていく。
これでギャンブルにのめり込めるくらいの度胸があったのなら、まだ彩りと張り合いのある人生を送れたかもしれない。
でも、現実はつまらない生き方のまま、惰性で生活しているおっさんがいるだけだ。
「はぁ」
会計を済ませ、また外に出る。ビニール袋の音が、少し耳障りだ。早く帰ろう。
どうせ面白くもないバラエティやドラマを垂れ流して、適当に時間を潰して寝るだけだ。
流されるまま、嫌なことを避けて生きてきた末路がこれか。
もう少し、若い頃に努力と我慢を重ねていたら、もっと格好いい生き方ができたのだろうか?
「……あ?」
ポストの中に何かがあった。取り出してみれば、同窓会の案内だった。
「……行けるかよ」
どうせ、今の肩書きでマウントを取る奴らの集まりなんだ。俺みたいな底辺を生きる奴なんて、居心地が悪くなるだけだろう。
不参加に丸をつけて送り返してやる。それでも、誰も気にしないだろうが。
「……楽しくねぇなぁ」
ダメ人間の明日は、今日と同じできっとクソだ。
ボロアパートの錆びた階段が、断頭台に続く道に見えて、笑えた。
一端に貴族のつもりかよなんて、誰にも気付かれない皮肉が、そうさせた。
二回目
お題『凛としたライオン』
必須要素(無茶ぶり)『化粧水』
文字数『832文字』 未完
タイトル『妥協なき孤高』
芸能事務所のマネージャーになって、そろそろ四年が経とうとしている。
まだまだ仕事に慣れているわけじゃないのに、なんで俺の担当に大物を寄越してきたのか……今でも上に文句を言いたくなる。
「お、お待たせしましたぁ!!」
「遅い!! さっさと寄越して!!」
楽屋に突撃した俺に浴びせられたのは怒声だった。まぁ、こんなのは日常茶飯事なので慣れっこだが。
急遽、買い出しに出なければならなかったのは、俺の担当で一番の売れっ子、宍戸凛のスキンケアグッズが切れたから。
メインはモデルで、そこから女優業でも活躍し、見ての通りの苛烈なキャラクターからバラエティにも呼ばれるようになった、マルチタレントってやつだ。
「本当、すみません! 近くに、同じブランドのやつ、置いてなくて!」
「あー、はいはい! 言い訳も反省も後で聞くから、さっさと手伝って!」
「え?! 俺、後何するんですか?!」
「決まってんでしょ!! メイクは自分でやるけど、ヘアメイクとスタイリストはいるし、スタジオ入りが遅れそうなら共演者やスタッフに詫び入れないとでしょ?! 後で私が全員に頭下げるけど、その前にあんたが先触れしといてってこと!! ほら、さっさと行った!!」
「は、はいぃー!!」
走ってきたのにまた走るのか、と心が挫けそうになるが、今回は凛も含めて仕事に支障をきたしたこちらのミスだ。ちゃんと頭は下げるべきだろう。
テレビでは苛烈で強気なキャラクターで通しているが、凛はその実かなり気配りの人であり、反対に自分にものすごく厳しい。
今回は愛用の化粧品やメイク道具が紛失、破壊されていたのだが、局にあった別のものを使うのではなく新しく買いに行かせることを選んだ。
一見すると横暴に見えそうだが、凛の肌質は結構厄介で、他の化粧品だとのちに肌荒れを起こす可能性が高い。
一時的に迷惑をかけてしまうことになるが、今後の仕事に穴を開けないためには必要な//(時間切れ)
思い返せばこれまでも、哀愁というか真綿で絞め殺すような雰囲気の内容を、無意識のうちに書いていたような気がします。なんか気づきたくなかった気づきでしたね。




