820回目 2021/6/11
何気ないワンシーンを切り取った、感じですかね。
一回目
お題『幼い視力』
必須要素(無茶ぶり)『うっ』
文字数『1031文字』 未完
タイトル『生得的感性』
物心ついた頃から、なせか血が怖くなくなっていた。
小学校に上がった頃には、ちょっとした事故でスプラッタ系の映像を見たことがある。全然平気だった。
中学生になる頃には、自分が痛みに強い体質だと分かった。同時に、共感性の欠如って特徴があるサイコパスかな、と思うようにもなったけど。
とかく、私は親や周りと比べるとズレのようなものがあると思われた。
大きくはないけど、決定的な隔絶、とでも言おうか。
少なくとも、モザイクをかけなければ流せないような映像を、子供の頃から好んで見ていた私は、かなり不気味な子供だったのではないだろうか?
「……うっ!」
「大袈裟ですね、これくらい」
「いや、これ……うぇっ」
隣にいた同僚が、あからさまに吐きそうな顔でPC画面から目を逸らす。
流れているのは、ダークウェブ内に投稿された殺人動画だ。それも、かなり悪質な拷問の果てに殺されている。
警察のサイバーセキュリティ課に所属して、何となく集めた知識で入った場所は、なかなかに荒廃していた。
ちょっとページを変えれば、銃器や麻薬などの違法物売買を行う通販サイトに行き着くし、動画投稿サイトは不愉快な映像でいっぱいだ。
まぁ、こんなものを職務と関係のないのに、仕事場のPCでのぞいている私も大概だけど。
「……落ち着いた?」
「あんた、なんてもの見せるんだよ……そろそろ消して」
「わかった」
ちゃんと痕跡を残さないよう、入りと同じく出るのにも注意しながらアクセスを切る。
ここで十分対策をとっていないと、簡単にハッキングを受けて個人情報までダダ漏れになるから、油断は一切しちゃいけない。
「そういえば、お昼まだだったよね。よければ食べる? 駅前の美味しいカツサンド」
「……肉はしばらく食べたくない……」
そういうものか? 美味しいのに。
「ってか、あんたはよく平気そうにできるな。あんなもん見た後で食事できる神経がわからんわ」
「外科医とかもそうじゃない? 血と脂と肉で手が汚れた後でも、体力をつけなきゃだからちゃんとご飯食べるでしょ? 似たようなものだよ」
「ネットの監視する私たちが身につけられる耐性じゃないって気づいてる?」
「耐性がないよりマシだと思う」
野菜ジュースだけで体が持つとは思えないし。えっと、机の中に栄養補助食品のゼリーがあったかな。
「食べる?」
「……もらう」
する//(時間切れ)
二回目
お題『ありきたりな保険』
必須要素(無茶ぶり)『栓抜き』
文字数『836文字』 未完
タイトル『火災後、中年夫婦の場合』
キュポン! と、軽快な音を立てて栓抜きから王冠が飛び出した。
「……ひとまず、何とかなりそうで助かったな」
「家が全勝した時はどうしたものかと思ったけど、案外役に立つものね。火災保険って」
男はグラスに手酌でビールを注ぎ、向かいに座った妻のグラスにも瓶を傾ける。
今いるのは仮の住まいである。先ほどの言葉通り、つい先刻まで住んでいた彼ら夫婦の家は、火事によって使い物にならなくなってしまったのだから、さもありなん。
「持ち出せたものはどのくらいある?」
「貴重品が主だけど、他は全滅ね。保険金が入ってくるとはいえ、どこまで元通りになるかはわからない」
「そこまで金をかけてなかったからな。贅沢は言うまい」
グラスを傾ける手は重い。焼けたのは彼らのマイホームで、ローンもまだ残っている。
ある程度の補填は見込めるとはいえ、人生の大きな買い物が一瞬で燃えかすになったのだから、ため息もつきたくなるだろう。
「原因は、わからないのか?」
「心当たりは、さっぱり。寝る前にちゃんと火元は確認したし、他に火事になりそうなものも思いつかないから」
「自分のところの過失じゃないなら、いいか。放火だったら犯人を絶対許さんが」
自分たちのストレスを誤魔化すような会話は、当然ながら弾むはずもなく。
むしろ自分たちの気分を一層下げる内容へ移ってしまい、室内のため息がより深くなる。
「会社はどうするの? お休みする?」
「スーツがないが、幸い金は少しばかり手元に残っている。レンタルでもすれば格好はつくだろう」
「でも、仕事の書類とかは? 一緒に燃えちゃったんじゃ」
「……なんとか持ってきているから、大丈夫だろ」
視線で示した先には、ところどころ焦げ跡がついたビジネス鞄が放り出されていた。
少なくとも、あの中にあった書類は生き残ったようだ。
「まぁ、なるべく休まないようにするさ。もう、金がいくらあっても足りない状況だしな」//(時間切れ)
内容はどちらも物騒よりでしたが、事件が起こっている最中よりも起こりそうな前兆とか起こってしまった後などを好んで書いている気がします。
最近、とみに刺激に弱くなったからかもしれません。傾向としては、あまり歓迎できないかもしれませんが。




