810回目 2021/6/1
実際、『くさや』ってどんな臭いがするんですかね?
一回目
お題『愛と憎しみの使命』
必須要素(無茶ぶり)『バツ印』
文字数『882文字』 未完
タイトル『怨恨の連鎖』
「……はぁ、しんど」
ようやく壁に描き切ったバツ印を見て、筆代わりにしていた腕を捨てる。
毎度毎度、メッセージのために残しているとはいえ、だんだん面倒臭くなってきた。
本当、創作の中で連続殺人する犯人はご苦労なことだと思う。
同一犯を臭わせるための涙ぐましい努力を、こんなところで感じるとは思わなかったけど。
「さて、あと何人だったかな」
真っ赤になった手を、床に落ちてた着衣で拭ってポケットからメモを取り出す。
名前と、その上に横線が引かれただけのメモは、もうすぐ目標をすべて消せると物語っていた。
「長かった……けど、もうすぐ終わるな」
メモ用紙をポケットに戻し、さっき手を拭った服に火をつけた。
火事になってもいいが、それだとさっきした臭わせ工作が無駄になる。変な臭いもしてきたし、ちょうど設置されていた暖炉の中に放り込むとしよう。
「やっぱり、金持ちは好かない」
少し明るくなった室内は、まあ荒らしに荒らした惨状が広がっていた。
適当に引き出しを外してひっくり返した室内は、いろんなものが散乱していて汚い。
最も汚いのは、片腕を半ばから切断され、血溜まりの中で事切れている家の主人だろう。
こいつは社会的権力が高いだけのクズだ。もうこの世からいないんだし、名前も忘れてしまおう。クズに使う記憶容量がもったいない。
「ま、こいつらが俺たちにしたことは一生忘れないけどな」
家族を殺された。恋人を殺された。恩人を殺された。
俺たちは、宗教も思想もない、ただ超個人的な恨みでのみ団結した、なんちゃってテロ組織だ。
目標は決まっている。俺たちメンバーを、直接的にも間接的にも害した奴ら全員だ。
ほとんど俺が実行犯として立ち回ってきたが、バックアップ要員も多く所属している。
俺の仇はまだ取れていない。だからといって、モチベーションが上下することはない……と思う。
「もしかしてあいつら、そういうの計算してターゲットの順番決めてたのか?」
疑うわけじゃないが、邪推できてしまう状況に//(時間切れ)
二回目
お題『早い朝日』
必須要素(無茶ぶり)『くさや』
文字数『1218文字』 未完
タイトル『異臭騒ぎ』
……んあ。
なんか、あかるい……あさ?
ねむ、がっこう、なんじ? にどね……すぅ。
「んがっ?!」
くっっっせぇ!!??
思わず蹴っ飛ばした布団を気にしてられないほどの臭いに、涙目で鼻をつまむ。
さっきまであった眠気は一気に吹き飛び、あくびか悪臭からか涙が頬を伝う。
カーテンから光が漏れ出しているから、朝にはなっんだろう。
枕元に置いていたスマホを見れば、五時四十七分になっていて……?
「はやすぎんだろ」
目覚ましをセットした時間より一時間以上早い。
ってか、この臭いどっからだ? 窓は開けてないから、家の中からってことになるが。
「まはか、火事か?」
真っ先に浮かんだ最悪の展開に、完全に眠気を飛ばした俺は急いで部屋を出る。
「おい、なんだこの臭い!!」
「あ、優斗。おはよー」
急いだ火元になりえるキッチンまで走ってくれば、母親が呑気に何か焼いていた。
ひとまず、家が全勝なんてことにはならないらしい。気が抜けて、知らず尻餅をついていた。
「ちょっと、こんな朝早くからどうしたの? 何かあった?」
「……何かあった? じゃねぇだろ。なんだこの臭い? 火事かと思ったんだぞ?」
「やだ、馬鹿な子ねぇ。そんなわけないじゃない。朝ごはんの準備してただけよ」
「朝、ごはん……?」
それはそれで衝撃的な発言で、俺はすぐに次の言葉が出なくなる。
だってこの臭い、今まで嗅いだことはないが尋常じゃないのは確かだ。寝ている人間を叩き起こす飯なんて、今までお目にかかったことがない。
「い、いや、それより換気扇。換気扇はつけてんだろうな?」
「え? あらやだ、ついうっかり」
俺の指摘でようやく気づいたのか、母親はようやく換気扇のスイッチを入れてくれた。
のんびり屋な母親は、結構な頻度でうっかりをやらかすが、今回は流石に笑えない。
「そもそも、何焼いたらこんな臭いになるんだよ?」
「これよ。実家から昨日届いたの」
そう嬉しそうに見せてきたパッケージには、『高級くさや』と嗅いてあった。
「くさや?」
「簡単に合えばお魚の干物よ。私の実家が漁師だから、たまにお裾分けもらうでしょ?」
「……あぁ、正月とかに鯛のお頭つきとか、食べてるけど」
「それと同じお裾分け。私もくさやは久しぶりに食べるから、テンション上がっちゃった。珍しく早起きしちゃったわ」
母親の反応を見るに、美味しい食べ物ではあるらしい。が、この臭いはなんとかならないものか?
っつか、絶対に服に臭いが染み付いてる。髪の毛とかもヤバいかもしれない。
こんなんで学校行ったら、絶対変な目で見られるぞ。
「……なぁ、その臭いがマシになるの、いつ?」
「えー? もう少ししたら焼けるけど?」
「それと、追加で焼いたりしないよな?」
「? ええ。いっきにやいちや//(時間切れ)
おいしいとは聞いたことがあるんですが、食べたことがないので想像もできないという。たぶんシュールストレミングよりはマシだと思うんですけど、どうでしょう?




