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802回目 2021/5/24

 完結こそできませんでしたが、たぶんこれを書いていた時は調子がよかったんだと思います。


 一回目

 お題『忘れたい美術館』

 必須要素(無茶ぶり)『新聞』

 文字数『849文字』 未完


 タイトル『コーヒーよりも苦い過去』


 清々しい朝の空気と、目を覚ますコーヒーの匂い、そして指がめくる新聞の手触りと音が、全て苦味に変わった。


「……はぁ」


『来館者1000万人突破! 大人気の世界美術館とは?!』


 そんな煽りがつけられた、誰でも知っている内容をつらつらと記述する記事に、思わず目を背ける。


 世界、と名を冠した通り、世界美術館は初めて国境と戦争を無視した、全世界の文化を集めた美術館だ。


 どういう経緯でできたものか、どういう目的で経営を維持しているのか、いくつもの疑問はあるが、現実としてありえない美術館は今も人を受け入れている。


 場所は、あえてどこの国にも属していない孤島が選ばれた。特定の国家に利益が集中しないように、そして美術館のコンセプトを考えたら当然のことだろう。


 ここには、私も行ったことがある。今口にしているコーヒー以上に苦い記憶を刻んだ場所だ。


「久しぶりに、意識してしまったな……」


 これ以上記事を見る気にもなれなくて、新聞を放り出してソファの背もたれに倒れ込む。


 私は、たまたま世界美術館の来場者100万人に選ばれた、少し裕福なだけの男だった。


 当時はいた婚約者とともに、文化的政治的なボーダーレス思想の象徴である美術館に、デートも兼ねて訪れていた。


 そして、追い風もあってプロポーズをして、破局した場所でもある。


 彼女には好きな男がいたそうだ。私との婚約は、できる限り早く解消したかった、と。


 親の介入があっての見合い婚約だったが、それでも一生をともにしたいと思った女性に、こっびどく振られたら流石にショックだった。


 が、好きになったからこそ、ケジメはつけないといけない。そう思い、元婚約者の恋路をお膳立てしてやったりもした。


「それからずっと独身なのだから、私もいい加減、女々しいを通り越して気持ち悪いな」


 もう何年も前だというのに、あの時の返事は鮮明に思い出せる。


 忘れたくても忘れられない、恋だったのだろう。


『社長、本日の//(時間切れ)




 二回目

 お題『不屈の昼食』

 必須要素(無茶ぶり)『七五調』

 文字数『974文字』 未完


 タイトル『とても(おもむき)深い色合い』


 オムライス


 黒と紫


 いろをかし


「いっぱい食べてね!」


「お、おぅ……」


 この日、俺は彼女の手料理をいただくという絶頂と絶命をかねたイベントに臨んでいた。


 もちろん、最初はただただ嬉しいイベントだと思っていた。朝飯も抜いてくる徹底ぶりは、彼氏として健気すぎると全俺が称賛している。


 だが、モノが出てきた瞬間にこのイベントは回避困難な高難易度死亡フラグだと悟った。


 この、真っ暗で刺激臭がする楕円形の消し炭は、彼女曰くオムライスらしい。


 外側の卵が真っ暗なのは、まだいい。火加減を間違えて焦げてしまった、と考えれば理屈は通る。


 スプーンを最初に入れた感触が『サクッ』だったのも目を瞑ろう。焦げたんだもんね、シカタナイネ。


 問題は、真っ暗な衣に潜んでいた中身だった。


 紫色をした粘性の物体は、スプーンを差し込んだ瞬間に猛烈な刺激臭を鼻腔に運んでくる。


 反射的に出かけた咳を止めた俺、超ファインプレーだった。食べる前からヤバいリアクションをしてしまうと、さすがに彼女に悪い。


 が、紫色をしているのが米と具材のオーケストラだと判明し、次の一手が出なくなるほどの恐怖心をあおられた。


 ああ、これはチキンライスなのだと知った時の絶望。そこまで難しいとは思えないチキンライスを、およそ人間の食べ物とは思えない色に仕上げた彼女の調理センスに、涙が出るくらい感動している。


「い、いただき、ます」


「どうぞ、召し上がれ」


 スプーンを握る手が震える。


 モノを近づけると込み上げてくる吐き気と涙。


 俺は一体、何と対峙しているのか。それさえもわからなくなるビジュアルとフレーバーに、意識を失うという逃げ道さえ奪われている。


 彼女が目の前にいるのだ。目の前で、俺が手料理を食べるところを、見守っているのだ。


 逃げられない。逃げるわけにはいかない。


「ぁ、っく!」


 いった!


 命を捨てる覚悟だ!


 初めての彼女によって散る命なら、悔いはない!


「どう?」


「…………」


 咀嚼してみたら、複雑な味が舌を蹴り付けてきた。


 甘いのかしょっぱいのか辛いのか苦いのか酸っぱいのか……どれでもあるように思えるし、どれでもないように思える。


 食感も複雑だ。にちゃりとしたものがは//(時間切れ)


 後から読み返しても、古典文学でよく目にする『いとをかし』とかけた『いろをかし』って言い回しは、我ながらうまいことひねったなと思いました。


 あまり自画自賛とかしないタイプの作者ですが、これはちょっとだけ胸を張れる気がします。言葉遊びはかなり好きな方なので、ハマった気がしたらとてもうれしい。


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