773回目 2021/4/26
私的には体裁を保てたレベルではありますが、盛り上がりには欠けますね。
一回目
お題『凛とした魔法使い』
必須要素(無茶ぶり)『切符』
文字数『1239文字』 未完
タイトル『魔法使いのお姉さん』
「あ、あのっ!!」
急いで、走って、追いかけて。
ようやく追い付けたのは、あの人がこの町をたつ駅のすぐ前。
その人は、僕の声にすぐ振り返ってくれた。
長い髪は夜を纏うように黒く、それでいてキラキラと星のような輝きを振りまいている。
手には大きな木の杖。それがあるか補助のためじゃないことは、昨日の出来事が教えてくれた。
髪と同じように揺れる服装は、カラスのように真っ黒なローブ。いかにもなそれが、単なるコスプレじゃないこともわかっている。
「あら? どうしたの、元依頼人のボク?」
背が高くて、綺麗で、格好いいその人は……魔法使いだ。
僕の家はずっと、不思議な現象に悩まされていた。
夜を迎えれば悪夢を見て、一日に何度も地震が起こり、時には家の物が勝手に浮いて暴れ出す。
幽霊の仕業だと思っていたそれは、この人曰く怪異のイタズラだということで。
何人ものお坊さんや霊媒師を名乗る人たちが失敗した異変の解決を、たった数分で片付けてくれた。
あの杖から手品みたいに広がった光が、僕らのように怪異をわからない人たちにも見えるようにしてくれなかったら、こんなに早く終わったと理解できなかっただろう。
「まさか、まだ何か残っていた? おかしいな、全部一気に始末したと思ったんだけど?」
その人は僕の目線に合わせてくれるように、膝を折ってくれた。優しい目で見つめられて、ついでに頭を撫でられて、ひどく恥ずかしい。
でも、恥ずかしがってはいられない。
僕は、ちゃんとこの人に渡さないと。
「あ、あの、お姉さん……」
「うん。なにかな?」
「……切符、忘れてます」
「え゛」
その瞬間、お姉さんは笑顔が固くなり、僕の頭に乗せていた手の動きを止めた。
ポケットから取り出したのは、お姉さんがウチに来る前に買っておいたといっていた、帰りの切符。
お姉さんが話してくれたから、間違いない。
「えっと……あ、あれ? 本当にない……どこに落ちてたのかな?」
「うちのリビングに。たぶん、お姉さんがあの怪異? を倒してくれた時に、落としたんじゃないかな、って」
あの時、部屋の中では台風のような風がバタバタとはためいていた。
何かの拍子で風に攫われ、消えていった怪異と一緒に飛ばされててもおかしくないほどに。
「あ、あははー……恥ずかしいところ見せちゃったね?」
お姉さんはさっきまでの格好いい感じとは違って、恥ずかしそうに僕の手から切符を受け取った。
魔法使いのお姉さんは格好いい。けど、ちょっとドジで可愛いお姉さんなのかもしれない。
「ごめんね。私の忘れ物を届けてくれて。駅から遠かったのに、大変だったでしょ?」
「ううん。僕も、ちゃんと最後に、お礼を言いたかった、から」
お姉さんは家にきてからずっと、格好いい人だった。
だから、あまり話ができなくて、ずっとお母さんの近くでかくれ//(時間切れ)
二回目
お題『隠されたマンション』
必須要素(無茶ぶり)『10円玉』
文字数『1051文字』 完結
タイトル『10円玉のお導き』
「……あれ?」
気づけば、私は知らないマンションの前にいた。
さっきまで、自販機に入れ損ねて転がった10円玉を追いかけていたはず。
というか、私がいたのは飲み屋街の一角で、近くにマンションなんかなかったはず。
「まあいいや、帰ろ」
10円玉はなんとか確保したし、長居は無用だ。
「……なんでぇ?」
が、さっきから同じ場所をぐるぐると回っているようで、このマンションの近くから離れられなくなってしまった。
改めて周りを見てみると、ものすごく暗い場所だった。都心の繁華街とは思えないほど、街灯が全くない。
近くの光源なんて、それこそマンションから漏れる生活の光くらい。
この建物がなければ、今頃夜の樹海に彷徨ったような感覚になれただろう。
「でも、ここ誰か住んでるの?」
しかし、どこにも行けない場所にあるマンションから、光が漏れているのはかなりおかしい。
家とは『帰るべき場所』であると同時に、『出ていける理由』でもあるからだ。
自分にとっての安全地帯は、外にいても内にいても、『ここがあるから安心だ』と思える場所。
ただ単純にその場所に留まるならともかく、『どこにも行けない場所』を家にしたがる人など、いるのだろうか?
「……でも、足踏みしてても始まらない、か」
不審なところはある。が、ここはこのマンションの住人に頼るしかない。
何故か携帯電話が圏外のままで、友だちにも連絡できないのだ。
一緒に飲んでいた手前、いきなり消えて長時間放置してたら、次の飲み会で私が奢らされる。
せめて言い訳だけでもしておきたい、と怪しげなマンションの住人に電話を借りようと足を踏み入れた。
「あ、あのー」
「え? ニンゲンさん?」
「は?」
そして、玄関ホールに入った瞬間、第一住人と遭遇した。
……二足歩行で日本語が達者な、タヌキと。
「ニンゲン?!」
「どうやってここに?!」
「やばい! 狩られるぞ! ニゲロー!!」
「え、あ、ちょっと?!」
さらに、真っ白な狐やら、顔が鋭い犬やら、尻尾が二本ある猫やらが一斉に顔を出し、騒ぎ始めるではないか。
この場で冷静なものは誰もいない。
私だって、混乱の最中にいて、なんの弁解もできなかった。
「……妖怪の、マンション?」
あぁ、そりゃあ人がいる場所から隠されてるわな。
大騒ぎする獣たちの中、一人ポツンと途方に暮れた私の、精一杯の冷静さがそれだった。れ)
一応『魔法使い』の方はもう少しで完結をつけられたので、惜しいとは思いつつも面白いかどうかはわかりかねます。




