770回目 2021/4/23
地味に『秋雨』が短期間で連続している記憶があり、整合性をあわせるのに苦労した覚えがあります。
一回目
お題『プロの秋雨』
必須要素(無茶ぶり)『一人前』
文字数『822文字』 未完
タイトル『黙々仕事人』
「どうして?! あなたは、西山さんと……」
「それ、西山さん本人から聞いたの? それとも、他人の噂?」
「そ、れは……」
「私は最初から東さんだけが好き。あんたが気に入られていようが何だろうが、関係ないの」
雨が降りしきる中、二人の女性は互いに視線を送る。
一人は悲しげであると同時に悔しげに。
一人は自信と恋の熱に溢れて自慢げに。
「あんたじゃちょっと力不足だけど、同じ人を好きになったんだからライバルね……ま、負ける気しないけど?」
「ぁ……」
言動から自信がうかがえる女性は、そう言って背を向けた。
足音が紛れるほどの雨音に、残された女性の掠れ声も消されてしまう。
「東、さん……」
一人になっても、その女性は動けないまま。
雨が体をひどく濡らし、彼女の心とともにどこまでも冷やしていった。
「……カット!」
と、同時に監督から掛け声があった。
「お疲れ様です! 今からチェック入るんで、お二人は休んでいてください!」
『はーい』
そして先ほど口論をしていた女性たちは、ADの言葉とともに受け取ったバスタオルで体を拭いていく。
ドラマの撮影現場は見慣れたもんだが、恋愛ものは経験ないから変な気分だ。
まあ、俺は自分の仕事をするだけだ。大人しく雨の演出に徹するとしますかね。
「どうです?」
「うーん、あんまりイメージと合わないなぁ……二人とも、演技は悪くないんだが」
「じゃあ演出が?」
「いや、そっちは申し分ない。俺の中にある秋雨ってニュアンスを、きっちりやってくれてるよ」
「そうですか……もう何テイクか、お願いします?」
「だな。ちょっと演技プランを変えてもらうか。よし、楽屋まで頭下げにいってくるか」
助監督と話していた監督が席を立った。こっそり話を聞いていた限り、また撮り直すんだろう。
こっちは演出だから、やると言われればやるしかない。裏方を//(時間切れ)
二回目
お題『許せない貯金』
必須要素(無茶ぶり)『ラガーマン』
文字数『865文字』 完結
タイトル『遅刻魔の負債』
「おら! 後ダッシュ、十本!」
「……運動部は元気だなー」
「はいはい、窓の外を見てないで、君は補修を頑張りなさい」
「はーい……」
たまたま視界に入ったラグビー部の人たちの練習から、たまりにたまった遅刻負債に向き直る。
うちの学校はちょっと独特なルールがあり、風紀を破った生徒に負債を貯める制度がある。
ちょっとした減点式のスタンプラリーみたいなものだ。で、そのスタンプを一定以上集めると、ありがたい補修時間が追加される。
で、俺の場合は基本的に遅刻が原因で補修を受けさせられていた。
まず、俺は朝に弱い。いくら前日に早く寝ても、朝になれば亀よりも愚鈍な生物になってしまう。
昼間に寝溜めしててもダメだから、もう体質的なもんだろう。
次に、学校から家までが単純に遠い。電車とバスを乗り継いで片道五十分は疲れるのなんの。
あとは、この学校が最寄駅からも遠すぎること。ほぼ山の中腹に立ってて、地味に隔離施設っぽい立地なんだよな。
まあ、そうしたいくつかの理由から遅刻スタンプを貯めまくった俺は、数日分の補修で負債を消化しなきゃならん状態にあった。
「はいじゃあこのプリント。次までに全部やっとくこと。サボったらまた負債が追加するから、真面目にしなさいよ?」
「はーい、見にしみてまーす」
「よろしい」
確か隣のクラスの担任だったかな? ちょっと学生のノリっぽい先生に促され、山のようになったプリントを見上げる。
うーん、この学校はやっぱり、風紀に力を入れすぎじゃなかろうか?
自分の落ち度を棚に上げて、どれだけやっても一向に減る気配がない補習の紙たちを見た。
「これ、勉強とは別に加点方式で挽回とかできませんかね?」
「そうだね、地道に課題をやるしかないね」
自業自得だ、甘えるな……って副音声が聞こえた気がした。
少しくらい許してくれたっていいのに……本音を心に秘めつつ、終わりまで長すぎる道のりを歩き始めた。
なお、開始三十分でもう心が折れそうです。
あんまりあわないお題だと、ストーリーよりもどうやって話の中に要素を組み込むか? の方に意識が傾きがちです。
短時間での執筆はそこがしんどくもあり、楽しくもあるんですけど。




