764回目 2021/4/17
無茶ぶりが『あげぽよ』で、なんでこう内容が『さげぽよ』になっちゃったんでしょうか?
一回目
お題『めっちゃ栄光』
必須要素(無茶ぶり)『年収』
文字数『1027文字』 完結
タイトル『降って湧いた栄光』
我が世の春がきた!
「ぉ、おおおぉぉぉ……」
震える手で通帳を見る。
一、十、百、千、万、十万、百万、千万、一億……十億。
まさか、ノリで買った宝くじで一等が当たる日が来るなんて……明日死ぬんじゃないだろうな、俺?
手元には『高額当選者の心得』がある。銀行で受け取りの時、呆然としちまってたから熟読しないとな。
銀行員の話はほとんど覚えていないが、『破産する人も少なくない』ってのはよく覚えている。
金を使い慣れてない奴がポンと大金を手に入れると、金銭感覚が狂ってあっという間に浪費しちまうらしい。
俺だって、同年代の平均年収より低めの生活で満足していた口だ。このマニュアルを熟読して、しっかり金の管理をしねぇと。
「あとは……寄付の強要と知らない親戚には注意しないと、だっけか?」
これは前にテレビか何かで見た情報で、やたらと募金を強要する輩が家に押しかけてくるらしい。
黙ってても寄ってくるんだから、やっぱどこかで個人情報が売られたりしてるんだろう。何が善意を集めていますだ、悪意しかないクソどもめ。
それと同じくらいに警戒しなきゃなんねぇのが、親しいフリして近づいてくる親戚だな。
親父やお袋、兄貴に妹、頑張ってもまだ頑張って生きてる祖父母あたりならいいとして。
叔父とか叔母とか、それ以上遠いともはや他人。そいつらに金の無心をされても、絶対に応じない。
……まあ、身近な家族にも金をだから相手、って思われたら人間関係終わりそうだし、やっぱ黙ってた方がいいのか? 特に妹は口軽いからなぁ。
「それに、いきなり大金が懐にあるからって、劇的に生活を変えるのも違うよなぁ」
まぁ、今の住まいだとセキュリティー面が心配だから、まるっきり変えないのも不用心なんだが。
ひとまず、通帳と印鑑はジップロックに入れて、肌身離さず持ち歩こう。トイレとか風呂も持ち込んだかないと。
「でも、こんだけ金があるんだから、何か贅沢したいよなぁ……」
派手な使い方はまずい。さりとて、持っているだけだともったいない。
考えて、考えて……考え抜いたあげく。
「……よし! 二百円以上のカップラーメンを大量に買い込もう!!」
俺のリッチな発想は、どこまでも庶民レベルだということを思い知らされた。
なお、高いカップ麺にも当たり外れがあることを知ったのは、リッチになった証拠、と思っておこう。
二回目
お題『儚い自動車』
必須要素(無茶ぶり)『あげぽよ』
文字数『1289文字』 未完
タイトル『親なし子』
……えっと、こういう時は、なんていうんだっけ?
「あげぽよ……ううん、さげぽよ、だったかな?」
自転車が壊れた。いや、壊された。
顔を上げれば、いつも意地悪してくる男の子たちが、あっかんべぇ、と目を引っ張り下を出している。
あの子たちは、まぁどうでもいい。問題は自転車だ。
どうやったのか、新品だった自転車はボロボロのグチャグチャにされていた。タイヤも曲がって、ハンドルは変な方向に向いて、車体も歪んでましまっている。
「せっかく、お姉ちゃんが買ったくれたのに……」
私とお姉ちゃんに、親はいない。お姉ちゃんは捨てたと言ってたけど、たぶん捨てられたんだろう。
赤ちゃんの時だから、全然覚えてない。お姉ちゃんはその時にはもう中学生だったみたい。
それから、私のために働いてくれて、頑張ってくれている。
そんな立派なお姉ちゃんが、私の誕生日にって、買ってくれた自転車。
お金のことはわからないけど、きっと無理して買ってくれたんだとわかってる。最近、お姉ちゃんはずっとお腹を鳴らしていたから。
「……ひどいことするな」
悲しい。私のものが壊されたことなんかより、お姉ちゃんの頑張りをバカにされたことが許せない。
人形だなんだと馬鹿にされるのは慣れっこだったけど、これだけは許せそうにない。
「次に会ったら……同じ目にあわせてやる」
この時、私が初めてお姉ちゃん以外の人に覚えた感情が、『敵意』だった。
「頑張れば、持って帰れるかな」
ボロボロの自転車を立たせて、ガタゴトと揺れる車体を押していく。
家に帰ろう。帰って、ごめんなさいしよう。
私がやったわけじゃないけど、本当ならあいつらに頭を下げさせたいけど、お姉ちゃんの頑張りを無駄にしたのは、私も一緒だ。
これからは、大事なものは家の外に出さない。
それと、大事なものを傷つけられたら、我慢しない。
「親なし子でも、隠し子でも、なんとでも言えばいい。私にはお姉ちゃんがいればいい。他人なんて、いなくてもいい」
自分に言い聞かせるように歩く。
行きは自転車で走った距離を、帰りに時間をかけて歩く。
この怒りは忘れない。
この怒りは忘れちゃいけない。
私は敵を、許しちゃいけない。
「うわあぁっ!?」
「いたいよー!!」
「ひぃっ、ひぃっ!?」
別の日。
私は、あの男の子たちに仕返しをした。
手には手のひらで持てるくらいの石。
全員に一回ずつ、殴ったけど全然足りない。
「お姉ちゃんの自転車は、もっとボロボロだった」
「や、やめろよ! ふざけんなよ!!」
「やめない。私たちをいじめるなら、私だってお前らをいしめる」
同じくらいボコボコにしないと、仕返しにならない。
二度といじめられないようにするには、同じくらいいじめ返すしかない。
私たちに親はいない。守ってくれる大人はいない。
「自分のことは、自分で守らないといけないの」
「や、やめっ」
「だって……私たちは『親なし子』た//(時間切れ)
まあ、言葉そのものもかなり古い印象になってしまったので、作中で使う時も微妙な感じにはなりましたが。




