753回目 2021/4/6
お題や無茶ぶりのせいか、ちょっと異色な短編を書いています。
一回目
お題『うわ・・・私の年収、液体』
必須要素(無茶ぶり)『ラガーマン』
文字数『1249文字』 完結
タイトル『ラインマン・コンバージョン』
「申し訳ありませんでした!!」
また、頭を下げる。
怒られて、罵倒されて、時には殴られて。
今日もまた、誰かの怒りを引き受けて、仕事をした気になっている。
「……はぁ」
担当じゃない取引先に頭を下げて、溜飲下げてもらうまで粘った後。
スマホを確認してみれば、実際にミスを犯した上司から鬼のような着信があった。
「……もしも」
『馬鹿野郎!! 今何やってんだ!! 何回電話しても無視しやがって!!』
「……それは、部長の」
『言い訳はいい!! さっさと会社に戻って仕事しろ!! この給料泥棒め!!』
どっちが。
「わかりました」
まだ何か言っていた気がしたが、もうあのダミ声を聞いていたくなくて、気づかないふりをして通話を切った。
……少しくらい、寄り道してもいいか。
「ふぅ」
自販機で買ったブラックコーヒーを喉に流し込み、少しだけ落ち着く。
たまたま近くにあった公園のベンチに腰掛け、会社に戻れば山と積まれる仕事を思い起こして、またため息が出た。
あの部長、仕事ができないくせに大きな仕事はやりたがり、面倒な仕事は全部部下に押し付ける。
そのくせ、部下がこなした仕事は自分の手柄にするんだから、典型的なブラックパワハラ上司だ。
「就職する会社、マジで間違えたな……」
学生時代は、もっと体力気力にあふれていたはずなのに……なんて、おっさん臭いことまで考えてしまう。
ラグビー部に所属していた時に鍛えていた筋肉の貯金も、どんどん切り崩してきたな。
仕事が多すぎてまともなものも食べられないし、トレーニングをする時間もない。
挙句、仕事のミスばかり押し付けられて人事評価も低いから、どれだけ働いても年収換算でも雀の涙しかもらえない。
「転職、すっかなぁ……」
たぶん、あの会社はダメだ。
生産性も将来性もない。
何より、あんな会社でキャリアを積んでも、今後の自分にプラスになると思えない。
どうせ誰かが辞めても、適当な求人文句を考えて何も知らない新卒を取るんだ。
だったら、歯がところどころ折れた歯車が一つ退場したって、どうせそこまで変わらないだろう。
「次は何しようかな……? 営業はキツすぎるし、もっと別の職種で考えてみるか?」
自販機の横にあったゴミ箱に空き缶を入れ、スマホで職安を調べて予約を入れる。
ついでに、辞表の書き方も検索しておくとしよう。善は急げ、思い立ったらすぐ行動、なんて言うし。
もうすぐクソ会社を辞められる。
そう考えたら、ちょっと楽しくなってきた。
希望はない。退職しても猶予は短い。転職も成功するとは限らない。
でも、気持ちは明るい。
「ノーサイドの精神だ。あんな会社、すぐに忘れて新しいチームで頑張っていこう」
ラガーマンっぽいことを言ってみて、無理やり笑顔を作って歩く。
心なしか、いつもの出社よりも格段に足が軽くなっていた。
二回目
お題『限界を超えた僕』
必須要素(無茶ぶり)『美容整形』
文字数『1240文字』 未完
タイトル『発想の限界突破!!』
限界を超えてみたい。
幼かった頃から、なぜかその欲求だけが人一倍強かった。
なんの限界か? 超えて意味があるのか? そう言う疑問はそっちのけで、とにかく限界があるものを超えてみたかった。
なんでも良かったんだ。運動でも勉強でも、ゲームでもIQでも、なんでも。
一応、社会倫理に違反するようなことじゃなければ、何か一つ、自分の限界を超えようと頑張った。
そして、僕は一つの結果を出した。
「……そうして、僕は女の子になりました。以上」
「以上ってなに?!」
大学に入って数ヶ月。
仲良くなった友達に性転換をカミングアウトしたら、早速突っ込まれた。
「うん、戸惑うのはわかるよ。でも、こんな僕でも受け入れてくれると嬉しいな」
「待って待って待って!! 結果じゃなくてまず過程を受け止める時間くれない?!」
突飛な話すぎたのか、友達は頭を抱え出してしまった。眉間の皺も深い。
やっぱり、もう少し時間を置いてから話したほうが良かったのかな?
「えっと……まずなんでそれを私に言おうと思ったの?」
「夏季休暇になったら、一緒に旅行に行こうって言ってくれたじゃない? でも僕、体は女の子にしたけど戸籍上ではまだ男だから、断っておいた方がいいかなって」
「あー、あぁー、そういうことかぁ……」
なぜか彼女の深刻さが増した。
僕としては軽く流して欲しかったんだけれども。
「じゃあ次。その、限界を超える? って、性別の垣根を越えたかったわけ? セクシャルマイノリティだったからとかではなく?」
「うん、まぁそうだね。僕は心まで女の子ってわけじゃないし、今でもジェンダー的には男のつもりだよ。あと、別に性別にこだわってたわけじゃないから、結果的にこうなったというか……」
「……ちなみに、私は恋愛対象に入ってたりする?」
「大丈夫。友達に変な気は起こさないから」
「それはそれで複雑なんだけど……」
「私、そんなに女の魅力ないか?」とかブツブツ言い出したけど、それは僕なりのケジメだからそこまで気に病まなくてもいい。
って伝えようとしたら、また質問が飛んできた。
「改めて聞くけど、性転換手術を受けようと思ったのはなんで?」
「最初は、いわゆるジェンダーレス男子になろうとしたんだ。スキンケアとか色々して、それだけでも男っぽい雰囲気が抜けてきたんだけど」
「あぁ……だから昔の写真見せられてたのに男だと思わなかったのか……だけど私よりもかわいいのは納得いかない」
「でも、やっぱり自分でできる範囲のことをしたって、限界には届いてもその先には行けないじゃない? だからまず、美容整形に手を出して男っぽさを消してみたんだ」
「あんた、想像以上に思い切っててぶっ飛んでたんだね。もう聞いてて怖くなってきたんだけど」
「そうしたら楽しくなってきちゃって、頑張ってバイトしてお金を貯めて、気づいたら行き着くとこまでいっ//(時間切れ)
ちょっと思ったのですが、私ってブラックユーモアは才能ないかも? シリアスなところでダークな笑い、みたいなのをあんまり入れていない気がしてきました。
シリアスはシリアスのままで、みたいな意識が強いんでしょうか? もっと柔軟な考えができたらいいんでしょうけどねぇ。




