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752回目 2021/4/5

 体感ですが、ちょっとだけ完結の打率が上がってきています。


 一回目

 お題『天国の悪魔』

 必須要素(無茶ぶり)『とんかつ』

 文字数『1056文字』 未完


 タイトル『お使い悪魔、天国で道に迷う』


「……迷った」


 周りから突き刺さるような視線をなんとか無視しつつ、地獄に戻るための道を探して彷徨い歩く。


 どうも、天国にお使いに来た迷子の悪魔です。


「うがぁー!! 六千年も生きといて迷子かよ俺!! 方向音痴は死んでも治らねぇってか!!」


 頭をぐしゃぐしゃに掻き乱して、思わず往来で叫び声を上げてしまう。


 あ、と思った時には遅く、ずっと遠巻きで見ていた年若い天使たちが余計に怯えてしまった。


 怖がらせる気はなかったんだが……あーもう!! なんで俺に神様相手のお使いなんて頼んだんだよ、サタン様はぁ!!


「っつか、天国も天国だろ。なんだよ、このどこを見ても代わり映えしない景色の連続は? 俺じゃなくとも迷子になるわ」


 天国だが桃源郷だか理想郷だか知らねぇが、あらゆる苦痛も不安もない世界なんざ、ただ退屈なだけだろうに。


 そういや、清貧がどうので食い物も味がイマイチなんだよな天国。


 その点、地獄は死者を苦しめる監獄の役割を果たしながら、あらゆる堕落の誘惑を揃えた楽園でもある。


 こと、美食や淫蕩や娯楽については、地獄の方が断然充実してる。


 あー、薬草茶に精進料理はもう懲り懲りだ。早く地獄に帰ってトンカツ食いてー。


「……せめて看板か地図でも用意しろよな。マジで同じとこぐるぐる回ってる感覚だ」


 とはいえ、天使に道を聞こうにも悪魔ってだけで避けられるし……詰んでるわ。


 まあ、気持ちはわかる。悪魔と不用意に接触きた天使は、マジでしゃべっただけで堕天扱いされるらしいからな。


 天国、って言や聞こえはいいが、どいつもこいつも潔癖の真面目ちゃんかつ杓子定規な奴らばっかりで、面白みのかけらもねぇ。


 唯一、天国の管理やってる神様はだいぶ自由な人柄だが、あんなんできるのは最高権力者だからだろうしな。


 まったく、ルールで縛った平穏ってのも楽じゃなさそうだ。


「飛ぶか? でもなぁ、騒ぎ起こせば怒られるわバカにされるわ見下されるわで、いいことねぇんだよなぁ」


 特に大天使とかうるせえんだよ。下級天使を怖がらせるなとか、大きな声出すなとか、瘴気臭いから息するなとか、要求が割と理不尽だしよぉ。


 ……こんなことになるんなら、移動中に小馬鹿にされるのを我慢して、大天使の奴らに道案内させとくんだった。


「しゃーない……怒られる前に逃げ出そ、っとぉ!!」


 覚悟を決めて、翼を大きく広げて直上へ飛び上がる。


 人間が想像したコウモリに似た羽だが、割と//(時間切れ)




 二回目

 お題『不本意な駄作』

 必須要素(無茶ぶり)『靴紐』

 文字数『1365文字』 完結


 タイトル『画板と落日』


 ぶつっ、と下から聞こえた音の元を辿ると、右足の靴紐が綺麗に千切れていた。


「……ツイてないな、本当に」


 自分でも重いとわかっているため息を吐き、汚れだらけだろう顔を絵の具まみれの手で拭う。


 イーゼルに立てかけたキャンバスには、朝早くから登って描いた山の絵が、色彩豊かに描かれている。まあ、私が描いたんだけど。


「ダメだなぁ。ダメダメだ」


 でも、全然心にキュンとこない。こんなことは言いたくないけど、駄作だ。


 中学から美術部に入り、ずっと絵を描き続けてきたけど、今が一番しんどくてつらいかもしれない。


 何を描いても楽しくない。嬉しくない。むしろ、徒労感だけが強くなってしまう。


 今日だって、わざわざレンタカーを借りて遠出してまで絵を描きにきたのに、納得のいくものが一枚もできなかった。


「スランプ、なんて。自分にはおこがましくて使いたくないんだけどなぁ」


 絵筆を置き、苦笑いが空気に溶ける。


 私は絵が好きで、ずっと描いてきたつもりだ。


 だから上手だなんて思ったことはないし、自分にできる表現が他人にできないと思ったこともない。


 私は世界でただ一つの作品を作れない。


 そんな気持ちが、ずっと心に留まったまま、好きな気持ちを燃やして絵を描いてきた。


 でも、そろそろその『好き』でさえ、限界が近いのかもしれない。


「なんでだろうなぁ……寂しいなぁ」


 未完成のキャンバスを見上げるように、腰を下ろしてしまった。


 もう立てなくなる気がした。でも、足に力が入らなかった。


 頬に熱い何かが流れる。すぐに冷たくなって、くすぐったくなって、また汚い腕で顔を拭った。


「……あーあ! 何やってるんだろ、私!!」


 周りに誰も人はいない。


 だから、ちょっとだけ騒がしくしてもいいだろう。


「ダメだなぁ!! 私はやっぱり、何をやってもダメなんだ!!」


 子供の頃から得意なものなんて何もなかった。


 他人に誇れるものなんて何もなかった。


 でも、美術部に入った時からは、私はようやく何者かになれる気がしていた。


 そんな幻想も、もう手のひらからこぼれ落ちてしまった。


「……ぁ」


 自分でも何を言いたいのか、わからなくなるくらい叫び疲れた頃だ。


 夕日が、山の麓に沈んでいく。


 オレンジと赤のグラデーションが綺麗で、描けないと思っていたのにまた、キャンバスに閉じ込めたくなってくる。


 世界の景色を、一枚の画布に再現するのが楽しかった。


 まるで世界を作り出しているような感覚がして、ドキドキして、ワクワクして。


 それが、神様が作り出した世界の模倣だと悟って、勝手に落ち込んで、後ろ向きになって。


「あ……あぁ……」


 また、涙があふれてきた。


 止まらない。止める気にならない。


 そうだ。


 私は。


「悔しかったんだ……っ」


『好き』も取りこぼしてしまった自分が。


 情熱が覚めるのを止められなかった自分が。


 ただうずくまって泣いているだけの自分が。


 ただ、悔しかった。


「まだ、間に合うかなぁ?」


 誰かに。


 自分でもわからない、誰かに、なれるだろうか?


 夕日は、ゆっくりと沈んでいく。


 答えは、ない。


 内容はともかく、短編を終わらせられるようになってきたのは明確な成長でしょう。やったね。


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