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751回目 2021/4/4

 うーん、やっぱりタイトルが決まらない。


 一回目

 お題『悲観的な曲』

 必須要素(無茶ぶり)『海苔』

 文字数『1193文字』 未完


 タイトル『音の精神汚染』


「……ん、これ味付け海苔か」


「だったら何?」


「いや、おにぎりは焼き海苔の方が好きだなー、と」


「文句があるなら食べなくてよろしい!」


「ちょ、食べないなんて言ってないだろ!?」


 弁当箱代わりのバスケットが強引に閉められ、失言を撤回しながら頭を下げた。


 この日はピクニック、という名の暇潰しをしている。リフレッシュともいうか。


 最近、作曲活動が進まなくてイライラしていたところを、妹に強引に連れ出された結果だ。


 弁当はうまいし、近場の自然公園は空気が気持ちいいが、俺の中に巣食う焦りは消えない。


 締め切りだけが迫ってくるのに、遅々として進まない作業。


 まあ、原因はわかっているつもりだから、どうにもならないと言えばその通りなんだけど。


「にしても、よく俺を家から連れ出せたな? その、大変だっただろ?」


「そりゃあもう。締め切り締め切りうるさいし、こっちのいうこと全く耳に入っていないし、邪魔しようとしたらモラハラ受けるし、散々だったっての」


「……マジか。全然記憶にない」


「一応聞くけど……ヤバい病気か、薬なんてやってないでしょうね?」


「やってないよ……やってたら、まだはっきりしたんだけどな」


 あぐらをかいていた芝生に寝転び、青空とゆっくり流れる雲を見つめる。


 世界はこんなにゆっくりだったのか……少し前までは、新幹線から見える景色みたいな速度だと思い込んでいたのに。


「俺の仕事、言ったっけ?」


「作曲家なんだよね? 私は聞いたことないけど」


「手厳しいな……これでも有名アーティストに楽曲提供してたり、ドラマのBGMを担当するくらいには売れっ子なんだけど」


「音楽はからっきしだからね。それが?」


「俺さ、音楽を聴いてると色んな感覚が刺激されるんだ。共感覚、って知ってるか?」


「知らない。何? 音楽の専門用語?」


「どっちかっていうと、心理学とか精神科系だな」


 簡単に言えば、音を聞いて色を連想したり、味を感じたりする感覚をいう。


 あくまで主観の範囲だから、誰かと共感覚について話したところで首を傾げられるだけだ。


 それに、共感覚の持ち主同士であっても、リンクする感覚はそれぞれ別なので話が合わないこともある。


「で、なんでか知らないけど、最近俺の共感覚が強く……いや、広くなっているんだよな」


「さっぱりわからん」


「あー、たとえば俺は音楽を聴いたら色を感じる方だったんだが、最近は味とか冷たさとか臭いとか……要するに五感全部が働くようになっちまってな」


 そんな状態で届いたオーダーが、『悲観的な曲調の楽曲』だったものだから、俺の精神はどんどん鬱に引き込まれていた。


「参ったよ。まさか自分が作った曲にも、精神が影響されるようになるなんてな。何を作っても、何を聴いても、俺はむか//(時間切れ)




 二回目

 お題『臆病な傑作』

 必須要素(無茶ぶり)『大学受験』

 文字数『1086文字』 完結


 タイトル『クリエイターの宿命』


「勉強しろよ」


「俺だって勉強してぇよ!!」


 今年大学受験を控えている俺たちだが、こいつはさっきから教科書もノートも参考書も開かず、原稿用紙に文字ばっか書いてやがる。


 文学部に入ってたとは聞いていたが、もう十二月だぞ? 大学入試共通テストも、個別の入試も迫ってるってのに、いつまで遊んでるつもりだこいつ?


「じゃあさっさと参考書でも広げろっつの」


「でもさぁ!! こういう時に限ってさぁ!! めっちゃアイディア降ってくんの!! 書かずにはいられなくなるの!! むしろ今ゾーン入ってて自分の中で傑作ができそうなのぉ!!」


「知らねーよ、大学行ってからまたゾーンに入れよ」


「自由にできるなら文化祭までにやってるっての!!」


 涙目で叫んでくるから、一応辞めたい意思はあるんだな……手は一向に止まる気配すらないが。


「そんなに楽しいのか? たかが文章だろ? 現代文の試験でいやでも読めるじゃねぇか」


「自分で書いたのと他人が書いたのが同じなわけないだろ!? お前、モノづくりの楽しさ知らないやつだな!!」


「だって、中学からずっと野球部だったし」


「ちっくしょう、このアウトドア野郎め!!」


 なんで運動部をディスられにゃならんのだ?


「いいか! 小説でも音楽でも漫画でもいいが、自分が一から考えて作った作品は、自分の子供みたいなものだ!! そりゃあ、昔の子供を読み返したら死にたくなるくらい恥ずかしくなったりもするが、それでも大事なものなんだよ!!」


「すぐそこに迫ってる大学入試と自分の将来を天秤にかけてもか?」


「どっちも大事ですよわかってらぁ!!」


 江戸っ子かよ……っつかこの間に五枚も書いたのか? そのスピードで問題集をやれば、効率いいんだろうなぁ。


「で? 結局今日は勉強しないのか?」


「する!! 今頭の中にあるアイディアを全部吐き出し終わったらやる!!」


「いつになるんだよ、それ……」


 目ぇバッキバキにして腕をガリガリ動かしてる様子からして、無理だろと思うんだが。


 まぁ、こいつの受験だし、人の心配ばっかしてても意味ないか。


 俺は俺で、自分の勉強に集中しよう。


「……できた!!」


「そうか、図書館はもう閉館だってよ」


 こうして、こいつが言い始めた勉強会は、互いに黙々と作業をするだけに終わった。


 なお、こいつの参考書はついぞ鞄から出てこなかったことも追記しておく。


「……なんで勉強やらなきゃなんない時に限って調子が良くなるんだよぉ!!」


「知るか。それと隣で叫ぶな、恥ずかしい」


 世代のせいか、『○○の××』みたいなタイトルになじみがあって、そういうのが多くなりがちですね。


 なお、『即興小説』ではタイトルが20文字の制限がありますので、長文タイトルは実質できない仕様です。


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