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62回目 2019/5/16

 ネット小説では毎日更新が有利ですが、読者を離さないため『引き』の技術も高めないといけません。


 言い換えれば『続きが読みたくなる終わり方』で締めねばならない、ということです。


『よい小説』の定義として、読者が求める要素は数多く存在する。


 物語に求める要素は、キャラクター性、世界観、秀逸(しゅういつ)伏線(ふくせん)(一見すると何気ない描写を装い、後の展開を暗示する技法)から味わえる意外性、戦闘シーン、心理描写、キャラ同士のかけ合い、空気感の明暗とメリハリなどが挙げられるだろうか。


 作者に求める要素は、物語の構成、設定開示の取捨選択、文字数の多寡(たか)を利用した時間感覚の調整、個性的な比喩表現、文章として(あるいは音声として)気持ちのいい言葉の選び方などが考えられる。


 最初は何も考えずただやりたいように小説を書いていたが、変にこなれてくるといろんなことを考えて物語をよりよくしようとするのは、多くの書き手にあてはまることだろう。


 しかし、書き手は一人の人間であるため引き上げられる能力には限界がある。


 すべてを持ち合わせた小説を書ければ理想だろうが、理想は理想であって現実には書けない。たとえ書けたとしても、その作品に『特化した何か』がなければ読者は物足りなく感じるかもしれない。


 何がいいたいかというと、小説を構成するたくさんの要素の中で、作者は『意識して鍛えた要素(ぶき)』を持つべきなのだと思うのだ。


 それはそのまま、『作者の個性』にも通じる話であり、『作者(じぶん)の好き』を再確認するための話でもある。


 突き詰めれば、ジャンルが転じても読者が安心できる『作者だけが持つ魅力』があれば、ファン獲得にはとても大きい力になりそうだ。


 少々遅すぎるくらいだが、私は数年前くらいから『作者目線』で小説を読むよう意識するようになった。


 勉強という面では必要な目線ではあるが、長年私は『読者側なら読者として読みたい』という意識が強く、ただ純粋に物語を楽しむことしかしなかったのである。


 ただ、それでは適切な努力ができていないと考え直し、批判的な目で小説を読むようになった。


 そうすると、自分が何を楽しいと感じるのかをぼんやりながらつかみかけてきた。


 それは最近の私が、購入したまま十年くらい経った積み読(買ったまま放置していた小説)を読むようになったのが大きい。


 当時の私は、ネット小説よりも電撃文庫を中心とした一般ラノベレーベルからの読書が主流で、気になるあらすじがあれば買いあさっていた。


 作者買いやジャケ(イラスト)買いは滅多にせず、直感に任せて購入したのはいいが、いつしかネット小説で満足するようになって読まなくなったものだ。


 残すにしろ処分するにしろ、一度読んでみないことには始まらないと、少し断捨離(だんしゃり)気分も交えつつ読み進めていくこと数冊。


 そこでようやく、私は『自分の好き=のばしたい小説の個性』に意識を向けるようになってきた。


 運良く自分の感性では『面白い作品』と、その逆の『つまらない作品』を連続で読めたからこそだろう。


 私の場合だと、その違いは『キャラの思想が見えるほどのリアリティ』とか、『人物像を裏付ける心理描写』とか、『物語自体の濃さ』とかが『書きたい要素』といえる。


『つまらない作品(ちなみに、当時の某レーベル小説賞銀賞作品)』を読んだとき、私が目に付いたのは『物語の軽妙なテンポ』や『独特な表現』だったが、全体的には退屈だった。


 表現が的確かはわからないが、『物語が薄い』のだ。ラーメンを食べたつもりで春雨を食べた感じかもしれない。


 好みだった『面白い作品(作者買いに抵抗がないと再確認した作者様のラノベ)』は地の文における文章量が多く、そこそこのボリュームを感じられる作品だったから、よけいに落差が激しく感じた。


 なろう内でも、私の好きな傾向を分析することができる。


 たとえば、某レベル8のハンターさんのお話(タイトルは伏せるが、わかる人には丸わかり)はいつも楽しく拝読しているが、こちらは『勘違いのかき分け』がとてもうまい。


 主人公目線の楽観的明るさと、他キャラ視点の悲観的シリアスさの明暗は、見事にコメディ的面白さの強調に成功している。


 そして、『無意識にやらかす主人公』という力により、各話を読み終えた後に『次はどうなるんだろう?』という『興味を引くフック』が自然と存在しているのが、作品の強みだと思っている。


 他にも、某クソゲー愛好家である主人公のお話(これも有名タイトル)では、作者が自他ともに認める『設定厨』でありながら、本編での設定の出し方が『あまりくどくない』のが強みだろう。


 重厚な設定は得てして説明に文字数を取られるため物語が『重く』なりがちだが、その作品では個性が強すぎるキャラクターたちが『ハイテンションで』物語を進めるため、『とても軽く』勢いだけでも読める。


 そのため、この作品では何気ないキャラクターの会話からこぼれた設定が『どう語られるか?』が『フック』となり、どんどん次が読みたくなる謎の中毒性(ほめ言葉)がある。


 このように、自分の好きな作品の何が『好き』かを見直すことで、私が書きたい『好き』が浮き彫りになっていくのがわかる。


 ただし、上記の評価はあくまで私の評価であり、他の方が読めばまた違った良い部分・悪い部分が見えてくるだろう。


 レベル8ハンターさんの場合は、『主人公』と『それ以外』と比較したチグハグな描写が面白さのキモであるため、多かれ少なかれ作中の『同じ時系列』で『別の視点』を描く必要が出てくる。


 すなわち、作品のテンポがどうしても犠牲になってしまうという弱点がある。ハンターさんだと私の主観では極力時系列が重ならないよう描写しているが、それでも作品の足が鈍るのは避けられない。(私の連載作品にも通じる)


 またクソゲー愛好家さんの場合は、『ゲーム』が主題であるということから次第に『スキル』が多くなり、何がどんな効果でどう強力なのか、読者が置いてけぼりになる可能性が高くなる。


 他にも、あまりある『設定』を語るために『布石(あからさまに後の設定・展開を臭わせる描写)』が多くなりがちで、ともすれば『過度な()らし・思わせぶり』な印象を抱きかねない部分もある。


 千差万別の『好み』がある読者の全員にウケるものは不可能だと同時に、自分の『好み』と合致する読者を最後まで楽しませる書き方が大事なのだと、改めて考えさせられる。


 週刊マンガの連載テクみたいなものでしょうが、これを高めすぎれば『過不足のないきれいな着地(かんけつ)』が難しくなる気もします。


『物語を引き延ばす力』は長編を、『物語を終わらせる力』は短編を書くことで鍛えられそうですが、両立させるのって相当腕が必要そうですね。


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