61回目 2019/5/15
食わず嫌いならぬ、やらず嫌いはよくないとは思っています。
唐突だが、私は小説に直接的な性描写を入れることを好まない。というか苦手だ。
弁明しておくと、エロコンテンツ自体を忌避しているわけではない。私もいい年をしたおっさんであるため、エロを健全に消費することへの抵抗はない。
(↑誰に対しての言い訳なのかは聞かないでほしい。私も誰に向けての発言かはわかっていない)
ただ、こと執筆する側からエロに向き合ったとき、私にはある越えねばならない『壁』が存在するのだ。
言い換えれば、私の中にある『固定観念』ともいうべきものを排除せねばならない。
それは……『リアリティ』である。
どういうことかというと、少し前に小説全般における技術向上ための練習法として『R18エロ小説を書く』という内容のエッセイを読んだことがある。
中でも、どうやら戦闘描写の練習や参考になるらしく、バトルありのファンタジー系を好んで書きたがる私としても興味深かったため、挑戦しようと思ったことがあるのだ。
そうして、いつもの要領から頭の中で構想を練っていく、のだが、途中で私はR18エロ小説を書く気力を失ってしまった。
何というか、物語が最後の行き着く先まで到達してしまい、ほぼ確実な『バッドエンド』を脳内に描いてしまうのだ。
ここが私のおかしいところで、普通エロ系妄想をするなら『自分の都合のよい世界/場面』を想像するだろう。
当たり前だ。自分が『それ』をどう扱うかは別にして、『気持ちよくなるため』というのがエロコンテンツの存在意義である。
もう少し踏み込んで考えると、『気持ちよくなるため』ならどれだけ主人公にとってご都合主義な展開になっても、消費者(読者)は一般小説よりも許容範囲を広く定め『許容』してくれやすくなる。
科学的な根拠や物語の整合性などさほど気にならないし、設定の矛盾なんかも『気持ちよくなれれば』許してもらえる空気はある。
(なろう系小説が『精神ポルノ』などと揶揄される原因でもあるようだが、今はおいておこう)
しかし、無駄に『リアリティ』を求めてしまう私は、ただのエロ妄想にも『ドラマ』を――不必要な要素を入れて筋書きを進めてしまう。
そもそもR18エロが描く場面は、『人生』におけるごく限られた期間を切り取ったものだ。
こんなこと消費者の誰もが知っているし、あえて明言したら冷めるのだが……エロと密接に関係する『恋愛要素』は決して長続きしない。
いわば、『人生におけるモテの絶頂期』のみを描いているからだ。(レ○プなど、どちらかが一方的に相手に迫り、実際に行えば犯罪行為になりうるジャンルは含まない)
どれだけ愛をささやき合った恋人も、結婚して数年もすれば大半の場合レスの問題を抱えるだろう。偏見かもしれないが、恋人と家族では愛情の持ち方も変化するだろうし、間違ってはいないと思う。
それを誰しもわかっているからこそ、空想の中だけでもとことん主人公に甘い世界を疑似体験したい! というのがエロコンテンツの役割だと私は考えている。
(故に、明らかに犯罪にあたる対象や行動もしても、それが一つのジャンルとして成立しうる。人間に秘めた攻撃性や欲求を疑似的に発散する、『必要悪』の側面もあるかもしれない)
とことん甘く、都合がよく世界を作る……それがある種のコツだと頭ではわかっている。
だが私は、あくまで『人生単位』でエロネタを考えてしまうため、行為に至った『その先』を考えてしまう。
たとえば、ネット広告などでしか見たことはないが『終○のハーレム』というほぼ成人エロマンガから設定を借り、私が妄想すると途中で大変なことになった。
まず、絶対数が少ない男性主人公は、選ばれた女性から『産めよ増やせよ』と常に迫られ、世界のためにも必要なことだと思いながらも(現代の価値観を持って)倫理的な葛藤にさらされる。
それを解消した後、今度は希少さというものを盾に取った男性が、母体として選ばれた女性に対してやりたい放題している現状に悩み出す。(具体的には、プレイの範囲を越える過剰な暴力など)
しまいには、国(というか世界?)が管理する男性が起こしてきた非人道的行為を知って糾弾する『テロ組織』が出現し、いきすぎた男性への選民思想を否定すべく武装蜂起(!?)。
主人公は避難するさなかテロ集団と遭遇し、きちんと心を通わせて身ごもった女性の一人(ハーレム構築は容認済み)にかばわれ、パートナーと子供を同時に失って泣き崩れる……という場面まで想像してやめた。
あくまで一例だったが、このように私がエロ妄想をすると主人公が理性的すぎて、『(エロ的にはいい意味で)サイコパス』になれないのだ。
仮想主人公を自分においた場合は特に酷い。
一度、恋愛とか結婚ってどんなものだろう? と十代の頃に小説のプロット的な形でシミュレーションしてみたことがある。
学生時代に出会って結婚し、子供も産まれて順調な道を歩んでいたのはほんの最初まで。
途中で勤め先が倒産し、職を失った瞬間に離縁を迫られ妻も子供も失う。
その後も再就職できず、ホームレス状態で年を重ねて気づけばしわしわヒゲモジャのジジイに。
それだけでは飽きたらず、公園で遊んでいた子供にかつての我が子を重ね、少し世間話をしていたところ誘拐犯扱いされて警察に逮捕されて裁判に。
とんとん拍子で審理が進み、有罪の実刑判決が出たところで考えるのをやめた。
こんなの書きたくない――っていうかどうしてこうなった?
私がR18系を小説にするには、まだまだ思い切りが足らないらしい。
(余談だが、R18グロも書けない。感性が幼稚な私は具体的すぎる痛い描写が怖いので)
でも、人間って向き不向きはありますよね、という話。




