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58回目 2019/5/12

 最近はエッセイのランキングばかり(のぞ)いてますので、ここでエッセイっぽいことも書いてみます。


 なろうランキングに求められる作品は『ねこ動画』なのではないか?


 何気ない思いつきが浮かんだので、そのまま言葉にしてみようと思う。


『ねこ動画』は『万人に通じうる癒し効果』を有している。完全に偏見だが、近年ペットの主流が犬から猫に変わったところを見れば、あながち間違いでもないだろう。


 多種多様なアニマル動画が撮影される中、『ねこ』という素材を活かして広まった動画は、テレビ番組でもよく目にするようになった。


 四角い空き箱にヘッドスライディングをかまし、飲みつぶれてうつ伏せに倒れたおっさんのような下半身の虚脱感と、達成感がにじみ出る左右へ移ろうしっぽの動きは、文字で表現しきれない感情をかき立てられる。


 別の例を挙げると、ぬこ鍋はただ土鍋の中に何匹もの猫が丸まって寝ているだけのものだが、なぜかじーっと見ていても飽きない魅力がある。それが子猫であれば、威力は倍以上に膨れ上がるだろう


 他にも、だるまさんが転んだよろしく扉からカメラを覗かせるとぴたりと止まる子猫とか、ジャンプに失敗してフレームの外へ落ちていくデブ猫とか、バリエーションはあれどれもくすりと笑える可愛らしさがある。


 そうした、『ねこ動画』が人に与える影響と『なろう系』の面白さは、かなり近しい役割を有していると思ったのだ。『ねこ=テンプレ』、『ねこの動き=作品アイディア』みたいな感じで。


 まあ、中には『ねこアレルギー=アンチ』もいるので、全員にとって『癒し』となるかは微妙であることも、ついでに類似点としていえるだろう。


 もはや『なろう系』という名前さえ定着した小説ジャンルにおいて、一番必要な要素は『読者のストレスを溜めないこと』とはよく言われる。


 裏を返せば、『なろう系』を好む読者は常日頃から強いストレスにさらされる環境にあり、『なにも考えずリラックスできる時間』を求めている、とも考えられないだろうか?


 ある種の超人であれば、お経を唱えたり瞑想(めいそう)したりして心の平穏を保つこともできるのだろうが、前提が『高ストレス状態』で心身が乱れたなろう読者層にとって『無』に集中することなどできない。


 だからこそ、簡単に『無の癒し』を作ることができる『なろう系(コンテンツ)』に集まるのではないか?


 まあ、得られるものは本来『無の境地』から至るべき『悟り』とはほど遠い『現実逃避』でしかないのだろうが、現代日本を生きるためには重要な心の栄養補助媒体(サプリメント)になっているのかもしれない。


 故に、特定の読者が声を大にして『テンプレ批判』を行っているのは、(流行の背景に日本人の『高ストレス状態』が実際にあるとすれば)少々(まと)外れな意見といえる。


 というのも、『小説家になろう』は前述の考察もふまえて、どちらかというと『文芸』ではなく『SNS』寄りの役割を重視されているように思うからだ。


 ウェブサイトだからというわけではなく、集まる読者の大部分が『物語』よりも『文字』を消費するための作品を求めているから、と考えてしまう。


 ランキング作品は、さながら『バズったツ○ッター』と『リツ○ート』のように、筆者と読者のコミュニケーションツールとしての役割の方が強い気がしてならない。


 私は普段、他のSNSを利用する機会がないのでわからないものの、『ツ○ッター』を代表するSNS投稿は『軽快で明朗(めいろう)な短文』が基本だと思っている。


 文字数制限の中でいかに多くの共感を得られるかという文化の中では、より短く、よりわかりやすく、より軽やかに、という簡潔さが優遇されるのは間違いない。


 ただそれは、油絵の絵の具のように一つの動作に対して心象・情景描写などを盛って塗り重ね、文章に厚みや奥行きを作って楽しむ『文芸』とは性質がほぼ正反対だ。


 現になろうで読まれるための工夫として、一話あたりの文字数がどんどん省略されていった過程が見て取れる。


 その省かれたもの――言い換えれば『不必要』とされたものの筆頭が『情景描写』であろう。


 私も描写は浅い方なのであまり人のことはいえないが、『なろう系』は主人公とその周辺の『5W1H』さえわかっていれば楽しめる作品が多くを占めるようになった。


 すなわち、『誰がいつどこでどんな目的で何をしてどうなったか?』がわかれば、登場人物の暗鬱(あんうつ)な気持ちを象徴する悪天候も、気がかりが解消されていつもより輝いて見える町並みも、不穏な気配を暗示するような森のざわめきも、本文に語る必要のない『どうでもいい部分』なのだ。


 それはSS(キャラの台詞だけで構成された脚本劇のようなもの?)と呼ばれるものや、申し訳程度の地の文しかないケータイ小説といった、ネット文化の影響を多大に受けた背景もあっての『適応』なのだろう。


 他にもいろんな要素が練り込まれた結果、『なろう系』は『本は読まないが文字は消費する人々』にとっては、とても身近で入りやすい『物語群』になったといえよう。


 あるデータによると、日本人は他の先進国と比較するとあまり本を読まないそうで、結構長く読書離れが叫ばれていることもあり、『読書習慣の入門手段』として見れば『なろう系』の貢献は大きいと思う。


 しかし、間口を広げるためにハードルを下げたことにより、『物語』を消費する読書家にとってはどうしても『薄っぺらい内容』にしか思えなくなるデメリットもある。


 スコップで面白い作品を掘り当てる、という楽しみ方があるにせよ、それは少数派の楽しみ方でしかない。


 よって、『小説家になろう』は普段まったく本を読まない人への『導入』として価値があるに過ぎず、『文字』を楽しむことから『物語』を楽しめるようになった読者は卒業すべき場所なのだ。


 質のいい『物語』を求めるならば、好みの差はあれ本屋で販売されている一般文芸を読む方がよほど満足できる近道になる。


 最初のたとえに戻せば、『ねこ動画』に満足できなくなったんなら猫を飼えばいいじゃない、ということだ。


 (エサ)代、トイレの世話、健康管理、しつけなど、『ねこ動画』よりも面倒は増えるかもしれないが、実際になつかれモフって得られる満足感は、無機質な画面越しと比べようもないはずだ。


 同じように、『なろう』は初心者向けのコンテンツだから、満足できなくなったらさっさと商業書籍との出会いを求めて旅立て、ということだ。


 はい、お前が言うな(ブーメラン)


 実際にエッセイ単品として()せるほどのものでもない主張なので、ゴミ箱に近いここの中くらいがちょうどいいネタでしょう。


 感想を通知する赤文字って、警告色だからかちょっと怖いんですよね……。


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