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473回目 2020/6/30

 気づけばもう六月が終わっていた人生でした。


 まだ夏も本格的ではないのに湿度のせいか暑い日が続く。


 だからというわけではないが、普段はあまり開かない『なろう』のホラージャンルをちらほら見始めた。


 検索無精なので相変わらず利用はジャンル別ランキングになるのだが、とりあえず年間で評価が高いものから読んでいこうとタイトルを品定めしている。


 私がみた時にトップだった『オカch』は、以前にも日刊総合ランキングで見かけたことからすでにブクマしていたので、それ以外で気になったタイトルを漁る。


 で、そのすぐ下くらいにあった『御気の毒ですが、呪いが発動しました』という作品を読んだとき、ホラーってこういうのなんだな、と率直な感想が浮かんだ。


 言っては何だが、『オカch』の方は名前の通りいわゆる『掲示板形式』で進んでいく小説で、古くは『電車男』などでも用いられたものだ。


 内容はちゃんとホラーをしている物の、『ネット掲示板』というものを間に挟んでいたり、書き込みをしている匿名の登場人物の反応がコミカルであったりして、ホラー要素は結構薄らいでいる。


 故に、個人的に『オカch』はホラー初心者でも大丈夫な作りの、ゆるコワ系に分類される作品だと思っている。とにかく、読みやすさを重視した印象だ。


 反面、『呪い』の方は『グロありホラー映画を小説に書き起こしてみた』みたいな、人間の煮詰めた悪意と絶妙にリアルな痛々しい描写が特徴的な作品だった。


 下地は『悪役令嬢・婚約破棄テンプレ』であり、序盤は恋愛ジャンルでよく見るストレス展開をさらにうつ方面へ凝縮させたもので、そこからほぼ全編にわたって洋風ホラーのようなテイストをしながら、オチはどこか和風ホラーの印象を抱く、個人的には『ホラーのよくばりセット』みたいなイメージを持った内容だった。


 ちょこちょこ後書きなどで記されていたが、作者様自身は『ホラーが苦手』という話らしいが、普通に嘘だろ、と勘ぐってしまうくらいには背筋がゾクッとする描写が多かった気がする。


 商業作品を含め、ホラーをよく読む読者にとっては物足りない部分があったりするのかもしれないが、私のようになじみの薄い読者からしたら十分怖さを感じさせる作品だった。


 また、作品全体の『あとがき』にて書かれていたと思う作者様のコメントの中で、『自分が嫌いなホラーを詰め込んだ』みたいなことを記載されていたと記憶している。


 その考え方が、私にはかなり新鮮な気持ちを抱かせるものだった。


 だいたい創作において、作者になる人は『何でも自由に作品を作れる』のだから、普通は『自分が好きなもの』を表現しようとするものだ。当然、私も例に漏れず『好きなもの』を書きたいと常々思っている。


 だがこの作者様はあえて逆――『自分が嫌いなもの』を表現することによって、より情感豊かな人間や悪霊的な恐怖を表現できたのだ、と思うと感心してしまった。


『嫌いなもの』と向き合い表現する――文字にすれば簡単だが、実際に行うとなるとかなりのストレスが降りかかることは想像に難くない。ご本人も『誤字脱字修正などでも極力読み直したくない』という話をしていたくらいだ。


 それでもなお、苦手意識が抜けないまま最後まで書ききったのは本当にすごいと思う。


 私が書いた作品でもっとも近い感情を抱くのは『元英雄』だろうか。途中で児童虐待に見える描写を用いており、子どもが感情を爆発させるシーンになると胸が詰まる思いをしながら書いた記憶がある。


 自作は『ヒューマンドラマ』的に必要なストレス展開で、ホラーへの苦手意識とはまた違うものではあるが、それでも『嫌いなもの』が中心の話を書くことで文章に乗る感情の強さは、『好き』を文章に乗せるのと同じくらいのエネルギーを持ちうるのは確かなのだろう。


 考えてみれば、『好き』であれ『嫌い』であれ、自分の思いが本当ならたとえ方向性が違っても『感情の強さ』は同じくらい大きくなる、という理屈は間違っていない気がする。


 特に『風刺的なメッセージ』を込める『寓話(ぐうわ)』なんかは、読者に対して『正したい・訴えたいメッセージ』があるから、作者は皮肉を込められるのだと思う。


 皮肉りたいのはつまり、作者がそうした思想・言動が『嫌い』だからではなかろうか?


 本当にこれでいいのか? と多くの人々へ疑問を投げかけ、是非を問うている部分もあるのかもしれない。


『好き』では得られない、『嫌い』を表現するための創作意欲もまた、長く小説を書き続けるためには必要になる意識だと思わされた作品だった。


 個人的な好みとして、『和風ホラーのバッドエンド』って嫌いじゃないから、そう感じたのかもしれませんね。


 特に『生存本能』を刺激しがちな洋風ホラーとは違う、すべてを描写しきらない『得体の知れない恐怖』の演出が得意な和風ホラーは、より純粋な『恐怖』を得られる気がしますので。


 あとは『対抗できる恐怖』と『太刀打ちできない恐怖』の違いもあるかもです。洋風ホラーのイメージは最終的に『倒す』ことができますが、和風ホラーは『逃れる』ことを重視している印象です。


 人間の力や技術じゃどうしようもできない、悪霊側のルール(呪いを回避する方法など)に従わなければならない理不尽さと絶望感が、私にとってのホラーの醍醐味(だいごみ)なのでしょうね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私もホラー書きますが、なかなか難しいですね。執筆の時には頭のなかで映像を再生するたちなのですが、怖くて途中で書けなくなったりします。 ただ、書き上げて怖いと言ってもらえるのはなかなか嬉しいで…
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