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462回目 2020/6/19

 あるアニメの感想です……ただし、ネガティブな方面での意見ですけど。


 アベマのアプリを利用し、スマホで見ている今期のアニメの中で『イエスタディをうたって』という作品がある。


 一話を見た印象がなかなか良さげで面白そう、と思って見始めた恋愛系ストーリーである。が、ラストが近い今は少々のモヤモヤを抱えながら視聴しているアニメでもある。


 原作はマンガらしいが私は読んだことがなく、どうもアニメでは結構な描写をスキップしているらしいとネットで見たことがある。実際、やたらダイジェストっぽい雰囲気の、台詞がないシーンの挿入が多かった印象が強い。


 単純にアニメを見ただけではっきりとはわからんが、時代は昭和後期から平成前期あたりのどこか(登場人物が携帯電話を所持しておらず連絡が据え置き電話オンリーで、コンビニは存在したことから推測)。


 大学卒業後フリーターだった『リクオ』が、カラスを友達と言う変わり者の少女『ハル』との出会いをきっかけに、大学時代に好意を寄せていた高校教師の『シナコ』との関係を変えたいと思うようになる……みたいなのがあらすじだ。


 最初、主人公だろう『リクオ』に明確な好意を寄せていたのは『ハル』で、『シナコ』はあくまで学生時代の友人という立ち位置で接していた。が、『リクオ』の好意は『シナコ』に向かっていて、という典型的な三角関係がメインである。


 なお、これ以降はネタバレを含む感想を書くので、それを承知で読み進めることをオススメする。






 この作品、ぶっちゃけ私は『ハル』がメインヒロインだと思っていた。


 恋するきっかけは些細(ささい)な出来事からの一目惚れであり、動機としては個人的に弱いと感じるものの『ハル』の好意は本物であっただろうし、自分の気持ちに正直なまま積極的にアピールを重ねる姿は好感が持てた。


 実際に私の近くに『ハル』のような知り合いがいたらどう感じるかは不明ながら、明るく人なつっこい(ように見える)キャラクターはいるだけで場の雰囲気が明るくなるような感じもあった。


 特に印象的だったのが、中退した高校の教師(担任?)であった『シナコ』へ向けた宣戦布告だろう。『リクオ』が好きだからライバルってことで! みたいな啖呵(たんか)は普通に感心した。


 とにかく明るくさっぱりした性格に描かれていて、あくまで私の印象だけだが『ハル』が『リクオ』をがんばって口説き落とす話なんだろうなぁ、と『思っていた』のだ。


 しかし、十一話まで視聴した結果……『リクオ』は『シナコ』と恋人関係になったようだ。決定的な告白シーン? みたいなものがなかった(もしくは見逃した?)ため、たぶん、と言う他ないが。


 ぶっちゃけ、『うぅん?』という感想しか浮かばない。え、どういうこと? という困惑と疑問が拭えないままストーリーが進んでいった感覚が残っている。


 というのも、『シナコ』は一話か二話かくらいで、『リクオ』の告白を一度断っている。それをふまえての前述した『宣戦布告』だったと記憶しているが、そこからくっつくのか? という思いが強い。


 そもそも『リクオ』と『ハル』の関係は良くも悪くも若く青春っぽい恋愛をしていた一方で、『リクオ』と『シナコ』はものすごく湿っぽい関係が続いていた。


『リクオ』は大学時代に好意を自覚しながら告白もできずにウジウジ(共感はできる)し、『シナコ』は過去の恋愛を引きずりに引きずり倒しており、異性関係全般に目を背けている状態だった。


 それは話が進むにつれてよりジメジメさが際だっていき、『リクオ』は一度フられても『友人関係を続けたい』という『シナコ』の言葉に乗っかる形で、未練をがっつり残したまま時間を過ごす。


『シナコ』は『リクオ』や『ロウ』の好意に気づいて、足かせになっている初恋の相手への想いを精算させたい・変わらないと、と自分に言い聞かせながら、煮え切らない態度で二人と接していた。


『リクオ』は『優しいが優柔不断』という性格面で、『シナコ』は『過去をこじらせた異性関係(れんあい)下手』という環境面で、付き合うのも断るのもはっきりさせない状態を長~く続けていた。


 おそらく『リアルな人物像・恋愛模様』と考えたら結構あるあるな状態であり、正確な描写ではあるのだろう。


 でも、全体的に関係が『後ろ向き』かつ『陰鬱(いんうつ)』なのだ。途中から見ているだけで胃もたれさえしそうなくらいに。(もちろん、のろけ話を聞かされた時の胸焼けとはまた別の感情である)


 しかもそれが、若くはつらつとしたキャラクターとの恋愛描写を挟むことで、より両者の関係がジトジトしたような暗さを浮き彫りにしている気がするのだ。


『リクオ』にとっての『ハル』と同じように、『シナコ』には幼なじみで初恋の相手だった同級生(すでに病死&こじらせの原因)の弟である『ロウ』という男子高校生がいる。むろん、『ロウ』は『シナコ』へ好意を寄せるキャラだ。


 こちらもまた『ロウ』が一方的に『シナコ』へ好意を寄せていて、『シナコ』は本当に弟としてしか認識していない状態が続く。見ていて不憫(ふびん)になるほどに。


 何というか、こう、『大人』と『子供』の線引きが明確に引かれていて、『子供』を突き放すような印象を作品から受けたのかもしれない。そこが、どこか気にくわない感情を芽生えさせた。


『リクオ』は『ハル』のことを明確に拒絶はしないものの懐へ受け入れてるようにも見えず、扱いに困ったままなし崩し的に付き合っているような印象がある。


『シナコ』は『ロウ』のことを弟と思いながらも途中まではどこか死んだ初恋相手の面影を重ねており、家族以上ではあっても恋人には考えられない、みたいな接し方を貫いている。


 両者のどちらもいえるのが、いつしか『ハル』と『ロウ』の十代(子供)組を『キープ』しているようにしか、私には思えなくなっていたことだ。


『リクオ』・『シナコ』の二十代(大人)組は、未熟だけどエネルギーが強い『ハル』・『ロウ』の好意を受け取るだけ受け取って、その気があるように見せるためだけのエサだけぶら下げている……みたいなイメージしか浮かばない。たとえそのキャラ自身に自覚はなくとも、視聴した私はそう見えてしまう。


 まるでそれは『若さ故の衝動的な想いであって、本気ではない』と暗に決めつけているようにさえ感じる。『子供だから』を免罪符にして、正面から相手と向き合うことを避ける『大人の狡猾(ズル)さ』が目に付くのだ。


 それでも、『ハル』も『ロウ』も相手に振り向いてもらおうと、自分たちなりに努力やアプローチをしかけていった……その結果が『大人組の当て馬』である。


『リクオ』が『シナコ』へ一歩踏み出すためのきっかけを『ハル』が、『シナコ』が『リクオ』に歩み寄ろうと思い直すためのきっかけを『ロウ』が、それぞれお膳立てした形で付き合った――ように見えた。


 これ、『子供組』が報われなさすぎではないだろうか? と。完全に『大人組』をくっつけるためだけのにぎやかし、舞台装置である。


 何がひどいって、『リクオ』と『シナコ』だけだったらこの恋愛が『絶対に成立しなかった』と確信できてしまうところだ。


『大人組』はどちらも恋愛において慎重かつ臆病であり、それこそ『子供組』のアプローチという起爆剤がなかったら、完全に自然消滅が見えていたくらい消極的なのである。


 当人たちはずっと本気だったのかもしれないが、作品を見ている側からすれば『子供を利用するだけ利用して、つっこんだ部分は見て見ぬ振りをする汚い大人』って構図が浮かび上がってしまっていた。


 それに、これを書いている途中から思ったのだが、『大人組』の恋愛に対する姿勢が割と自分本位に見えるのに対して、『子供組』の姿勢は相手に寄り添おうとしているのが悪い意味で対照的だ。


『大人組』は何となくだが、『相手がこうだろうから』というよりも、『自分が傷つきたくないから』という心理が強く、ぶっちゃけ恋愛に関して幼稚(ようち)とも思える描写が多い。


 だが『子供組』は、『きっと相手はこう思っているだろう』と考え配慮しながらも、『自分の気持ちに嘘はつけない』という感じがあり、『大人組』よりも成熟した恋愛をしているように見えなくもない。


 ああ、そういう部分もまた、私が『大人組』を気にくわないと思ってしまう原因の一つだろう。『もらう』ことを気にしすぎていて、『与える』ことがおろそかになっている(ように見える)恋愛を応援できるほど、私は心が広くないらしい。


 こと恋愛において、中途半端な優しさがいかに残酷か、人としての想いを本気で受け止めない上に、すぐに答えを示してやらないことがいかに卑怯かを、この作品で学んだ気がする。


 後は余談として、私の見る限りで『ハル』が孤独すぎるのもまた、この作品を苦く感じる要因の一つとして挙げられる。


 あくまでアニメの描写・範囲だけだが、『ハル』は明るく人なつっこいキャラクターであるにもかかわらず、『頼れる誰か』がいるようには思えない。


 バイトをしている喫茶店(っぽい?)の店長(女性)は『仕事仲間』だし、バイト先のお客さんは『ほぼ他人』だし、両親に至ってはたしか母親と再婚相手という『距離ができた人たち』の認識でしかない。


 さらには『ハル』は高校を中退しており、『学生時代の友人』みたいなキャラクターが出てきたことはなく、さらには『友人がいた』という話さえほとんど出てこないほど闇が深い。


(一話使って、高校生時代の『ハル』を好きになった同級生が登場し、『ハル』に告白してフられる的なストーリーがあったが、その後同級生は留学か何かで遠くへ行ってしまった)


 本当は違うかもしれないが、少なくとも作中における『ハル』には、『頼れる相手』が好意を寄せる『リクオ』しかいないような状況にしか見えないのだ。


 なのに、作中で『リクオ』は『シナコ』とくっつくし、『リクオ』から『ハル』へのアフターフォローなんかないに等しいし、むしろ的確に心の傷を量産していくような展開しかなかったし。


 なんていうかもう……『ガキみたいな恋愛に子供を巻き込むなよ!!』と叫んでしまいそうになる。


 いや、まあ、まともに恋愛をしたこともないおっさんにいわれたかないだろうけども……。


 恋に恋した時期はあったが、実際に誰かを本気で好きになったことが本当にない。せいぜい『気になる子』程度が限界だった。そんな相手すら、片手で数えられる人数しかいないのも終わっている。


 恋愛って、やっぱり『する』ものではなくて『見る』ものなのだ!(おそらく一番最低な意見)


 長~い目で見れば、『ハル』や『ロウ』にとって『若くて苦い恋愛』として、次の恋につながる経験になるのかもしれませんけど、う~ん、やっぱ気にくわないですね私は。


 ラストがどうなるか、どう描写されるのかはまだわかりませんけど、現状の印象では『リクオ』と『シナコ』って破局しそうな雰囲気? 臭い? がプンプンするんですよね、将来的に。


 私のゆがんだフィルターがそう見せているだけかもしれませんけど。まるで『昔に誰か(作者?)が失敗した恋愛をむりやり成功させた』ような違和感さえ覚えてしまいます。


 何にせよ、やっぱり恋愛に対して主体的に動いていた(ように見えた)『ハル』と『ロウ』が報われないのが、私には嫌だったんでしょうね。棚ぼたでハッピーになってんじゃねぇよ、と言いたいんでしょう。


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