448回目 2020/6/5
昨日に書いた内容の続き、になると思います。
『七つの大罪』の解説本の中で、もう一つ気になったのが『設定、構想の作り方』だ。
詳細はここで書かないものの、寄稿媒体が週刊マンガ雑誌ということもあってか、結構『ネット小説』に通じる書き方をしていたようだ。
あくまでプロ漫画家である鈴木央先生個人のやり方なので、これが正解と断言できるものではないが、見習いたい部分は確かにある。
何でも、『七つの大罪』において最初に決まっていたのが主人公とヒロイン周りの設定くらいで、敵の設定や仲間キャラの関係性なども『どうすれば読者が盛り上がるか?』を重視して描いていったのだとか。
ガチガチに設定を縛りすぎると発想の広げ方もせばまる、という考え方からそうなったそうだが、『なろう』における小説執筆スタイルまんまな気がしている。
『なろう』はネット環境下で読者からのレスポンスが早い(+酷評もダイレクトに作者へ届く)ため、『読者が望むような形に』とか『喜ぶような展開へ変化させる』とかは多くの作者がやることだろう。
しかしまあ、違いはある。商業の場でプロとして長年マンガを書き続けてきた漫画家の『経験』と『調整力』に比べれば、素人レベルが多い『なろう作家』のそれは当然つたなくなる。
そもそもマンガと小説だと物語の『描き方』がかなり違うので単純比較は難しいものの、設定や脚本の話であれば手法はさほど変わらない。参考になる部分は多いだろう。
解説本は裏話やネタバレなどと表紙に書いてあったように、制作過程における設定の変化みたいなものも書かれていた。
それを見る限り、鈴木央先生はかなり臨機応変(悪く言えば行き当たりばったり)な書き方をしていたようだ。時にはネームの段階で決まっていたものを変更して、思いつきを通したこともちらほらあったらしい。
とはいえ、すべてがいい方向へ向かっていたわけでもなかったようだが。特に初期の頃は明確なキャラ設定を行っていなかったために、後々で割と明らかな齟齬がでるようなこともあった。
誰にどこまで伝わるかはわからないが、たとえば主人公の仲間として登場する魔術師の『マーリン』という女性キャラがいる。(この作品は『アーサー王伝説』が基盤といってもいい世界観である)
で、初登場時は回想シーンにて『気さくなお姉さん風の口調』で台詞が描かれていたが、後に本編で顔出しした時には『ミステリアスなマッドサイエンティスト風の言動』になっている。もはや別人並のキャラ変更といえるだろう。
……まあ、物語の大筋に悪影響がある改変などはなかったようだが、細かい部分で設定の変化がぼちぼちあったのは確かだ。すべてではないが、私もマンガを読んで知ってた部分も多い。
そこで思い知ったことは、たとえ(広い意味で)プロの商業作家とはいっても、ライブ感を重視する作り方をしていれば『すべての設定に整合性を持たせるのは非常に困難だ』という教訓だ。
まして、素人作家であれば食い違いが大きくなっても仕方ないだろう。ただでさえ長編の物語を作った経験が乏しい人が多い上に、素人作家には矛盾をしてくれる『編集者』役の人がいない。
突発的な思いつきを違和感なく現行の物語に適応できる『調整力』も、作者以外のチェック体制も(たいていの場合は)ない孤軍奮闘状態で、『矛盾のない高品質のストーリー』なんて作れるはずがないのだ。
人間一人でできる範囲なんてたかが知れている。
一見すると簡単そうに思える『なろう』での作家活動も、『公開できる場』と『簡単な投稿フォーマット』がある代わりに、残るすべてを自己プロデュースしなければならないのだから、『簡単』ではあっても決して『楽』ではない。
提供するコンテンツは異なるものの、『なろう』での活動は『ユーチューバー』とほぼ同じだ。企画、下準備、ロケ地や撮影許可の確保、撮影、動画編集、目立つサムネイル作りなどなど、実際にやることは全部共通している。
だからあきらめろ、というのは極論ではあるにせよ、なにかしら『妥協』は必要なのだろう。『努力』は惜しまなくとも、『結果』に期待や執着しすぎない『妥協』が。
私の場合、撮影と動画編集にあたる部分は力を入れている自信はあるが、その他は流行に乗るためのマーケティングを含め、ほとんどが『甘い』状態である。
そんなヘナチョコ作家なのだから、私には『あきらめ』に満たない『妥協』が今も必要なのである。
『これじゃ納得できない!』となるところを、『とりあえずこれでいっか』と思えるような図太さを身につけられれば、スランプに近い現状を打破するきっかけにはなりそうだ。
ずっと読んできたマンガの解説本なんて初めて購入しましたが、作品の内容を知っていると作家目線で制作過程が知れるのは大いに参考になった気がしましたね。
何より、『読者を驚かせたい』みたいな作風の方向性? 作家性? が似通っているのにシンパシーを感じ、勝手に励みになった気がしてちょっとうれしかったです。




