321回目 2020/1/30
私がなぜ短編を苦手とするのか、その理由の一端が見えた気がしました。
現在、リハビリもかねて短編を書いて創作の勘を取り戻そうとしているのだが、ちょこちょこ手を入れているうちにやはり気になる問題が浮上してくる。
すなわち、『短編・一万文字以内に収めきれない問題』である。
私は創作をし始めた当初、数作は短編から書いていた。たしか、エセSFものだったと思う。
今では世界観設定のハードルの高さを知っているので、簡単に手出しが出せないジャンルだが。本当、素人に特有な無知ゆえの無鉄砲とはおそろしくもまぶしいものである。
それはさておき、創作素人だったかつての私も初っぱなから長編を書くほど無謀ではなかったため、こうして今も創作に片足をひたしたまま生活しているわけだ。
が、たった数作でこなれた気がした私は、それ以降のネタを長編想定で書くようになった。しかも、文庫本一冊など生やさしい大長編レベルの文章量になるネタを、である。
そんなもの、やったところでエタるのが落ちだ。実際、夢だけで描いたネタの構想はメモ帳にたまるばかりで完成の青写真はいまだ見えていない。
さらに悪いことに、私はしばらく長編を書くことを主流にしてしまったため、いつの間にやらすっかり短編を書く習慣がなくなってしまった。
すでに十年前くらいにはもう、短編は『自分には向いてない・書けないもの』と判断して捨てていたところがある。やらず嫌いの食わず嫌いだ。
で、そうなってくると私のネタは自然と長編以上のスパンを前提として組むようになり、短く収める気なんてサラサラねぇ状態が普通となってしまった。
しかし、この年齢になるとウケるかどうかもわからん長編を書き始める勇気も、また書き続けて完結させるだけの勇気も薄れてきている。若かったときは『意地でも終わらせてやるぜ!』みたいな気概にあふれていたはずなのに、我ながら年齢を食ったものだ。
すると、ほとんどやってこなかった短編で『創作欲求を満たそう』と思うようになる。それが、数年前からちょこちょこと短編を書き始めるようになったきっかけだったのだろう。
ここまでは長い前置きだったが、さてここからどう『短編・一万文字以内に収めきれない問題』につながるかというと、『長編を前提にしたネタの作り方』に関係している。
長編は文字通り、単純な文章の量でも作品内経過時間でも読了時間でもなが~い目で見る必要がある。ボリュームたっぷりだ。ウケるウケないは別にして。
そうなると、ぶっちゃけ最初に作ったプロットも時間経過とともに変更してしまうことも多い。追加するときはだいたい気分だ。あれも面白そう、これも面白そう、みたいなノリで設定を盛っていく。
正直、書く時間よりも設定を頭の中でこねくり回して煮詰める作業の方が多いため、ネタの精査や望ましい展開の方向性などを、思考する時間で徐々に固めていくクセがあるのだ。
それが小説の世界観を補強してくれるため、悪いとは思わない――が、それを短編にも当てはめるとどうなるか?
そう、『短編が一万文字以内に収めきれない』ことになるのだ。
厳密には、当初に想定したプロットを少しでも放置していれば、のちのちに『こういう設定を入れたい』とか『あんな設定の方が矛盾がない』みたいにかさ増しされ、短く書けなくなる。
読者様側からすれば『必要なシーンとか設定とか、本編で削ればいいじゃん?』などと思うだろうが、私は設定の貧乏症を患っている病気作家であるため、端的に言えば『ネタを捨てられない』。
ゆえに、最初の思いつきプロットから時間が経てば経つだけ、小説内に入れたい(入れなければ! と思う)要素が増えていってしまうのだ。
それを防ごうと思えば、私の場合とにかく『思いつきから脱稿まで』をできるだけ短くしなければならない。新たな要素が入り込む余地を与える前に完成させまえ! という力業的考えである。
しかし、ここで私が持つもう一つの欠点が上記の解決策を難しくさせる。
――『書くの遅すぎ問題』である。
私の連載作品を見ればわかるとおり、私は小説の執筆がかなり遅い部類の作家だ。去年だって、八万文字弱の内容を更新するのに一年半以上の時間を要してしまったほど、筆の進みは遅い。
そんな私が、たとえ短い内容だったとしても、果たして小説を短期間で書き終えることが可能なのか? ――いや、できるはずがない。(強めの反語)
筆の遅さは内容の短さに関係なく私につきまとうのだから、当然短編を書き終わるまでにもそれなりの時間がかかってしまう。
すると、その筆が止まっている時間の間に、短編のプロットから新たな要素が頭に思い浮かんではメモって追加されてしまい……結局、できあがったころにはめでたく一万文字オーバーと相成るわけだ。
一応、私の自己満足感をそこそこ満たせる書き方ではあるが、『短くコンパクトにまとめるセンス』が致命的なのはなるべく直したい部分でもある。
加えて、私は油断しているとネタが生えてきてしまうため、やりたい物語がたまる一方なのも何とかしたい。ネタが無限にわく、なんてことは言わないけれど、筆の遅さからネタがたまりがちなのは事実だ。
とりあえず、一生の目標として『思いついたネタは責任を持って文章化し、可能な限り世に発表したい』とは思っているので、やれるだけ書き続けていきたい所存だ。
結局、『執筆速度を上げること』が私の悩みを解消するもっとも手っ取り早い方法なのは変わりませんけどね。
体調管理やプロットの甘さなど、いろんな理由で筆は止まるし迷うものですから、なかなか思うようにはいかないものです。




