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278回目 2019/12/18

 これを読む読者様は、考えたことがありますか?


 加速も減速もしない、他に目移りするものもない、前に見えるものしか見えない、まっすぐでつまらない生き方を?


●等速直線運動

 誰に命令されたわけでもないのに、ひたすら同じ速度を維持して動き続ける愚かな物体を観察したときの状態。


 何のために、誰のために加速度ゼロを維持したまま、愚直に前を向き続けて歩みを進めるのか。


 誰かに理解されることも、賞賛されることも、あるいは非難されることすらも拒み、己の信念に従って移動し続ける姿は時に美しく、時に醜く人々の目に映っていく。


 それは人によって純粋なる努力の形と取るだろうし、人によっては進歩をあきらめた惰性の生き方と取るだろう。


 その動きを見たそれぞれの人が歩んできた歴史が、それに無理やり願望を込めた意味を与え、自己を投影する鏡像と捉えて羨望や侮蔑を向ける。


 しかし、それはあまたの人間から向けられる外圧とも言うべき視線や感情に頓着(とんちゃく)せず、ただがむしゃらに同じ速度で動き続けることだけに執心する。


 その生き方はあまりにも向こう見ずで、不器用で、(がん)とした不屈の精神を無言のまま示している。


 これしか、自分の生きる道はないのだと。


 ……否、本当は、それに意思など介在していないのかもしれない。与えられたプログラムをエラーなく実行するだけの、単なる操り人形でしかないと考えればどうだ?


 自由もなく、余裕もなく、目には見えない用意されたレールを、無条件に背負わされたエネルギーのまま、動き続けるただそれだけの服役に従っているだけでしかない。


 終わりの見えない、終わりを許されない常世(とこよ)の地獄。


 許されるのは、何の変化もないまま一貫した変化を受け入れ生かされる状況のみ。


 人々にとって『観測すること』でしか確認できない現象を可視化するためだけの、小さく不要な世界の歯車でしかない。


 見ようによっては苛烈にして峻厳(しゅんげん)な生き様のようだが、それはわずかばかりの痛痒(つうよう)も感じさせないまま、不変の速度を維持し続ける。


 それの意思など関係なく、それの意義が他に存在しない故に……。


 初めて教科書で出会ったそいつは、今もまだあの日のまま、理屈の上で同じ速度を同じ向きで動き続けているのでしょう。


 子供の頃から変わらざるを得なかった、私たちとは違って……。


 どうしてこんなことを書いたのかって?


 むしろ誰か教えてください。


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