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245回目 2019/11/15

 真面目な話も、馬鹿らしい話も、作っていけば経験になると思いたいです。


尿瓶(しびん)

 元はエジプト文明に根付いた信仰にある『死者復活』のために用いられた道具であり、現在は医療器具として浸透している。


 古代エジプトでは権力者――(ファラオ)が死後に復活すると信じられ、肉体を現世にとどめておくためにミイラ処理を施されたとされている。


 現世での死に対して、肉体と魂はそれぞれ別のものとして区別され、魂の方がより存在を定義する上で上位とされていたため、肉体は『復活の際に必要な魂の入れ物』という認識であった。


 そして、死後の魂はエジプトの神々の元へと送られ、なんやかんやあって復活の許可が出たら現世に戻ってこれる、という救済措置が存在した。


 そうした教えより、(ファラオ)は代々王墓(おうぼ)として巨大なピラミッドなどを建造し、自らのミイラを安置するよう言い含めていた。


 余談だが、このピラミッド建造は奴隷階級の人間を多く採用していたものの公共事業の色合いが強く、土地柄として農業が難しい地域においては雇用創出の大きな手助けになったとかならなかったとか。


 それはさておき、『死者復活』の考えによると『死者の肉体は可能な限り完全である方が望ましく、欠損が多いほど失敗となりやすい』とされたことから、歴代の(ファラオ)たちはあることを臣下に命令していたという。


 それが、『(ファラオ)の体から排出されたすべての物の回収・保存』だ。『完全なる死者の肉体』とは、生前に行ってきた行動すべてを含む『肉体が生存していた証拠』を集めることだと解釈したらしい。


 それによって、(ファラオ)の遺物は髪の毛一本、爪の垢ひと(さじ)でも見逃しは許されておらず、その中には排泄物も含まれていた。


 そこで保存容器として作られたのが『屍瓶(しびん)』である。現在のじょうろに似た形とは違い、完全な壷や容器の外見をしており、現代語訳すれば『屍瓶(しびん)』と当てられるそう。


 また、排泄物といっても下関係にとどまらず、汗などを拭った布や、風邪などの病気にかかった際に吐き出された嘔吐(おうと)物なども含まれていたそう。


 しかしエジプトの乾燥した気候の関係上、水分は短期保存すら難しかったため、汗や尿などを吸収させた布や砂を保存していたようだ。


 そうして集められた材料は、(ファラオ)の没前にもなると相当な量となっており、保管や維持管理も大変だったと推測される。一説では、ピラミッドがあれほど巨大に建設されたのも『復活の材料』を保管するためにスペースが必要だったから、などともいわれているほどだ。


 また、(ファラオ)の威光を示すため、一緒に埋葬されていた当時の装飾品などが、トレジャーハンターなどによって盗掘(とうくつ)されたという話もよく聞くことだろう。


 その中で、ハンターたちが宝と間違えて『屍瓶(しびん)』を持ち帰ってしまい、ふたを開けた瞬間に激高して容器を叩き割るといった事例が多発したことから、『屍瓶(しびん)』の現物はそう残っていないといわれている。


 そして、エジプトといえば王家の墓にまつわる呪いも有名であるが、『屍瓶(しびん)』をないがしろにした者も恐ろしい呪いを受けたとされている。


 ある者は半年もの間すさまじい下痢に襲われ脱水症を起こして死亡したり、あるいは一年もの間すさまじい便秘に悩まされて腸閉塞からの合併症を原因に死亡したりしている。


 排泄物を保存したものであることから、『屍瓶(しびん)』に関する呪いエピソードは(シモ)関係が多く聞かれ、現代もエジプト周辺の医学界では消化器系の必須課目として『古代エジプト史』が学ばれている。


 ただ、一部変わった言い伝えも残っており、多汗症と多涙症状を併発した脱水による死亡や、皮膚組織の再生サイクルに異常が発生し肌が急速に老化して早世(そうせい)したなどの話も見られる。


 真偽は不明にせよ、『屍瓶(しびん)』にまつわる呪いは冗談のようにも聞こえながら、実際に体験すると健康状態を著しく損なう厳しい環境に身を置かざるを得なくなるため、取り扱いには注意した方がよさそうだ。


 それから『屍瓶(しびん)』はエジプトの文化とともにヨーロッパへ伝わり、なんやかんやでガラスが発明されたあたりで『尿瓶(しびん)』になり、なんやかんやで世界中に広まった。


 なお、近い将来世界の水不足を解消するため、『濾過(ろか)装置つきの尿瓶(しびん)』が実用化されるとの発表があったのは記憶に新しい。


 自ら出した尿を排出口から直接摂取する『個人食物連鎖』が可能となる未来も、そう遠くないだろう。


 ちなみに、この説明は完全なるフィクションであり、実在する事件・国・文化・歴史・物品などとは何の関係もないためあしからず。


 でも、やっぱり真面目に書こうとすれば資料探しは必須ですよね。しんどい。


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― 新着の感想 ―
[一言] アンサイクロペディアでまれに本当のことが書かれている項目があります。事実を書いているのに嘘臭くなるルーデルさんやシモ・ヘイヘ。 そちらもぜひ試しに読んでみていただければと思いました。
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