243回目 2019/11/13
医療系ドラマが好きな身内がいて、今期にやっている『四分間のマリーゴールド』というドラマに注目し、スピンオフあらすじを書いてみました。
ただ、あくまで『タイトルだけ』に着想を得たため、実際のドラマとは何の関係もございません。
「ねぇ……『赤い花』って都市伝説、知ってる?」
始まりは、ネットの海に放り込まれた、ちっぽけな噂だった。
いわく、『オカルト実況を専門に行っていた動画配信者が、次々と失踪している』という。
被害者と思われる人々は、いわゆる心霊スポットと呼ばれる場所へ向かい、霊が実在するか? といったオカルト検証を趣味とした者たちばかりが挙げられていた。
とはいえ、『失踪』の根拠が『急に前触れもなく動画をアップロードしなくなった』というだけであり、話題となった当時に被害者とされたのも数名程度。
大半は『たまたま同ジャンルの配信者が、近い時期に引退しただけ』と結論づけたため、単なる創作ホラーとして扱われただけだった。
「――行方不明になった息子さんの捜索?」
しかし、噂が初めて発見されてから二ヶ月後。
個人事務所で探偵を営んでいる本田輝希の元へ、ある依頼人が舞い込んできた。
何の連絡もなく音信不通になった息子を捜してくれ、と。
すでに警察へ失踪届を提出していたが、じっとしていられずに探偵を頼ったということらしい。
「本当に手がかりはないんですか?」
「はい……息子の生存が最後に確認されたのは、コレをアップロードしてからだと」
示されたのは、動画サイトに投稿された一本の動画。
地元では有名な心霊スポットである廃墟を深夜に訪れ、カメラを回しながら肝試しをするというシンプルな内容。そこまで人気ではないのか、フォロワーも視聴回数はそれほど多くない。
投稿日は一ヶ月前になっており、その一週間後に依頼人が一人暮らしをしていた息子の部屋を尋ねると家財を置いたままいなくなっていたのだという。
依頼を受けた本田は調査に乗り出すが、一向に足取りがつかめない。知り合いの警官からさりげなく情報を聞き出そうとするも、防犯カメラなどの映像にも記録が残っていなかったらしい。
途方に暮れた本田が失踪者の動画を確認していると、あることに気づく。
「――何だ? 最後に一瞬、何かが……」
瞬く違和感に従い、動画をコマ送りにして浮かび上がったのは、真っ黒な背景に映し出される、『赤い花』だった。
「名前は、デンドロビウム? 何でこんなものを動画に?」
不思議に思った本田がネットでさらに情報を集めていくと、彼の案件に奇妙なほど合致する噂にたどり着いた。
「『赤い花』……また捻りのないタイトルだな」
最初はひとかけらも信じなかった本田だったが、興味本位で『失踪者』として名前が挙げられていた配信者の動画を視聴し、共通点に気づいた。
「全員、最後に投稿した動画の『ラスト三秒前』に『赤いデンドロビウム』を入れている……?」
何の共通点も持たない若者たちが、示し合わせたかのように入れていた『赤い花』。一人の例外もなく、サブリミナルのように映る『赤い花』は、少しずつ表情を変えて動画に映り込んでいる。
言いしれぬ予感に従い、本田は『失踪者』と似たような動画が配信されていないか探し、数日前にアップロードされた動画の最後に『赤い花』を見つけた。
すぐに身元を調べ、住所を頼りにアパートの一室を訪ねるも、すでに家主はいなくなった後だった。
「……試してみるしかない」
この案件は、何かがおかしい。
そう感じた本田は、自らを同じ状況を再現しようと心霊スポットへ向かった。
作成されたのは、たった三分の動画。
……それが、カウントダウンの始まりだった。
「ラスト十秒前に……『赤い蕾』?」
本田の身に起こる、不可解な現象。
「Z、G、@、F、6、J、5、Q、@、ね……血判でメッセージとか、リアルで始めてみたぞ」
迫り来る呪いの連鎖。
「資産家の娘が元恋人に殺害された屋敷……犯人は、獄中で不審死?」
浮かび上がる点と点。
「弟のこと調べてる男って、あんた?」
動画が引き寄せる縁。
『『赤い女』がっ! 『赤い女』が、こっちに――っ!?!?』
広がっていく恐怖と犠牲。
「カメラは持ったか? 刃物は用意したか? 遺書は書いたか? ……よぉ~し、そんじゃあ始めるか――命がけの『肝試し』を」
すべては、惨劇に取り残された怨嗟に集束される。
――2021年、冬。
ドラマ『三秒前のデンドロビウム』、木曜の深夜2:00より放送開始。
『―― ゆ る さ な い ――』
はい、もちろん本文の内容は全部嘘です。雑なあらすじで申し訳ありません。
こういう、絶対に続きを書かないだろうナマモノ系ストーリーを書くの、少し楽しくなってきました。
一般的なデンドロビウムの花言葉…わがままな美人
赤いデンドロビウムの花言葉…情熱と欲望、強烈な愛の願望




