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242回目 2019/11/12

 やっぱりネタがないので、一昨日(おととい)やった悪ふざけをもう一回やろうと思います。


●テンピュール

 テンポ+ミュールを省略・結合した造語。


 近年になってSNS上であげられた動画が話題となり、連日ニュースで取り上げられるようになった新ジャンルのダンス形態。


 文字通り、女性用の履き物である『ミュール』を履いて行われるダンスで、基本的にはストリート系の系譜にありながら、内容はタップ系を主流としている。


 初出は酒に酔った一般女性を映し出した動画ファイル。赤らめた顔や回らない呂律(ろれつ)など、一見して深酔いしている様子が明らかだが、足下だけはしっかりしており倒れることがない。


 そして、再生時間00:21の時点から不意にダンス的な足(さば)きへと変化し、タップダンスを彷彿(ほうふつ)とさせる高速ステップと、街灯の柱ととがったかかと部を軸に回転するミュージカル風な動きを交互に繰り返す、無秩序ながら流麗なダンス構成となっている。


 撮影当時は繁華街の人々が織りなす喧噪だけが響いていたそうだが、動画ではCMにも起用された某アーティストのアップテンポな楽曲が当てられ、そのあまりのシンクロ率の高さにも感嘆の声が集まった。


 後日、動画の女性に記者がインタビューしたところ『記憶にない。何で自分がこんなことをしたのかわからない。というか、この国って肖像権とかどうなっているの?』というコメントを残したっきり、メディアの露出からは遠ざかるようになった。


 最初に動画が出回った当時は『酔っぱらいの超技術』、『酔拳うまそう』、『タイトスカートの中が見えそうで見えないw』など、いわゆるネタ動画としてコメントが集まったのみだった。


 だが、ある有名ダンサーがその動画に感銘を受け、自らのSNSアカウントを通じて『再現してみた』という題名と共に動画があげられ、徐々に一種のダンススタイルとして世間から認知されるようになる。


 決定的だったのが、海を越えアメリカで開催されたストリートダンスの大会で出場者が『テンピュール』を披露し優勝。一気に話題は全世界へと広まった。


 元動画ではタップと回転が主な動きであったが、プロ・アマ問わず世界中のダンサーが独自にアレンジを加え改良していく内に、どんどんと『テンピュール』の枠は大きく広がっていく。


 中でも衝撃度が大きかったのが、『男女ペア』で行われた『テンピュール』だ。どちらもバレエ経験者だという、男女一組のダンサーがミュールを履いて優雅に踊る動画に、5000万PV(2018年11月時点)という閲覧数を叩き出した。


 これを機に、一部の有名シューズメーカーが『男性用ミュール』の制作・販売を決定。さらには『競技用ミュール』も開発され、ミュールはすでに『おしゃれアイテム』ではなく『ダンスシューズ』としての認知が一般的になった。


 そして2019年11月現在、日本でも『テンピュール』を専門で教えるダンス教室が全国でも導入され、すでに小学生には違和感なく受け入れられている。


 また、ダンスの人気や完成度、芸術性の高さから社交ダンスの演目として追加するかどうかの議論も起こり始め、世界のダンスシーンは新たな段階に向かおうとしている。


 しかし一方で、『テンピュール』の見た目以上に激しい動きや難易度の高さから、練習中に怪我を負うダンサーが続出しているという負の一面もある。


 特に危険視されているのが『テンピュール・タンゴ』や『テンピュール・サンバ』であり、ステップを踏み外した後に捻挫や骨折する確率が非常に高く、競技者の頭を悩ませている。


 また、大会の場外乱闘とも言うべき問題も多発している。『ミュール』の構造上、細く長いかかと部分は体重を支える重要な部分でありながら細工が容易で、有力選手が競技中に『ミュール』を破損・転倒するケースが激増した。


 中には選手生命を絶たれたほどの大けがを負う事例もあり、事態を重く見た『全日本ダンス協会』は記者会見を開き、『清廉潔白(せいれんけっぱく)でスポーツマンシップに(のっと)った姿勢を求める』という異例の声明を発表した。


 しかし、記者会見の一週間後、ささいな(いさかい)いから二人の『テンピュール』競技者が口論となり、興奮した一方が『ミュール』を用いてもう片方を刺してしまう。


 すぐに救急車が呼ばれたものの、搬送された病院ですぐに死亡が確認され、『ミュール』による初の死者が出てしまった。


 殺人の容疑で現行犯逮捕されたダンサーの清水香織(23)は警察の調べに対し、『殺すつもりはなかった。被害者が急に四ステップを踏み出したため、手元が狂って刺してしまった』などと供述し殺意は否認している。


 亡くなった被害者は、会社員の早乙女美里さん(24)。足技主体の格闘技・テコンドーの有段者で、たびたびダンススタジオで『ミュール』を履いた蹴り技をして危険だ、と注意を受けていた模様。犯行直前の口論も、そうしたスタジオの利用態度に関してのものと思われる。


 人気急上昇中とはいえ、新興ジャンルである『テンピュール』で殺人事件が発生したことは世論の印象が悪化しかねず、ネガティブイメージが定着しないような広報戦略が求められている。


 参考として、競技に用いられるシューズとして『男性用ミュール』の価格帯は5~100万円、『女性用ミュール』の価格帯は10~300万円とかなりの金額差がある。


 これは上級者向けほどより華美な見た目となるよう、小さな宝石などでデコレーションをする傾向にあるためだ。ダンス競技として重心が安定しない履き物にもかかわらず、見栄えのために機能性を犠牲にしている側面もあるため、装飾された『ミュール』は上級者向けとされている。


 なお、ここに書かれている情報はすべてフィクションであり、実在する人物・地名・事件・団体・金額などとは一切関係がないことを明記しておく。


 前回は何も考えずに一回で五つ(四つ?)取り上げましたが、一回に一単語で十分ですよね。しんどいし。


 なお、『アンサイク○ペディア』では? という感想をいただきましたが、時間があればそちらも読んでいきたいです。ちらっと見る限り、文章の悪ふざけって感じがして面白そうでした。


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