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157回目 2019/8/19

 娯楽と思想のバランスについて、ですかね。


 ここでもかの国に関連した(と思われる物も含めた)ニュースを見て、割と苦言を残したり自分の主張をすることが多くなった。


 そのこと自体は別に悪い変化だとは思っていない……が、ちょっとその感情や思想を創作に持ち込みそうで少し不安に思うときがある。


 思想、というととても大仰に聞こえるが、柔らかく言えば『作者が込めたいメッセージ性』だ。短編はそうでもないが、長編には割とさりげなくねじ込みたい派なので。


 私の不安は、あまりに『メッセージ性』を強くしすぎると『娯楽性』が薄まってしまう、という部分だ。目指す作品がエンタメ系なので、加減を間違えれば致命的になりうる。


 ネットニュースなどで情報を仕入れるようになり、改めて私の危険というか不安定な部分が明らかになってきた気がしている。


 元々、白と黒をはっきり分けたいという意味では『潔癖』な方だ。グレーがあることは許容しても、自分で飲み込む場合には無意識的に二極論を好む傾向がある。


 これはともすれば、一方の意見に染まりやすく流されやすい傾向であるといえよう。自覚はあるが、そう簡単に直せるものでもない。


 まだ自分としては染まりきっているとは思っていないが、いずれ極端な思考の持ち主と呼ばれるようになってもおかしくない。そこで困るのが、作品の雰囲気に思想が出てしまうことだ。


 小説に限らず、芸術作品全般は作者の思想や深層心理が表れやすい。いくら押さえつけようとしても、徐々に作品内ににじみ出てきて隠し通せなくなる。


 最初はシミのように小さな違和感でも、やがてシミの方が大きくなり、最後はガッチガチの活動家みたいな内容になっている……私はそれをとても懸念している。


 実際、最近出した短編にその傾向があるからだ。


 ある場面で『自衛隊』について触れたが、そのときはそのたとえしか思い浮かばなかったのだ。もっと広い視点があったならば、もう少し適切な表現ができたかも、と今は思っている。(修正しようとは思わないが)


 今回はこの程度ですんではいるが、やがてもっと露骨な感じで『思想』を出してしまうかと思うと、今後の執筆にも支障が出るんじゃないかな? とか思うのだ。


 気にしすぎかもしれないし、実際はさほど影響がないのかもしれない。


 それでも、作者の心を反映してしまう作品において絶対はない。


 というか、不完全な生き物である人間の作る創造物は、すべてにおいて絶対などあり得ない。


 ネットによって小説作品がインスタントに出回る環境になって、作家の精神性はあまり意識されることがなくなった(気がする)ので、どうでもいいと思われるかもしれないが、私は気になってしまう。


 たとえネット界隈(かいわい)嘲笑(ちょうしょう)の対象にされがちな『なろう作家』でも、『作家』としての人間のあり方をどうすべきか。


 こんなことを真剣に考えてしまうから、現代で生きづらいのかもしれないけれど……。


 書き終わってからも、私はどうも中道を重視しすぎている節があり、そういう意味では一つの考えにとらわれているともいえますよね。


 正しいことも間違っていることも多く存在するこの社会で、何か一つのことを突き通すことの難しさ。


 自覚すればするほど、自縄自縛を強くしている気がしてなりません。


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