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146回目 2019/8/8

『なろう作家』というか、ウェブ作家をしていると忘れがちなことを、自省の意味も込めて書きました。


 私事(わたくしごと)ながら、曲がりなりにもアマチュア作家としてそこそこの作品を書いたことだけは、自分でも評価していいとは思っている。


 内容のクオリティは……置いておくとしても、まだ書くことをやめていない、筆を折っていないことはたぶん自信を持っていいことのはずだ。


 ――と、普段から自分のできないことばかり見てしまうので、ときおり自分をほめることを意識しないとつぶれてしまいそうになる。


 いつも思うが、私のメンタルは非常に面倒くさいことこの上ない。自画自賛が苦手なので頻繁(ひんぱん)にしたくないくせに、あまり責めすぎるとぽっきり折れそうになる。


 程度の差こそあれ、それは人間ならば誰でも似たような精神構造をしているとは思うが、自然と『やる』か『やらないか』の極端な二択で考えてしまうためか、よけいに自己管理が難しい。


 中でも、読者が示してくれる作品への反応という意味で『評価ポイント』や『感想』や『レビュー』は、自分でほめるよりも効果が高く、なおかつ依存しやすい。


 それは他の作者様もエッセイなどで書かれているが、モチベーションの維持や急落に大きく影響される要素であることはきちんと理解していることが望ましい。


 興味本位でたばこを吸い始めたら、気づけばニコチン中毒になっていたことと同じ……とは断言できないが、似たような効果はあるのではないだろうか? モチベーションの代わりに肺活量も低下するし。


 そんな麻薬に近い効果と副作用を有する発奮剤(ドーピング)があるため、少し多くの読者から作品が読まれるようになると(ないがし)ろにされるものがある――閲覧(PV)数だ。


 実際にどれくらいの人数が読んだか? の指標となるユニークとは違い、閲覧(PV)数は何回作品ページを開かれ読まれたか? というものを数値化したものである。


 つい忘れがちになるが、閲覧(PV)数とユニークPV数の二つも『増えたらうれしい数字』であることに違いはない。


 ただ『評価ポイント』などと違うのは、読者の反応がどうであれ作者の中では『読まれた』という『事実』としてカウントされるため、『増えやすい数字』から『ありがたみが減ってくる』ことだろう。


 人間がより『ありがたい』と感じる報酬価としては、『機会が多くて質が低い』ものよりも『機会が少なくて質が高い』ものの方が高くなる。


『なろう』の中では、閲覧(PV)数<ユニークPV数<ブックマーク<評価ポイント<感想<レビュー、といった順で報酬価(ありがたみ)が高くなっていく。(個人的な感覚)


 ここで正気に戻らなくてはならないのが、これらはすべて『数字』であることだ。『感想』や『レビュー』は手紙の要素が強いためそうは思わないだろうが、『件数』として見れば立派な『数字』である。


 ある意味、人間が作り出した概念(どうぐ)である『数字』がもたらした『呪い』ともいえるだろう。見えなかったものが見えるようになったことが、必ずしも利益ばかりをもたらすものではない。


 たとえば、体重がわかりやすい。体重計が発明され、普及されるまでは人間の体型など見た目だけの印象でしかなかった。


 しかし、体重の『数値化(=視覚化)』により人間は健康の指標として標準体重などの『基準』を定め、視覚には反映されない(されにくい)部分まで気を配らざるを得なくなった。


 もちろん、健康維持のために必要な要素であることは否定しない。


 しかし一方で、体重という『数値』が()せているか太っているかの『絶対的な基準』となったことで、健康を害するケースもある――拒食症などの摂食障害だ。


 拒食症の人はしばしば、ある意味で『体重(すうち)』を神聖視し遵守しなければならない絶対のルールと思いこむ。


 特に日本人女性はモデル体型=痩せ形であればあるほど美しい、という妄執(かんがえ)にとらわれやすい。『痩せた?』と問われると喜ぶ女性が多いことが、その証拠と言えよう。


 そこから『体重(すうち)』のボーダーを自ら定め、それを上回る『体重(すうち)』になることを異常に(おそ)れるようになる。


 そうなれば、後は『体重(すうち)』のボーダーをより下へ下へと設定し、鏡に映る自身の姿よりも『体重(すうち)』を確認したときに己の美しさを自覚するようになる。


 末期になれば、見た目が骨と皮だけになってもなお『太っている』と食事を拒む人さえいる……拒食症は、現代病であると同時に『数値病』ともいえるのだと思う。


 このように、人間は『数字』に惑わされやすい生き物だ。『なろう』における作者へ示される『数字』もまた、例外ではない。


 最初は閲覧(PV)数が増えれば、それだけで喜んでいたはずだ。自分の作品が読まれている、読んでくれる人がいるという事実だけで、満足だったはずなのだ。


 それがいつの間にか感覚が麻痺してきて、『評価が低い』ことを気にし出し、『感想がこない』ことに焦りを覚え、『レビューがない』ことに自信をなくす。


 ひどくなっていくと、拒食症とは逆に『数値』のボーダーをどんどん引き上げていき、ボーダー以下にしかならなかった作品を『失敗作』だと簡単に切り捨ててしまえるようになってしまう。


 足りない、もっと欲しいと、知らない間に『贅沢(ぜいたく)な数値病』におぼれてしまうのだ。


 執筆歴が長くなればなるほど、思い出さなければいけない。


『結果』も重要だが、作品を作っていく間の試行錯誤で経た『過程』の楽しさや達成感こそが、作家としての自分を成長させてくれるものだということを。


 ……う~ん、ちょっと言い過ぎですかね?


 まあ、私の名前に込めた座右の(めい)・『初志貫徹』を忘れないようにする考え方なので、大げさなくらいがちょうどいいのかもしれませんね。


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