136回目 2019/7/29
とあるまとめ記事を読んだ感想を書いてみます。
(ちょっと日付がオーバーしたのは勘弁ください)
『なろう』にいて割と長いですが、私は一度も読んだことがない有名作品の中に『賢者の孫』がある。
最近(ワンクール前だったか?)アニメ化もされて認知度がさらに高まった作品ではあるが、どうも作品への評価は芳しくないようだ。
特に意見を述べる人は主人公へのあたりがキツい。よく聞く文言は『転生要素はいらないのでは?』という設定に関する否定的なものだった。
まず、『なろうテンプレ』にありがちな導入である『トラック転生』も、一般に近い意見だと『不注意で飛び込み運転手に罪を着せ、自分は転生後で気楽な人生を送る上級国民か』というものが目に付いた。
令和改元の直前、とある飯塚幸三氏の乗車した車の暴走事故(母子二名死亡・他八名重軽傷、救護義務違反の疑い、自動運転過失致死傷による『任意同行』→『現行犯逮捕ではない』)と、神戸市営バスによる似たような事故(二名死亡・他六名重軽傷)を起こした運転手は『現行犯逮捕』されたことは記憶に新しい。
そこから、明らかな罪を犯しても警察(および政府)が手を出せない存在――『上級国民』が浮き彫りになり、それとつなげて『孫』の反感が強まった印象がある。(『上級国民』はネットスラングらしいが、上記の事件でもはや公然の存在になりつつある。興味があるなら調べてみてほしい)
トラック関連については前から言われていたが、時事ニュースと相まって反感が強まったのだろう。が、他にもまだまだ批判的意見が目立った。
簡単に並べると、『前世を含めると三十代~四十代のおっさんが、十代のヒロインに入れ込むのは気持ち悪い』とか『ヒロインが単なる記号で魅力がない』とか『主人公を持ち上げるだけの味方が残念』とか『むしろ魔族(敵)を主軸にした方が面白いのではないか?』などなど。
細かい部分を含めればまだ存在し、さんざんな言われようである。
反対にいい部分も挙げられてはいたが、何というか、『なろう』の中での相対的な評価という印象が強かった。『主人公を除く設定や人間関係は面白い』とか『むしろ『孫』というたたかれる存在が認知度を高めた』とか、ほめ言葉かどうかは迷うところのフォローが大半だった。
私もアニメは一話だけ拝見したが、どうにも肌に合わずそれ以降の視聴はしていない。主人公の言動も多少引っかかったが、それ以上に作品が作っている空気感が個人的にあわなかった。批判的意見にも、おおむね同意できる。
そのことから、『孫』は他の『なろう』作品と同じく『炎上商法』に近い売れ方と思われているのかもしれない。『悪口を言っても問題ない作品』としての『なろう』、という叩き・ツッコミ前提の楽しみ方だ。
ある意味、『破壊セラピー』に近いのかもしれない。一時期ニュースで見かけた、失敗した陶芸品(皿やコップなど)を数百円で買い取り、壁にたたきつけてストレスを発散するサービス業である。
効果としては、『毒をはいてすっきりする』という行為を見ると、『他人の悪口を言い合う』という女性コミュニティで発生するおしゃべりに通ずるものがあるのだろう。
言霊を信じている私としてはあまり肯定しづらいが、仲間を見つけて特定の対象を攻撃する行為は心中のストレスを和らげるだけでなく、一種の連帯感と承認欲求を感じられると思われる。
それを『ネット』という広すぎるコミュニティで行えば、自然と悪口の数も多くなって否定意見の声も大きくなっていく。
そんなこんなで、『なろう=ストレスをぶつけられる的』として認知されてきたことで、『なろうで売れるには『炎上商法』が近道』なんて考え方も生まれつつある。
純粋な作品として評価されないのは、作者としてもつらいかもしれない……が、作品は作者と読者の両方がいて初めて評価が確定されるものだ。
娯楽があふれ、作品の個性が薄れがちな状況では、必要な戦略なのかもしれない。
なんか、心がブルーになりました。




