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1196回目 2022/6/22

 もうすぐ紙幣の肖像画が代替わりするタイミングですよね。そんな時にこんな賠償請求をされたら、マジでどうしよう? と途方に暮れるかもしれません。


 一回目

 お題『アブノーマルな許し』

 必須要素(無茶ぶり)『夏目漱石』

 文字数『1214文字』 未完


 タイトル『コーヒーの代償』


「――あっ!」


 消しゴムを取ろうとして手の甲にマグカップがぶつかった瞬間、やばい! って危機感だけが沸き上がった。


「あぁ~、やっちまった……」


 が、体はそのまま硬直した状態で危機を脱してはくれず、気づけばコーヒーがノートにぶちまけられてしまった後だった。


「どうしよ、千堂から借りてたのに」


 昨日の授業で居眠りしちまった板書を写させてもらうため、一日だけクラスメイトに借りていたノートが、染み込んだコーヒーで白紙から茶封筒みたいな色に変わっちまった。


 乾かせばまだ使えるか? 一応、千堂が書いた文字は読めなくもないから、返せば許してくれるよな?


「……うん、自業自得な俺に仏心を出してノートを貸してくれた千堂のことだ。怒られこそすれ、殺されるなんてことにはならないだろう」


 ティッシュで水分をふき取り、ドライヤーでシワシワになったページを乾かしながら、放課後にため息交じりにノートを貸してくれた千堂のことを思い返す。


 そうだよ、良いやつなんだよ千堂。優しいやつなんだよ千堂。頼めばなんでもしてくれそうなくらいチョロいんだよ千堂。


 だから大丈夫。明日事情を話せば、許してもらえるさ。


「とりあえず、ノートの写しより先に机の片付けしなきゃだなぁ……」


 放っておいたら縁から零れて床のカーペットが台無しになる。作業を中断して掃除と片づけを先に済ませておこう……。




「ごめんなさいでした」


 翌日。


 掃除の疲れでぐっすり眠ってしまった俺は、まだ残っていたノートの写しを忘れたままコーヒーまみれにした借り物を差し出し頭を下げた。


 言い訳はしない。したところで千堂のノートの状態から何をしでかしたのかはおおよそ察せられるだろう。千堂は常に学年十位以内の成績だ。頭も人間もできたやつなのだ。


「……すごいね。恩を仇で返す、ってことわざを実体験として知ることになるなんて思わなかったよ」


「も、もうしわけない……」


 あれ? なんか怒ってる?


 なかなか受け取ってもらえないのは、まぁ表紙までコーヒーのシミが残っちまったからだろうか? 何とか乾かすことには成功したが、案の定ノートがシワシワになってしまい、一部の小学生が持つ付箋張りまくり国語辞典みたいな分厚さになってしまっている。


 昨日ノートを貸してくれた時はもう少し明るい声音だった気がするけど、今は一オクターブくらい低い気が……く、空気が重い。


「このノート、まさか文字が読めなくなってるなんてことはないよね?」


「そ、そこは大丈夫だと確認しております」


 嘘を吐くと後が怖そうだが、これは本当。ちゃんと乾かした後で前頁チェックしたが、文字が読めなくなるほどひどいページはなかった。


「そう。じゃあ許してあげる」


「せ、千堂!!」


「夏目漱石の千円札で手を打つよ」


「――はい?」


 なつめそうせき?//(時間切れ)




 二回目

 お題『斬新なババァ』

 必須要素(無茶ぶり)『マクガフィン』

 文字数『955文字』 未完


 タイトル『人質の賞味期限』


「……いつになったら帰れるのでしょうか?」


「あぁ? なんか言ったか、ばあさん?」


「何でもありませんよ、魔王」


 私の隣で大きな背もたれの王座に足を組んで座っている青肌の美丈夫に、もはや連れ添いのような気安さで返事をする私。


 人族の姫として生まれ育ち、十五の誕生祭の日に魔王にさらわれてから、かれこれもう五十五年。


 魔王のきまぐれで始まったこの誘拐劇は、いまだ人質である私が魔王の支配域でゆったり過ごすほどの延長戦を強いられている。


「しっかし、お前んところの王国が送ってくる兵士、全然弱いな。伝令すら俺のところに来られないって、どんだけひ弱な生き物なんだよ?」


「……私に言われましても困ります」


「ばあさんはとっくに魔属領に馴染んじまったってのに、ほとんどの人間はいまだに国境を越えたら瘴気にやられてバタバタと死ぬらしいぞ? あんた、もしかして本当は魔族側の出生だったんじゃねぇの?」


「口を慎んでください。私は生まれた時から前王と前王妃の娘。魔王に戯れで連れ去られるまでは第一王女としての責務を果たし、人間として暮らしていました。瘴気に対する免疫が強かったからと言って、魔族と混同されるのは屈辱以外の何物でもありません」


「ふ~ん。あ、そういえば言ってなかったが、お前んところの親父だった国王はもう三代前の王族だぞ。今は姪孫てっそん――お前の兄貴だった王子の孫にあたるガキが王位を継いでるんだと。それにもうすぐそのガキどもが王位継承権を争うとかで政争に躍起になってるってよ。バカだよなぁ、ばあさんの身内」


「……そう、ですか……」


 私の年齢を考えたらすでに代替わりしていてもおかしくないとは思っていましたが、まさか兄さまの子どもが王位につくほどの時間が経っていたとは。


 しかし、魔王から聞く話が事実だとすると、すでに私はいないものとされている可能性が高いですね。薄々は気づいていましたが、それにしては扱いが軽すぎると思います。


 そういえば、勇者を名乗る人間側の尖兵が最後に魔族領域に出陣したと聞かされたのは、何年前のことだったでしょう?


 ……私の記憶に間違いがなければ、四十五年前が最後だった気が。


 あれ? もしかして私、人質の期間が長すぎてお価値が//(時間切れ)


 本来は『マクガフィン』として機能するはずの『さらわれた王女』が、全然主人公が現れなかったために老婆になってしまった、みたいなシチュエーションでお題をクリアしたつもりでいます。


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