1184回目 2022/6/11
ちょっと不気味な雰囲気の話になっていました。ここから何をしたかったのかは、私にもイマイチ掴み切れていません。
一回目
お題『ありきたりな団地』
必須要素(無茶ぶり)『傘』
文字数『1233文字』 未完
タイトル『閉鎖された部屋の窓』
窓から外を見ると、今日も傘を開いてたくさんの子どもが歩いていた。
「……いいなぁ」
窓を打ち付ける雨は強い。バタバタ、バタバタ。音はうるさいけど、みんなで一緒にカラフルな傘を広げて歩いていく様子は、一人家に取り残された私にはとっても楽しそうに見える。
ここの団地は子どもが多くて、同じ時間に一斉に出てきて集団登校をしている。下校はバラバラだけど、同じ団地の子たちは仲がいいのか必ず二人以上で固まって下校してきていた。
私も、本当ならあの傘の中に紛れて学校に行っているはずなのに。私は家の外から出られない。
病気じゃないのに。怪我でもないのに。鍵もかかっていないのに。私はずっとこの家から出られないでいる。
「私も、学校、行きたいなぁ」
胸をぎゅっと掴んでも、こみあげてくるさみしさは消えてくれない。強くなる雨は、カラフルな傘の姿さえも曖昧に溶かしていく。
姿がぼやけるのは雨でぬれた窓ガラスのせいか、目に水の膜が浮かんでしまっているせいか。
どっちでもいい。どっちだったとしても、私はきっと、あの中には入れない。
「ここから、出たいなぁ……」
窓に両手をついて、登校していく子たちを見送る。
傘たちがいなくなってから、諦めて振り返ると、いつものようにベッドと机とテレビと冷蔵庫があるだけの部屋があった。
扉はない。コンロも換気扇も洗面台もない。あるのは四つの家具だけ。
冷蔵庫を開けると、ポケットには紙パックの牛乳とオレンジジュースとコーヒーがあった。昨日はフルーツ牛乳と豆乳とリンゴジュースだった。
中の収納部分には、容器に詰められた総菜がぽつんと置かれていた。
一番上の段に手を伸ばすと、パックが三つあった。中身はご飯と野菜炒めとみそ汁。冷蔵庫の中で触った時は冷たかったのに、何故か冷蔵庫の扉の外に出すと熱々になっている。
私はそのご飯をいつも通りに机に並べ、蓋を開けて手を合わせる。
「――いただきます」
そうすることで、私の前に初めてお箸が用意される。誰が置いたのか、用意したのかわからない。でも、ホカホカと湯気を上げる食べ物を手でつかんで食べるよりはマシだ。
今日のお箸は緑色だった。昨日は茶色。その前は青色。お箸は日によって色が違っている。そして、私が『いただきます』と言えば現れて、『ごちそうさま』と言えばご飯が入っていたパックと一緒に机の上から消える。
後は、テレビを見る事しかやることがない。窓の外を見ても、子どもや大人がそれぞれ行ける場所に行くだけで面白みがない。毎日飽きるほど見て、諦めを育てていくだけだ。
「――ごちそうさま」
合わせた手を下げて目を開けると、私の食事をした跡はきれいさっぱりなくなっていた。今日もこのルールは変わらないらしい。
テレビの電源をつける前に、改めてこの部屋を見渡す。
壁は真っ白にされていて、子どもの私でも動き回るには//(時間切れ)
二回目
お題『大人の犬』
必須要素(無茶ぶり)『豊胸手術』
文字数『1258文字』 未完
タイトル『問題だらけの家族たち』
大人は作るものであって、なるものじゃない。
それを教えてくれたのは、世界で一番軽蔑している両親だった。
「お前さぁ」
「は、はい……」
「ずっと同じ見た目だから飽きてきたんだよね。言いたいこと、わかる?」
「ど、どう、すれば……」
「はぁ? 自分で考えることもできないの? それでも母親?」
「ご、ごめん、なさい……」
これが、父親と母親の会話だと誰が信じられる?
俺の父親は典型的なDV男。外面はよくて、異常なほどに内弁慶。母親や子どもは所有物で、支配しないと気が済まないクソ野郎。
俺の母親は典型的な従順人間。身体的・肉体的暴力を受けても……いや、おそらく暴力なんか使わなくても、誰かに命令されて従わないと生きていけないグズ人間。
両親が異常だってことは、保育園の時に他の親子の様子を見ればすぐに分かった。俺の親は家族のモデルケースとして異常すぎたと、三歳の時にはもう悟っていた。
だから俺は両親を『扶養者』としてしか見ていない。決して『保護者』だとは思わない。血の関係に無償の愛はない。ただただ義務感だけが流れている。
無駄な反発はしない。少なくとも自立できるまでの力と年齢が追い付くまでは従ったふりをしていく。父親にこびず、母親に逃げない。
両親は反面教師だ。支配しないと自分を満たせない空っぽな人間にならない。支配されないと自分を保てない空っぽな人間にならない。
俺は人間になりたい。少なくとも、両親のような人間のなりそこないにはなりたくない。
素直に他人の家族を羨ましいと思いながら、心の中で両親への反発を静かに育てる日々は、自分が考えているよりあっさりと過ぎて行った。
「さすが俺の子だな。隆は母親のようになるんじゃないぞ」
「うん、わかってる」
父親は従順なフリをしていれば無害な存在だった。生活に必要な金を落としてくれる分、有益な寄生先だったともいえる。
時々、優秀さを自分に重ねるために俺の成績を利用しようとするのが鬱陶しかったけど、宿主に逆らうのは子どもの頃じゃないと我慢し続けた。
「隆は私のこと、見捨てないよね? お母さんを置いてどこかに行ったりしないよね?」
「うん、大丈夫だよ」
母親は支配されることに慣れきってしまっていたが、同時に父親の反感を買うようになって生傷が絶えない体になっていた。
見た目が悪いから、と俺が中学に上がるころには外出もさせてもらえていないらしい。暴力の跡を隠そうともしない父親のやり方にも問題はあるが、それで助けを俺に求めてこようとしているのがもっと問題だ。
空っぽな母親に、俺はいつも空っぽの言葉を返す。度重なる整形手術により、俺の助けを請う母親は、暴力以外の要因でもはや別人のような見た目になっていた。
作られた美人、と言っていいだろうか。テレビで前に見た整形セレブよりはマシだが、子どもの頃の写真と比べれば別人だとわかるくらい変わっている。
顔もそうだが、豊胸や//(時間切れ)
お題だけなら年齢を重ねた『飼い犬』でも出せばよかったんですが、無茶ぶりのせいで嫌な感じの方向転換をしてしまいました。こんな家族、私なら嫌です。




