1174回目 2022/5/31
お題を見た瞬間に『心霊スポット』が連想されたのですが、無茶ぶりの挿入は我ながら強引だったなとは思います。あと先輩チャラいな……。
一回目
お題『難しい土地』
必須要素(無茶ぶり)『太宰治』
文字数『1418文字』 未完
タイトル『心霊スポットでお掃除バイト』
人間失格って、太宰治だったっけ?
あれって結局、ダメ人間の半生を描いたものだったよな? まともに読んでなかったから、記憶に自信はないけど。
ともかく、ダメ人間ではあっても人間ではあったんだよな。だったら、失格と言われるほど逸脱していたわけじゃなかったんだろう。社会的に受け入れられているかは別にして。
なんでこんなことを考えているんだったっけ? ……あぁ、人間と呼ぶには枠が外れすぎているモノを見てしまったからか。
「うわっ、結構怨念が強いな。ここの地縛主、意外とこびりつきが強そうだよ」
「……あの。先輩」
「うん? 何、新人君?」
「俺、霊感とかないと思ってたんですけど、なんかばっちり見えちゃってるんで、どういうことかなって」
「あー、たまにあんのよ。一般人もこっち側に引きずり込むような場所が。パワースポット? みたいな感覚だね。残念ながら、君も今日から見える側になっちゃったみたいだね。これからよろしく」
「いやです。こんなんとよろしくしたくないです」
簡単な清掃補助と聞かされてホイホイついてきた貧乏学生は今、地元じゃ『絶対に行ってはならない場所』として有名な心霊スポットで霊感に目覚めてしまった、らしい。
こんなの誰も期待していないし、嬉しくない展開だろ。どうして俺、地面から生えてくる顔とか腕とか足とか見えちゃってんの? 人間の枠から失格したパーツばっかり見せられてもリアクション取れませんけどー?
「ごめんねー。こればっかりは目覚めちゃったら蓋とかできないから。諦めて見える世界をエンジョイしてよ。あ、そこの洗剤とって」
「どうぞ……先輩はよく平気でいられますよね……慣れってやつですか?」
「いんや。割と切迫してる。ここ、ガチで危険地帯だから新人君も気を付けてね」
「初めての現場で初めての体験している新人がどうやって気をつけろと!?」
「適当に身を守ってくれればいいから。大丈夫。見える人は高確率で自衛手段もゲットしてるから。ほらあれ、酔っ払いに絡まれたのをうまくかわす感じでよろ」
「繁華街にも行ったことありませんよお金ないんで!!」
「あー、なる。このバイト、時給だけはいいからねぇ。騙されちゃったわけだ。危険手当とかでないから、メンタルケアとかにお金かけたくなかったら死ぬ気で防ぎなー」
簡単に言ってくれるよこの先輩!! ってか、さっきからなんか色々用意しているものの意味も分かってないのに、自衛しろって無茶オーダーすぎない?! 何もできないまま死ぬ気配びんびんなんですけど!!
――あ、地上に突き出た生首さんと目が合った。もうやだ。かえりたい。
「あのー、具体的にここ、どう危険なんですか?」
「お? 新人君、腹括って興味出てきた感じ?」
「身を守るのが自分だけなら少しでも情報が欲しいだけですが何か?」
「おっけーおっけー。優しい先輩が色々教えてやるよん」
幽霊業界長いんだろうけど、口調とか態度が軽すぎて頼もしいのか頼りないのかわかんないんだよな、この先輩。
じゃらじゃらとアクセサリーをつけてたら面と向かって文句も言えるのに、じゃらじゃら鳴ってるの手首につけてる数珠だもんな。真面目なのか不真面目なのかも、もう謎ですよ先輩。
「この土地は、俺が見る限りだと色んなものが混ざっちまってて、一発で綺麗には出来ない感じだね。結構」//(時間切れ)
二回目
お題『捨てられたピアニスト』
必須要素(無茶ぶり)『漫画』
文字数『1363文字』 未完
タイトル『ピアニスト拾った』
漫画みたいな出会いって憧れていたのは事実だけど、こういう形では出来ればノーサンキューでいたかった。
「……おぉぅ」
「…………」
中学校の授業が終わって下校中、『拾ってください』ってメモがはっつけられた段ボールに座る少年は、視覚的なインパクトが半端ない。
思わず立ち止まった私と目を合わせようとせず、ひたすら地面を見つめている姿もいたたまれさが増す要素だろう。どうしよう、すっごいかわいそう。
でも、これは拾えない。犬や猫でも拒否されるのに、人間を拾ってきたら親から怒鳴られるだけじゃすまない。いや、そもそも人って捨てていいの? 拾っていいの?
漫画は好きでいろんなラブコメ見てきたけど、こんなボーイミーツガールは見たことがない。だいたい拾ってくるの、小さくてフワフワな子犬とかだし。ほぼ同い年の男の子イン段ボールとか想像の埒外だし。
「ええ、っと、大丈夫? 警察呼ぶ?」
犬猫なら無視できるが、がっつり見てしまった捨て子……捨て子? を見捨てることはできなかった。
近づいて話しかけてみると、男の子から反応はなし。そりゃそうか。私が同じ立場だったら、人間不信に陥って誰とも話したいなんて思わなくなるだろう。
……待てよ? これは本当に親から受けた仕打ちなのか?
そもそも捨て犬のテンションで準備された小道具つきの捨て人なんて発生しうるのだろうか? これはワンチャン、この人のかなり特殊な遊びか趣味、ってことはないだろうか?
世の中には露出狂みたいな頭のおかしい人間もいるんだし、捨て犬になり切って段ボールに収まる系男子がいてもおかしくないかもしれない。
「親がいらないって。僕の音、綺麗じゃないからって」
「あっ、普通に虐待なんだね! よかった!!」
いや、よくはないだろ私!! 異常性癖じゃなかったからなんだっての!? それだったら普通に事件じゃんか!!
「け、警察行く? 交番なら場所知ってるよ?」
「いい。連絡行くのは僕を捨てた親のところだし、今度は人がいないところまで連れていかれて捨てられるかもしれない」
「そ、それは確かに困るかもだけど、このままここにいるのも危ないと思う」
「季節は春だから、寝るだけなら何とかなると思う。まだ人がいる場所に捨てられたから、屋根がある場所に移動すれば雨もしのげると思う」
「思ったよりたくましいな、君」
言外に山の中だったらもっと焦ってた、ってことだよね? 私と呑気にお喋りできる環境だからこそ、まだ余裕が残っていると。
見た目が女の子っぽい感じなのに、芯っていうか精神が強いな。私が親に捨てられたら、絶対泣き叫んじゃうと思うんだけど。
「そういえば、音って何?」
「何が?」
「え? 君が言ったんだよね? 音が綺麗じゃないから、捨てられたって」
「あぁ……僕、子どもの頃からピアノを習わされていたから」
「へぇー、すごいね」
「すごかったら親に捨てられてないよね?」
うぐぅ!! 失言した私が悪いけど、なんて的確な反撃!!
ダメだ、もうなんて声をかけていいのかわからない!!
「……これからどうするの?」
「わからない。僕にはピアノしかできないし」
「教育、偏り過ぎじゃない?」//(時間切れ)
シチュエーションだけは安易に決定しましたが、どう話を転がして盛り上げるかは考えられないまま時間切れになりました。短編はやっぱり難しいです。




