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1157回目 2022/5/14

 もし頂点があるのなら、それから先は衰えていくだけ、みたいな感覚をお題から受け取ってしまったのでこうなりました。うつ、とまではいきませんが、少なくとも明るい話にはなりそうもないです。


 一回目

 お題『栄光の作品』

 必須要素(無茶ぶり)『海苔』

 文字数『1009文字』 未完


 タイトル『仏師の落剥』


「……つまんねぇなぁ」


 用意していた白飯のおにぎりに海苔を巻いてがっつく。


 すっかり冷めちまった飯だが、問題ない。元から味にこだわるようなタチじゃねぇからな。食えて頭と身体に血が回れば何でもいい。


「っく。本当、つまんねぇもんしか作れなくなっちまった」


 指についた塩気をなめとり、最後の一個を胃まで流し込んで、製作途中の木像を見上げる。


 大きさはだいたい三メートルちょっと。依頼は立派な観音様。納期はまだ十分あるし、完成度もほぼ五割を上回ったところ。


 順調だ。すこぶる順調だ。仕事であるって点では、な。


「やっぱり、名が売れるまで頑張るもんじゃねぇな。何事もよ」


 反面、俺の中でずっとくすぶり続けている思いは目の前の観音様に対して申し訳ない気持ちにしかさせてくれない。


 納得のいく仕事が出来なくなって、どれくらい経っただろう?


 依頼してきたやつらは満足していた。美しいだの神々しいだの、好き勝手な解釈で俺の作って仏像を褒めていった。


 そりゃそうか。海外のなんとかってコンクールで優勝したかどうかで、俺の作った彫像は高値で売れるらしいからな。ご機嫌取ってブランド物を量産したい奴らはわんさかいるだろうよ。


 実際、コンクールで評価された作品は俺にとっても会心の出来だった。これ以上ないってものを作った自負もあったし、達成感もあった。


 それがピークになっちまって、後は腕がさび付く一方。素人連中には、俺の最高傑作と似たようなもんにしか見えねぇみたいだが、作った本人からしたら天地ほども差があるモノしか作れなくなった。


 引きつった微笑み、硬さが残る手のひら、精気を感じない足、木の繊維から脱し切れていない着物。


 見るに堪えない彫像たちは、他ならない俺の手によって量産された。それがどれほどの屈辱か、駄作を喜んで売りに出した奴らにはわからないだろうさ。


「ここいらが、俺の年貢の納め時かな……」


 まだ体力は残っていたが、気力が一気に萎えちまった。作業を中断して、作りかけの彫像から目を背ける。


 俺の手からどんどん零れ落ちていく仏さんのカタチに、不思議と焦りはなかった。多分、一生で到達できる最高傑作を作ってしまったから、未練がほとんどないからかもしれない。


 それでも悔しさはあった。無様な姿に彫るしかできない自分の腕が憎らしかった。そして、仮の姿をあたえて//(時間切れ)




 二回目

 お題『見知らぬ哀れみ』

 必須要素(無茶ぶり)『鶏肉』

 文字数『1020文字』 未完


 タイトル『かわいそうに』


「かわいそうに、って言われたことはあるかい?」


 市場で買った鶏肉の下処理をしていた弟子に問いかけると、ポカンとしたマヌケ面をさらしていた。


「……また何かの問答ですか? 間違えたら飯抜きとか」


「いや。どちらかと言えば……私の失敗談だよ」


 あぁ、今思い出しても笑えてくる。


 いっぱしに弟子なんか取って偉そうにしている私が、こいつなんかよりもっと小さな子どもから教えられたなんてね。


「へぇ! それはぜひ聞いてみたいですね! どんなやらかしをしたんですか!? 前みたいに盗人を捕まえようとして家一軒吹っ飛ばした話とか最高でしたよね!!」


「そうだったな。遠慮なく笑ってくれた貴様に今夜の主菜はいらないらしい」


「おーっと! チキンは死守しますよ!! 久しぶりの肉ですから!!」


 汚い腕で抱きしめるな、女々しい弟子め。サバイバル術はてんでダメなのに、料理の腕だけは上がっていくんだからわからないやつだ。


 それと師匠の失敗談で過呼吸起こすほど大笑いするバカもこいつくらいだろう。思い出し笑いで涙を浮かべていた時は本当に殺してやろうかと思った。


「うっ!? なんか、妙な寒気が……っ!!」


「日ごろの行いのせいじゃないか? 月が出ている内は気を付けることだね」


「何を!? 何に!? まさか師匠になんかやられんの俺!?」


 凶行の目的や手段の前に誰からを特定したのがさらに腹立つな……。


「まぁいい。調理の片手間に聞いておきな。失敗談もまた教材だ」


「はぁ……そんなに聞かせたい話なんですか?」


「まあね。言うなれば、思い込みの愚かさを教えられた話さ」


 焚火を眺めながら思い出すのは、まだ二十代の若造だったころの自分。


「師匠ってまだ二十代じゃ?」


「もうすぐ三十路は二十代とは言わないんだよ」


 まだ十代のガキにはわからない感覚だろうけどね。


「ある街を歩いていた時だ。スラムにほど近い場所で、一人の子どもが遊んでたんだよ。見るからに親なしのストリートチルドレンだ。手足もやせこけ、ぼろきれみたいな服を着て、ゴミを集めたようなボールを蹴っていたんだ」


 どこにでもある光景だった。本当ならどこにでもあっちゃいけない姿だった。


「だから思わず口走っちまったのさ。『かわいそうに』、ってね」


「それは……まぁそうなんじゃないですか? 聞くだけでも恵まれていない子ども相手だから、おれd」//(時間切れ)


 失敗談のオチとしては、スラムの子どもから『自分は今の生活でも満足している』と言われた上で『自分をかわいそうに思うあんたの方がかわいそうじゃないか?』と言われた、みたいな流れを考えていました。


 身なりや肉付きなどの物質的な豊かさしか見ず、現状に対する心情的な豊かさに目もむけられない『心の貧しさ』を、『かわいそうに』の言葉で表現しようとした、みたいな。ちょっとややこしいことを書こうとしすぎましたね。


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