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1150回目 2022/5/7

 お題を『失ったところで何も感じない状態』と捉えて書きだしました。この続きを書くとしたら、男キャラにとっては『学校』で、女キャラにとっては『相方』だったかもしれません。


 一回目

 お題『限りなく透明に近い喪失』

 必須要素(無茶ぶり)『クリスマス爆破計画』

 文字数『1372文字』 未完


 タイトル『だって、君が楽しそうに笑うから』


「爆発しないかなぁ……うちの学校」


「――させてみる? うちの学校」


 さんざん殴られて、お金も取られて、校舎の暗がりで空を見ていた僕の独り言に、誰かが声を返してくれた。


 立ち上がるのも億劫で、まぶたが腫れた左目の代わりに右目で左を見ると、スカートから伸びる足と逆光で暗くなった小さな顔がのぞき込んできていた。


「……どちら様でしょうか?」


「名乗るほどのパンツじゃないよ」


「残念ながら、こちらからは見えませんよ」


「パンツが?」


「顔が」


 そっちか、なんて笑う声は無邪気なのに、さっき聞こえてきた返答が頭から離れない。


「……できるんですか?」


「何が?」


「学校」


「爆発?」


 こくり、と確かに顎を引くと、その人は何でもないように笑った。


「できるよ。私、めっちゃ理系だし」


 からかわれているのかと思った。こんなボロボロになった男をバカにしに来たのかとも思った。


 でも、なんだかどうでもよかった僕は、その言葉をとても頼もしく思えた。


「なら、お願いしていいですか?」


「おっけ。私に任せて――」


「一緒に、この学校、吹き飛ばしましょう」


「……一緒に?」


「はい。一緒に」


 多分、この人なら一人で出来るんだろう。僕は頼むだけでよかった。この人にきっかけを与えるだけでよかった。


 でも、僕はただ学校を爆破したいと思ったわけじゃない。


 僕の手で、僕の意思で、壊してやりたいと思った。


 人任せじゃなくて、自分がちゃんとかかわった上で。


「――ふーん。そんなこと考えてたんだ、脇坂君」


「そうですよ。それに、正直なところ沢渡さんが本当に爆弾を作れるなんて、思っていませんでしたし」


「あ、ひっどー! めっちゃ理系って言ったじゃん!!」


「あはは……それだけで信じられる人は、そうはいないと思いますよ」


 かわいく頬を膨らませて怒る姿はとてもあどけないのに、手にした精密機械をいじる手は繊細で、武骨で、冷淡だ。


 沢渡さんと出会ったのは夏のころ。


 今はもう冬になり、期末テストがもう少しで迫る十二月の初日。


 沢渡さんは本当に、学校を爆発させるための爆弾を作ってしまっていた。


 僕が確認しているだけで、八個も。


「僕からも聞いていいですか?」


「なーにー?」


 作業に区切りがついたのか、目頭を解しながら背伸びをする沢渡さんに問いかける。


「どうして僕に協力しようと思ったんですか?」


「退屈だったから」


 何のためらいもなく返ってきた理由に、あぁ、沢渡さんらしいなと、納得してしまった。


「それで、僕のバカみたいな話に食いついたんですか」


「そだよ。だって普通思わないでしょ? クラスメイトからカツアゲされて、出た結論が学校が爆発しないかな? って。復讐したいなら、そいつらの家を燃やしたいとかじゃない? なのに、君が選んだ破壊は学校っていう箱庭そのものだった。論理的じゃない。だからこそ面白い」


「……こんな場所があるから、僕みたいなやつが生まれたんだって思うと、不必要なんじゃないかと思ったんですよ」


「へぇー。そう。まぁ、脇坂君のことはどうでもいいかな」


 相変わらず、かわいい笑顔でひどいことを言う人だ。


「クリスマス」//(時間切れ)




 二回目

 お題『可愛い広告』

 必須要素(無茶ぶり)『衝撃の展開』

 文字数『1051文字』 未完


 タイトル『羊の玩具屋さん』


「いらっしゃいませー! 町と町を移動する『羊の玩具屋さん』、本日限定で開店だよー!」


 王都からも辺境からも遠い、王国人流の中継地に当たる町で、威勢のいい呼び込み文句が響き渡った。


 声を張り上げる青年の隣には、羊をモチーフにした被り物をかぶった小柄な人型がぴょこぴょこと動いている。


 サーカスや大道芸とも違う、おかしな催しを目にした町の住人達は皆足を止め、青年と羊人のパフォーマンスに群がっていた。


「玩具屋さん? あんたら、まさか商売人かい?」


「えぇ、そうですよ! といっても、呼び込みを命じられた下っ端ですけどね!」


 明るく陽気に自虐する青年に、大人たちからは笑いが起こる。半分くらいは苦笑であり、自らの下積み時代を思い出してのことかもしれない。


「その横の、羊っぽい人はなんだい? 変わった大道芸だな?」


「こっちはうちの店の名物キャラクターで、『シープくん』っていうんですよ! ぶっちゃけ、ちょっとへんてこな服や被り物だと思ってくれて結構です! ただ、素材にはかなりこだわっていて、なんと本物の羊の毛を使って作ったんですよ!」


「へぇ~、器用なもんだなぁ。で、あんたらの売り物ってのは、その被り物かい?」


「いやいや!! これ客寄せのための衣装であって、売り物じゃないですって!! これを一人分作るのにどれだけ時間がかかったと思ってんですか!!」


 演技にしてはあまりに必死な青年の様子に、またしても集団から笑いが起こる。彼が客引きを命じられたのは、素で道化を演じられるからだろうか?


 なんにせよ、どこか間が抜けて滑稽なやりとりで人々の警戒心が薄れ、羊人は無言のまま必死に店をアピールしている。


「にしても、玩具ねぇ……別にここら辺は玩具で遊べるような場所もねぇしなぁ」


「移民希望者がいても、ほとんどが王都に近い町まで行っちまう。宿場町としては小規模だし、子どももそこまで多くないぞ? こんなところで商売やるなんて、アンタんとこの商会長はあんまり商才ないんじゃないかい?」


「そ、そんなこと言わないでくださいよ! ってか、それをうちの誰かが聞いてて俺が言ったことにされてたら、後でめちゃくちゃ怒られるんですからね!!」


 また大人たちの中で笑いが起こるが、数少ない子どもは不思議そうに青年を見上げている。


 演技にしては必死な表情は、本当に青白くなっていたのだから。


「まぁ、兄ちゃんを助けると思って少し冷やかしてやるか」


「うちのしんせき」//(時間切れ)


 本当ならこの後、店に入った客を昏倒させて縛り上げ、夜の内に逃げ出すって展開を考えていました。羊の皮をかぶった狼、みたいな感じで、商人は商人でも奴隷商人だった、みたいなオチです。


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