1143回目 2022/4/30
主人公と爺さんのやり取りをもっと短くできたら、コンパクトにまとめられたかなと思います。前ふりを十分に振らないと不安になるクセ、直せるんでしょうか?
一回目
お題『希望の俺』
必須要素(無茶ぶり)『1000字以上1500字以内』
文字数『1378文字』 未完
タイトル『未来が見える鏡』
「未来が見える鏡はいるかい?」
フリーマーケットに顔を出して、あらかた冷やかした後の帰り際。
隅っこでガラクタみたいなものを並べている爺さんに、そう声をかけられた。
「未来? そんなの見えたら苦労しないだろ爺さん」
見た目、ぼろきれみたいな布製の合羽みたいなものを着ていて、風呂にも入っていなさそうなほど体臭がにおう。それにひげも眉毛もボーボーで、細かい年齢はわからんがしわも深い。
認知症の老人のたわごとにしか聞こえなかったが、特に何も買わなかったので少しだけ会話に乗ってみようと思ったんだ。
「ほっほ。その未来が見える鏡が、これだよ。試してみるかい?」
差し出されたのは、かなり古めかしい手鏡だった。
シルエットだけなら虫眼鏡みたいな、丸い鏡面部分と丸い取っ手がついたシンプルなもの。鏡は磨かれていて綺麗ではあるものの、持ち手と一体になった鏡をはめ込む素材は濁った赤色をしていてかなり古臭い。あと、爺さん婆さんの家特有の臭いがする。
詐欺だな。もしくはもうろくジジイの妄想だ。
そう決めつけながら、俺は冷やかしの延長でその鏡を手に取った。
「試すねぇ……どうやったら未来が見えるんだ?」
「自分の映し出せばいい。あとは、やりたいことを頭に思い浮かべれば、お前さんの未来が見える。良い方も、悪い方もね」
「は?」
にやり、と笑った爺さんの言葉に首を傾げる。
良い未来が見える、ってのはセールストークとしてわかるが、どうして悪い未来まで見えるなんて付け足したんだ?
人間なんだったら普通、良い未来しか見たくないもんだろ? わざわざ失敗した未来なんて見たくもないし、見せられたところでどうしようもない。
それに、やりたいことを思い浮かべるとか抽象的過ぎんだろ。鏡に話しかける、とか言われてもかなりアホな状況になるからこの場で試すだけならありがたいけど。
「どうする? 怖くなったかい? 残念ながら未来は良し悪しセットだ。やめておくなら今の内だよ」
「……ふーん? まぁいいや。どうせ大したことないだろうし、ちょっと使わせてもらうよ」
爺さんの挑発に乗った気はしたが、ジョークアイテムだとしても面白そうだと思ったのも事実。
ひとまず何も思い浮かべないまま手鏡に自分を映してみる。人を小ばかにしたような、悪い顔だ。完全に爺さんをボケ老人扱いしていたのがわかる。
もう少し顔を引き締めないとな、と普通のことを思った瞬間――。
「え?」
鏡に映る俺の顔が歪み、もはや別人レベルのイケメンが映っていた。それこそ、さっき俺が考えたような『引き締まった表情の俺』が。
整形か、詐欺メイクか。手段はわからんが、それこそ滅茶苦茶頑張れば手が届きそうな自然さなのに、ちゃんと『俺の顔』だとわかる絶妙な仕上がり。なるほど、確かにこれは『良い未来』だろう。
「はー、すげ――うわっ!?」
が、美形の俺に見惚れる時間もなく、また顔が歪んだと思ったら今度は滅茶苦茶になった『俺だったものの顔』が浮かんできた。
前にテレビで紹介されていた、整形のし過ぎで中毒になり油を顔に注射した顔面崩壊おばさんとそん色ないレベルで、顔がボコボコに晴れ上がり目も唇も鼻も肥大化して痛々しい。
それはまさに//(時間切れ)
二回目
お題『暗黒の夫』
必須要素(無茶ぶり)『ミュンヒハウゼン症候群』
文字数『1230文字』 未完
タイトル『壊れた旦那は心配されたい』
旦那が闇堕ちした。
「今、どんな感じ?」
「……むりそう」
「そう。会社には私から連絡入れとくから」
最初はうつ症状だった。旦那は真面目すぎるくらい真面目で、だからこそ色んなものを抱え込みやすい性格をしていた。
少し前から残業が多くなって、家に帰る時間もどんどん遅くなっていった。私も別の会社で働いていて、疲れもたまってて気づくのが遅れてしまった。
気が付けば、旦那はいきなり朝から動けない状態になっていた。病院に連れて行ったら、心身症の一種だろうって医者に言われた。心にたまったストレスが、体を動かせないほどのだるさになって表れたんだろうって。
それで会社に連絡したら、話を聞いているとうちの旦那に仕事を押し付けてた馬鹿が大勢いたみたいで、普通にキレた。労災認定待ったなしで訴訟も辞さない覚悟で怒鳴り込んでいったのは、もう理性じゃなくて本能だったね。
弁護士も交えた交渉の末、とりあえず休職扱いになった旦那は自宅療養に専念して、その間の生活は旦那の会社からもぎ取ったお金と私の稼ぎでつないでいた。
こういう時に共働きでよかったと思う。専業主婦とかやってらんないから、外で働かせてくれてた旦那にも感謝だ。
「あ、おかえり」
「ただいま……は、いいけどさ。本当に休めてる? 無理してない?」
「うん。家事をしてたら気晴らしになるし、何もしていないと落ち着かないから」
ただ、仕事が休みになったら今度は専業主夫をしだしたので心配は消えなかった。何というか、いらない苦労を背負いたがるようにしか見えない旦那は、手のかかる子どもと同じくらい世話が焼ける。
旦那の『大丈夫』は基本的に信用できないから、なるべく見ているようにしていたんだけど、こちらも社会人としての立場があるから四六時中見張ることはできなかった。
そのせい、とは思いたくないけど。
心身症がだいぶマシになって職場復帰してからだろうか。旦那の闇が加速していた。
「ちょっ!? 何やってんの!?」
「え? あれ?」
旦那が復職して、一カ月くらい経ったころ。
仕事から帰ってきたら、旦那が包丁で自分の腕を切りつけている場面に遭遇した。
慌てて傷口をタオルで押さえて病院に行ったおかげか、その時は大事にならなくて済んだ。ただ、医者から少し脅しのような言葉も聞かされた。
「もう少し深く刺していれば、指先の動きが不自由になっていたかもしれません」
それくらい旦那は自分を傷つけることに躊躇がなかったということになる。
何事もなく生活していたと思っていたから、自傷行為に至るまで思い詰めていたなんて……と最初は私自身が落ち込んでしまった。
「ごめん」と旦那に謝られるたびに、自分が情けなくなって泣いてしまったこともある。
だけど徐々に、旦那の方がおかしくなっていたのだと気づけたのは、似たようなことが半年で三回もやらかしてくれた//(時間切れ)
実際の『ミュンヒハウゼン症候群』って、きっかけはもうちょっと単純かもしれませんけどね。怪我や病気をした時に周囲の人から心配されたのが快感になってやめられない、みたいな病気ですから。




