1140回目 2022/4/27
後から思ったんですが、夢から覚めた段階で終わらせとけば短編にできたのでは? と。しかしそれだと、思わせぶりなことを投げっぱなしにするだけで、完結とは言えなくなりますね。
一回目
お題『記録にない冬』
必須要素(無茶ぶり)『車』
文字数『1269文字』 未完
タイトル『知らない夢の記憶』
その記憶は、いつも車の中から始まっていた。
運転席の後ろに座っていて、ぼんやりと車内を見渡して、助手席と運転席に誰かがいるのに気づく。
それから何となしに窓の外を見れば、高速道路みたいな長い一本道の外に雪景色が広がっていた。山間部らしく、山や谷にたくさんの木が生えて、雪をかぶっている姿は綺麗だと純粋に思った。
でも、俺はいつもそこで気づくんだ。
俺は雪を見たことがない。雪が降る地域で生まれたこともなければ、旅行や何かで出かけたこともない。
だからこの記憶も、身に覚えがないはずの光景なのに、いつもいつもひどく懐かしい思いに駆られるんだ。
『――――――――』
誰かが何かをしゃべっている。記憶が曖昧なのか、単純に聞き取れなかったのか。何度この記憶を見聞きしても、はっきりとわかることはなかった。
夢だ。これは夢なんだ。記憶とは言ったけど、いつでも思い出せる光景じゃない。寝ている間、たまに見る夢だとわかる夢。
一度見ただけならただの明晰夢だろうけど、夢を夢だと確信して見る夢は俺の中でこの光景だけだった。だから、これは俺の記憶なのだ。
『――――――――』
また、誰かが何かをしゃべっている。正直、運転席の人か助手席の人かもわからない。男か女かもわからない。もしかしたら俺自身が何か喋っていたのかもしれない。
意識ははっきりしているのに、それだけ曖昧なことしかわからないこの記憶は、何故か優しい記憶だということだけがはっきりしている。
瞼が落ちていく。夢の、記憶の終わりが近づいている。
俺は安心してまた眠りに落ちるんだ。とても暖かくて、気持ちよくて、体に伝わる振動がさらに眠気を誘ってきて。
だから俺は、この記憶を見ればいつも優しい感覚になるんだと思う。まるで両親と旅行に出かけているような、そんなまどろみに包まれるんだ。
あぁ、短い記憶がまた終わる。
次はいつになれば見れるんだろうか?
俺自身にもわからない、俺が覚えていない冬の記憶。
「……はぁ」
目が覚めたら、自分の部屋の布団の中だった。
起き上がる前に右腕で目元をこする。あの夢を最初に見た頃からそうだった。起きた瞬間、目から涙を垂れ流している。
嬉しさからか、寂しさからか。いまだに俺はこの涙の理由を知らない。夢は夢だと、現実に向き合うために涙を誤魔化すのが、俺の踏ん切りのつけ方だ。
「きったね」
あと、これも恒例なのだが目やにがひどい。
自分自身はただ寝ているだけなので、どのくらいの時間泣いていたかはわからない。それでも目にこびりついたクソでかい目やにからして、相当な時間泣いていたことは間違いないだろう。
それに喉も異様に乾くし。早いところコップ一杯の水を飲んで、頭をすっきりしないとと思う。
「うー、さむ」
奇しくも季節は冬。窓が白くなったりはするが、雪はほとんど降らない地域で過ごす十五年は、夢の中と比べて起伏が穏やかだった。
まぁ、あのみじかいき//(時間切れ)
二回目
お題『幼い演技』
必須要素(無茶ぶり)『東京湾』
文字数『1265文字』 未完
タイトル『ワガママ坊ちゃんが家出した!』
汽笛の音が聞こえる。
潮風が運ぶ臭いが、ちょっと鬱陶しい。
東京湾を臨む港でボーっとしているガキなんて、周りからどう思われるだろうか? 自殺でもしそうな感じさえ出さなければ、放置してもらえるだろうな。
「家出ごっこはおしまいですか?」
「……羽島。遅かったね」
「おそ……これでも必死こいて探したんですけどね?」
「だったらもっと早くに捕まっててもおかしくなかったな。僕のプロファイリング、甘いんじゃない?」
「今まで一度も来たことがない場所にいて、よく言いますねお坊ちゃん」
「それくらい予想できないと、お坊ちゃんの監視役は務まらないよ?」
僕の視線は海から離れず、隣に大人の気配がしても座り込んだまま。
羽島はどうするか、と思っていたら同じように座ってきた。
「サボり?」
「休憩ですよ。まったく、子どもが挟む相槌じゃないでしょうに」
「父親には早く連れ戻せ、って命令されてるんじゃないの? それで、僕が何に対して気に入らなかったのかも探りを入れておけ、って」
「……あんな下手な芝居に騙されるのなんて、社長と夫人だけでしょうがね。みんな、必死なフリして色んな所でサボってますよ」
「やってよかったでしょ? 家出ごっこ。うちの親は部下を働かせすぎなんだよ。そのくせ要求はいつも面倒くさいほど高い。息抜きくらいさせてやればいいのに」
「はっ! まさかお坊ちゃんが、俺たちのことを想ってこんなことをしたなんてね。涙が出てきますよ」
「当然、それを建前に僕が習い事をサボりたかっただけだよ。泣かなくていいから、今後は僕の監視を緩くしてくれない? それとも、定期的にガキの癇癪を起してあげようか?」
「それは勘弁してください。あんた、マジでどこに行ったかわからない工作しやがるんで」
自分でも驚くほど素直に笑みが浮かんだ。子どもらしくない笑い方だけど、僕らしい笑い方。
子どもらしさを求めてくる両親の前では出せない、素の自分はこんなところでしか出せない。
「僕の両親だけど。どっちを求めてるんだろうね?」
「はい?」
「永遠に彼らの子どもであってほしいのか、自分たちの跡を立派に継いでほしいのか」
「あー、さて、どうなんでしょうね?」
僕も自分が相当面倒くさい人間だと思っているけど、両親は輪をかけて面倒な人間性をしていると思う。
家族だけの時はこれでもかと甘やかして子ども扱いしてくるくせに、グループの後継者として扱う時は完全に大人として接してくる。
そのギャップが激しすぎて、もはや本当の両親がどちらの顔なのか、息子の僕もわからないし周りの部下たちもわからないんだと思う。
二面性が激しすぎる上に、本性を誰にも見せない両親が悪い。だから優秀な人ほど周りから離れていくし、愚かな人ほどグループ内でのさばろうとする。
自分で言うのもなんだけど、このままじゃうちのグループって総崩れになるんじゃなかろうか? 僕が引き継ぐ間もなく、内部分裂を起こしそうな//(時間切れ)
うーん、大きなグループの会長の息子、みたいなイメージで書きましたけど、ふわっとしたイメージだと何とも言いがたい話にしかならなさそうですね。知識不足はいつでも足を引っ張ります。




