1134回目 2022/4/21
もし地獄でもティータイム文化があったとして、環境を考えると本当に楽しめるのか? って純粋な疑問で書きました。まぁ、例のごとくオチも何にもないんですけど。
一回目
お題『紅茶と冥界』
必須要素(無茶ぶり)『ガラパゴス諸島』
文字数『1155文字』 未完
タイトル『地獄でお茶して』
「二つ疑問があります」
「何? くだらないことだったら上司に聞けよ」
「気の置けない同僚に聞くからくだらないんじゃないの? まぁいいけど」
地獄に就職して十年くらい過ぎた頃。休みの日に同期とカフェ巡りを満喫していたところで、少し引っかかることができた。
「まず一つ目。なんで俺たち、亀の甲羅を椅子代わりにしてんの? 動物虐待?」
「あー、何だっけ? ガラパゴスゾウガメ、だっけ? 今の現世ででっかいリクガメいただろ? あれが密輸されてこの国で死んじまったんだけど、帰国しようにもパスポートがないらしくて、仕方なく働いてるんだと」
「え、動物の社会も何気に厳しい……ちなみにこれでどう働いてるの?」
「見りゃわかるだろ。椅子のバイトだよ」
「うちの国、こんなんだからブラックって言われるんじゃないだろうか……」
使えるものは親でも使え、みたいな言葉があった気がするし。椅子なら普通に作ったもの使えばいいのに、雇用先がないからって無理やり働き口を作らなくても。
「どうだかな。考え方しだいだろ。少なくとも就労ビザも降ろさず放置するよか温情じゃねぇか? 資本主義が進んで拝金主義っぽくなっちまったが、裏を返せば金さえあれば何とか出来るんだからな」
「……お前、社畜意識が強まってないか? もうちょっと今の雇用体制に不満とか持ったりしてないの?」
「どうせもう死んでるんだ。死にそうなくらい過労になったところで、これ以上死ねる場所ないんだから同じだろ」
「やめろよー、そんな死人ジョーク聞かされても反応に困るし―」
俺も同期も死んでるんだからその通りではあるんだけどさ。生きている間は不老不死って一種のブランド的扱いだったけど、死んだ後は転生しない限り標準装備だからな。年齢だけ重ねても性根が変わらないから、見た目と中身のギャップある奴ばっかだし。
それに転生って、地獄じゃ救いじゃなくて拷問の一種みたいな扱いだもんなぁ……。死んでからわかる、現世の暮らしの苦しさと無情さに嫌気がさすね。
「で、もう一つの疑問って?」
「あー、俺たち地獄の娯楽スペースでこうしてお茶してるじゃん?」
「おう。ここコーヒーめっちゃ美味いよな。また次の休みも一人でゆっくりしたいわ」
「あぁうん、それは好きにしたらいいけど……他の国の地獄とかってどうなのかな?」
「あん?」
地獄って概念は共通しているけど、お国柄や文化によって内容は結構違う。
わかりやすいのは仏教とキリスト教での地獄、みたいな。詳しくは比較できないけど、この国じゃめっちゃ裁判するし。
「何が言いたいんだよ?」
「ふと思ったんだけどさ、地獄って場所柄、変な臭いとか結構するじゃん? 肉が焼ける臭いとか特に」//(時間切れ)
二回目
お題『小説家たちの昼食』
必須要素(無茶ぶり)『阿部寛』
文字数『1367文字』 未完
タイトル『作家は不養生』
「……先生、またお菓子ですか?」
「え? ダメなの?」
「ダメっていうか……健康に良くないですよ。野菜とりましょうよ」
「ん」
「いや、野菜ジュースこっちに見せられても」
締め切りが近づいてきたのもあって、催促の意味も込めて進捗状況を確かめにお宅へ訪問したら、いつも通りすさんだ生活を送っている先生の姿が。
パソコンで作業してるから原稿用紙が散らばって、なんて状況にはないものの、資料本で机の周りはごちゃついていて足の踏み場も点々とした飛び石っぽい空白があるだけ。
一応、客間として案内されたところは比較的綺麗にされているけど綺麗とはとても言えない散らかり具合。挙句、昼食の名目で口にしてる食べ物が駄菓子ばっかりだから余計に心配になる。
「なんか、先生って典型的な不健康作家そのものですよね。早死にしますよ本当に」
「それならそれでいいよ……別に長生きしたいなんて元から思ってないからさ」
「それは困りますよ。せめて今やってる仕事のシリーズは完結させてから死んでください」
「俺につく担当って歴代全員原稿のことしか心配しないけど、そういう縛りでも受けてんの?」
「それが仕事ですからね。人が書いた話で飯食ってる人間なんて大概そんなもんですよ」
「本人の前で言うなよ気分悪いな……」
うまい棒をぼりぼり食ってた先生が嫌そうな顔で野菜ジュースを飲む。見れば見るほど不健康な食生活だな。とはいえ、俺自身が差し入れを持ってくるようなことしないけど。金ないし。
「っつうか、こういう生活してんのって俺だけじゃないだろ? 他にも作家に圧力かけてんだから、その辺詳しいんじゃないの?」
「編集者をなんだと思ってるんですか……。まぁ、複数の担当を掛け持ちするのが普通ですから? 先生以外の作家さんのお宅にもいきますけど」
「生活改善して欲しいなら、実例を示して欲しいもんだね。ほら、誰でもいいから模範にして欲しい先生とか紹介してよ。作家同士のネットワークが広がるかもしれないし、新しいネタが生まれるきっかけになるかもだし」
「仕事が絡んでるから微妙に断りづらい言い方やめてくださいよ……」
ため息をついたところで、プリンターから印刷する音が聞こえだした。初稿自体は出来たようで、ついでに現物を持たせてくれるらしい。
データの原稿ももちろんもらう。ついでなので、USBにコピーしてもらおう。
「えぇっと、他の作家さんの生活ですよね? 確か……俳優の阿部寛さんみたいな顔した三角丸先生はご存知ですか?」
「いや? 誰それ? 純文学系の人?」
「先生と同じ、エンタメ小説系の人ですよ。ホラーメインで書いてますけど、ときどき恋愛とか冒険小説なんかも書いたりします」
「ほえー。多才な人は羨ましーねー。俺、ミステリーしか書けないから尊敬するわ」
「ドラマ原作を連発しているベストセラー量産する先生もすごいですからね。で、三角丸先生は一昨日に訪問したんですけど、昼食に宅配ピザを食べてましたかね。飲み物はコーラ」
「え、アメリカ系の人?」
「ゴリゴリの日本人ですよ。阿部寛さん似なので日本人離れしたご容姿ですけど」
「不摂生レベルじゃ俺と大差ない感じするけどなー。体型も種っとしてたりする?」//(時間切れ)
お題からして『不健康』というワードが似合いすぎると思ってしまうのは私の偏見でしょうか? 小説家もそうですけど、漫画家も荒れてるイメージがあります。




