1092回目 2022/3/10
せめて『パスタ』までは書きたかったですけど、設定固めのためのエピソードに入ってしまうと軌道修正がなかなかできないです。着地点が見えないままだと短編って本当に難しい。
一回目
お題『儚い善人』
必須要素(無茶ぶり)『パスタ』
文字数『987文字』 未完
タイトル『だから俺は長生きするんだろう』
良い人は早死にする。
どこかの誰かから聞いた言葉を、俺は小さいころに本当のことだと思い知った。
「すい臓がんだったって」
「自覚症状が末期になるまでほとんどなかったみたい」
「気づいた時には全身に転移してたらしいよ」
お葬式でヒソヒソと話される言葉が、頭の中で上滑りする。
年齢的に老衰にはまだ若く、でもそれなりに年を取っていたその人は、昔路上でうずくまっていた俺を拾ってくれて、パスタを食べさせてくれた。
俺の両親は、俺が物心つく頃に交通事故で亡くなったらしい。俺の記憶は、最初から親戚の家で居候状態の、肩身が狭い環境にあった。
加えて、俺の両親に何か思うところがあったのか、虐待紛いのことまで受けていた。幼いながらにこの家は居場所がないと悟った俺は、隙を見て逃げ出したんだ。
あんまり記憶がないけど、二日くらい町を歩いていたと思う。靴も履かず、身なりもボロボロで、当時は確か四歳とかそこらだったと思う。
一目見れば訳ありだと気づく見た目でも、俺は二日、道行く人々から放置されていた。
そのころにはもう気づいていた。
俺に優しい人なんて、この世には存在しないんだと。
だから、誰かに助けを求めることもしなかった。諦めた。雨が降り出しても、公園の茂みに丸くなっていただけだった。
『君、どうしたの!?』
寒くて、体が震えて、もう動きたくないと思っていた時に、あの人に見つかった。
おばあちゃんくらいの年齢で、傘を差しながら手にはビニール袋をぶら下げていた。買い物の帰りだったらしい。
もうその時には考える力も立ち上がる体力もなくて、ただ茫然とその人を見つめていただけだった。
声をかけられて、救急車を呼ばれて、病院までついてきてくれたその人を見ながら、俺は何も感じなかった。
助けてもらって嬉しいとも、死に損なって悲しいとも思えず、これから自分がどうなるのか不安に思うことさえなかった。
ただ、冷たかった身体が温かくなっていくのを、ただの事実として受け入れただけだった。
詳しくは覚えていないけど、結局俺は本当に死にかけていたらしい。医者やあの人にも叱られた記憶があるけど、怖いとも申し訳ないとも思えなかった。
完全に感情がマヒしていた。体が快方に向かっても、心は凍ったまま長くすごしていt//(時間切れ)
二回目
お題『昼間の冬』
必須要素(無茶ぶり)『スラム街』
文字数『1203文字』 未完
タイトル『スラム街のゴミ溜め』
ゴミみたいに道端で人が死んでいる場所で、俺は自分の居場所を探している。
吐く息が白くて、鼻や指の先が冷たい。雪はちらついていないけど、いつ降り出してもおかしくないほど空気は冷たい。
曇り空はまるで工場の煙突から噴き出す煙みたいで、ただでさえ後ろ向きな気持ちが余計に沈んでいく。
袋の中に道端のゴミを拾って放り込む。まだガキの俺には、こうした雑用くらいしか仕事がない。それでも仕事があるだけマシな方だろう。あぶれた奴は、生きる為に盗みを覚えるしかない。
あとは物乞いとかがいるけど、そういうのはたいてい道の隅っこで眠ったまま二度と起きてこない。スラム街なんてどこもそんなものだろう。貧しい人間の掃きだめには、ゴミと死体が押し出されるんだ。
俺もそう。貧しかった両親が自分の食い扶持を確保するため、俺をゴミのように捨てた。夜、寝ている間に放り出されて、最初はここがどこかもわからなかった。
そこからは生きるのに必死だった。なんとか盗みに手を出さずにこれたけど、これからもそうかはわからない。ゴミ拾いの仕事だって、誰もがやりたがらないだけで誰でもできる仕事なんだから。
もらえるお金も少なく、まだガキの俺が一日やり過ごすだけで消えていく程度の金額だ。大人になれば、ゴミ拾いをしても生きていけなくなるだろう。
「はぁーっ」
両手をこすって息を吹きかける。少しでも寒さを紛らわせられればと思ったけど、あんまり効果はなかった。
ふと、両手を見てみる。真っ赤になった指先は傷と汚れがたくさんあって、ふと足元で転がっている老人の枯れ木のような手と変わらない。
そういえば、俺って今いくつなんだろう? 親に捨てられてから、年を数えるのを忘れてしまった。季節を何度、スラム街でやり過ごしたかも覚えていない。
また空を見上げた。相変わらずねずみ色をした雲は、俺のいる地上に向かって落ちてきそうなほど重々しい。
俺は生きているんだろうか? 死んでいないだけ? 生きているって、なんなんだろう?
考えてもどうしようもないことが頭の中を駆け巡る。自分の生きる意味なんて、考えたところでお腹が膨れるわけでもないのに。
右を見て左を見て、休んでいるのかもう動かないのかわからない人影ばかりが目に入る。俺はまだ動けるけど、この人影たちとどこが違うか、自分でもはっきりわからなくなってきていた。
「雪が降ったら、本当に死ぬかもな……」
今の寝床だって、屋根なんて上等な物はない。ゴミの中から集めたボロ布で暖を取り、少しでも温かそうなゴミに囲まれたまま寝て死なないようにしてきた。
そんなだから、雨でも雪でも、冬の季節に体温を思いっきり下げられたら死ねる自信がある。
嬉しくはない。けど、残念だとも怖いとも思わない。
死んでないだけで、生きてすらいない俺には、子も//(時間切れ)
ネガティブな内容が続いていますが、こういうのしか浮かんでこなかったので仕方ないです。ポジティブとか明るい話って、書くのにエネルギーいるんですよね、基本的に。




