1090回目 2022/3/8
『冷たい』人間をどう描くかで悩み、結局変な感じになりました。
一回目
お題『冷たい罪人』
必須要素(無茶ぶり)『新聞』
文字数『910文字』 未完
タイトル『非社会的な人間』
お前には人の心がない。
物心ついたころに親父から言われた言葉だ。
俺の人生は、その言葉から始まっている。
「動くな」
ふらっと立ち寄ったコンビニで、俺は店員に包丁を突きつける。
すぐに状況が呑み込めなかったのか、中年の男は俺と包丁に視線を行き来させた後、息を呑んで体をこわばらせた。
「言う通りにすれば危害は加えない。俺が消えてから通報するのも自由だ。ただし、俺が目の前にいる時に妙な行動を取ったら、命の保証はしない」
「ひっ! ……ひっ!」
「金を出せ。レジにある分だけでいい。それと」
ひきつけを起こしたのか、喉をけいれんさせた音だけを繰り返す男に、あらかじめ持っていたカゴを見せた。
「この弁当、温めてくれるか?」
ガサガサとレジ袋が手元で騒ぐ。
家に戻った俺は少しの疲労感でため息が出た。
「次やる時の分、あればいいけどな」
少し汗ばむ髪に指を通す。途中までずっとフルフェイスのヘルメットをかぶっていたから、開放感がすごい。
ヘルメットは途中で捨ててきた。唾液や毛根からDNAが採取される危険性はあったが、別に構わないと判断した。
移動するための資金は手に入れた。場所が場所だったから大金ではなくとも、町を出るだけの交通費くらいは余裕でまかなえる。
荷物が全くない部屋は、今日中に引き払う予定ですでに大家と不動産会社に連絡してある。後は俺が残していた荷物を持てば、退去は完了だ。
その前に、強盗に入ったコンビニでかっぱらった朝食にありつく。深夜の時間外労働があったぶん、少し豪勢にカツ丼と幕の内弁当の二つだ。
ほんのり温かい弁当に箸を入れる。味は微妙だが、腹が膨れればいい。食べながら明日以降のことについて考えを巡らせる。
仕事は転居先で探すつもりだった。いい求人があればいいが、あまりいい職歴じゃないし期待はできない。日雇いか肉体労働系のバイトを狙うしかない。
弁当と一緒にレジ袋に突っ込んだ新聞を眺める。日課で毎日買っていたが、今日は強盗したついでにくすねてきた。まあ、誤差みたいなもんだろう。
一面から一通り記事を眺めて、//(時間切れ)
二回目
お題『漆黒の闇に包まれしピアニスト』
必須要素(無茶ぶり)『ところてん』
文字数『1022文字』 未完
タイトル『家族に捧げたい音色』
生まれた時から俺にとって、ピアノとは娯楽ではなく義務だった。
『違う。もう一度ここから弾き直して』
子どもの頃の記憶は、こんなものばかり。プロのピアニストである母親が、厳しい顔で俺を見下ろし間違いを指摘する。
それが当たり前すぎて、母親が笑っている時の方が怖かった記憶がある。俺にとって母親とは、常に不機嫌そうな顔をしている人だったから。
「もうすぐ開演時間ですので、スタンバイお願いします!」
「わかりました。よろしくお願いします」
スタッフの人に呼ばれて、楽屋から出た。
親が親だから二世タレントみたいな扱いだけど、自分のコンサートをしてもらえるのはありがたいと思う。
「それにしても、本当にあれで良かったんですか? ケータリング」
「あぁ、はい。好きなんですよ、ところてん」
「正直、ほとんど聞いたことがないお願いだったので、何度も伝言ミスを疑ってしまいました」
「あはは、すみません。でも本当に、食べたら落ち着くんですよ、俺の場合ですけど」
誘導してくれるスタッフさんとの雑談をしながら、思い出すのは祖父の顔だった。
『……好きにしろ』
中学生になってから、より過激さを増すレッスンに嫌気がさし、家出したことがあった。
そこで頼ったのが母方の祖父母の家。父親はとっくの昔に離婚していて、頼れる当てとして考えられなかった。
突然押しかけたのに、祖父は何も聞かずに家に入れてくれた。そこでおやつがわりによく出してもらえたのが、ところてんだった。
『……あんまり美味しくない』
『嫌なら食うな。俺が食う』
口数が少ない人で、あまり会話をした覚えがない。それでも、ちゃんと気持ちを伝えてくれる人だった。
祖父の家で過ごしたのは、たったの三ヶ月ほど。母親が強引に連れ戻しに来るまでの短い間だったが、家族との思い出として記憶に残すには十分な時間を過ごせたと思う。
俺にとって母親は血縁の教師でしかなく、家族と呼べる人は祖父だけだった。家出した頃にはすでに他界していた祖母がどんな人だったのか、聞いておけば良かったと今は思う。
これから俺は、初めて観客にお金をとって演奏する。その中に、一番聞いて欲しかった祖父はいない。
祖母と一緒に聞いていてくれればとは思うが、俺は祖父の前でピアノのことは一切話さなかった。俺が何をしていたのか知らなかったもしれない。
それでも、たと//(時間切れ)
また人生回顧録になってしまいました。短編に向いていないやり方なのに、設定を固めようと思ったらこうなるんでしょうね。




