1034回目 2022/1/11
バリエーションの限界を感じた無茶ぶり、『《算数のたかし》』がありました。こいつ一体何者ですか?
一回目
お題『緩やかな船』
必須要素(無茶ぶり)『《算数のたかし》』
文字数『911文字』 未完
タイトル『算数世界の成り上がり』
「なぁ、そろそろ絞めないか《算数のたかし》を」
「奇遇だな。僕もそう思っていた」
小学校からの帰り道。
あまりにもムカつくことがあって、二年生から同じクラスの山田に話を持ちかけた。
「だけど高木。やっぱり僕たちには何もできないと思うんだ」
「どうして?! 山田は悔しくないのか?! 《算数のたかし》の好き放題さは見てられない! 誰かがちゃんと釘を刺すべきなんだ!」
「そうだな、わかるよ。国語の小テストで出てきたもんな、釘を刺す」
うんうんと頷く山田。気持ちは同じなんだ。そこは疑っていない。
「でもな高木……相手は問題文にしか現れないブルジョワだ。僕たちはただ、やつがやっていることを指を加えて見ていることしかできないんだ」
「くそー! 《算数のたかし》め! ついに豪華客船で世界一周クルーズの旅に出るなんて!!」
本気で悔しがる僕。こっこり涙を飲む山田。
僕たちが懲らしめたかったのは、小五になってから現れた《算数のたかし》だった。
最初はなんとも思わなかった。やつは僕たちと同じ普通の小学校五年生で、買い物に行く時も歩いて行ったり自転車で行ったりしてたんだ。
でも、六月あたりから状況が変わり出した。《たかし》のお父さんが事業で成功し、問題文に出てくる話がどんどん豪華になっていったんだ。
その豪遊ぶりはクラス中で知れ渡っていた。九月に入るとお母さんとの買い物にはベンツを使うようになり、遊園地には週一で通い晩御飯は高層ビルの展望レストランで食べる贅沢ぶり。
ついには遊園地を貸し切って妹とメリーゴーランドの周りで走り回るなんて贅沢までしていた。もはや時速何キロで走っていたとか、《たかし》が妹を何回追い越したかとかなんてどうでもいい話だ。
そう思っていた矢先、十一月になって《算数のたかし》は家族旅行で世界一周の旅に出た。船の速度は時速三十キロらしい。原付の法定速度とか載ってたけど、それの意味はよくわからない。
とにかく、普段乗っているベンツよりも遅い速度で、豪華客船でのんびりしていると思うと、《算数のたかし》がどうしても許せなくなったんだ。
「しよ//(時間切れ)
二回目
お題『オチは悪魔』
必須要素(無茶ぶり)『切符』
文字数『1019文字』 未完
タイトル『私にジョバンニはいない』
「……あ」
気づけば、電車に乗っていた。
外の景色は見えない。というか、よくわからない。
まるで夜空の中を走っているような光景は、それこそ前に読んだ宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のワンシーンみたいで。
「みたい、じゃないのか」
手には切符がある。行き先は書いてないけど、たぶんその駅につけばわかるんだろう。
どちらかと言えば、私はカムパネルラなのかな。本と違うのは、私にはジョバンニがいないってことだけ。
その時が来るまでの話し相手がいてくれたらよかったんだけど、そこまで贅沢は言えないよね。
「やぁ、こんばんは」
なんて、ちょうど考えていたところで。
いつの間にか私の前、向かい合う形で座っていた男の子が喋りかけてきた。
「あなたも、どこかの駅で降りるの?」
「そうなるね。車窓からの景色もまあまあ綺麗だけどさ、少し暇だから話し相手になってよ」
「うん、いいよ」
柔和な笑顔の男の子だった。私と同じか、少し下に見える。
若いのに大変だな、なんて私が言えた義理じゃないか。親より先に死んだ私も十分に親不孝だ。
「ここに来るまでの経緯は覚えてる?」
「うん、まあね。あまり言い触らすような内容じゃないけど」
「あはは。老衰とか病死とかじゃない限り、この電車に乗ってたら後ろめたいことくらいあるさ」
この子、直球だなぁ。
「簡単に言えば、ダイエットが原因なのかな」
「へぇ? ちょっと面白そう」
「酷いなぁ。私は真剣だったんだよ? 真剣に痩せようとして、ご飯を食べなくなって、登校中に駅のホームから落ちちゃったんだ」
「ふぅん? それはわざと?」
「ではないかな。覚えてる限りでは、貧血になっちゃったみたいで。ボーッと待ってただけなのに、目の前がグルングルン回ったんだ。それで、気づけば電車がきたホームに倒れてたの」
「なるほどねぇ。事故よりの自殺、ってところか。これはまた、判断と反応に困る答えだなぁ」
「ふふ、なんで君が困るの? 私の死因なんてもう終わったことなのに」
すると、男の子は表情を少し変えた。ずっと笑顔だったけど、なんていうか、威圧感が増した気がしたんだ。
「君にとってはそうだろう。でも、これから君はいろいろ審判を受けるんだよ。聞いたことない? 死んだ後に人間が受ける裁判のこと」
「え、と、閻魔様のやつ?」
「それもある。地獄の裁判はもっと//(時間切れ)
タイトルだけはオシャレにしましたが、内容はよくある感じのものですね。お題をオチにするしかないですしこの場合。




