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幸せにしたいのは主人公じゃない!  作者: いたちのしっぽ
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すみません…

短いです…


「なんで…」

「なんでも何も、あんた自分のした事分かってるのか?まだ4歳の女の子を虐待して、酒代欲しさに売り飛ばしたんだぞ。それを今更返せとよく言えたな」

「っ!」

シンとレイルを伴いシュンは父親であるダラスの家へとやって来ていた。

シンがずっと左手を握ってくれているうえに、レイルが率先して話してくれているお陰で昨日のように恐怖心に襲われることはなかった。

家には改心したダラスを擁護しようと近所の大人たちも集まってきている。

「私はもう貴方の娘でもなんでもありません。今日はただそれを言いに来ただけです」

7歳の女の子がはっきりと拒絶の言葉を紡ぐが、周りの大人たちは「お父さん頑張ってきたんだよ」「今はもう真面目な昔のお父さんに戻ったんだよ」等と庇う発言をするが、そんな事シュンにはまるで響かない。

シュンにとっては赤の他人なのだから。

「は、まさか!この男に騙されてるんじゃないのか!?こんな小さな女の子を買うくらいだ!きっと碌な奴じゃない!」

「そうだ!そうに違いない!!」

何を言ってるんだこいつらはと思うが、売られたシュンが一緒に生活しているという事は、レイルがシュンを商人から買ったのだと誤った認識をしているのだ。

そうだそうだと周りは叫び始め、レイルやシンをロリコンだの変態だのと罵倒する者まで出てきた。

更にダラスは「お父さんが助けてやるからな!」と家の奥から棒切れまで持ち出す始末。

自分勝手な連中に最早溜息しか出ないシュンは、パチン!と指を一つ鳴らした。

「なっ!?なんだこれは!!?」

床に縫い付けられたように動かなくなったダラスはいきなりの事に恐怖で表情を引きつらせた。

「いい加減にしてくんないかな。レイルは死にかけた私を助けてくれた人だよ?シンだって私を守ってくれてる。それを悪く言うならタダじゃおかないよ?」

「…は」

大凡子供が出す空気ではない。

殺気と言うものがシンとレイル以外の全てに向けられた。

「どんなに改心したって、死にかけた原因を作るような人を父親とは思えない。今は良くても一年後は?五年後は?話し合いの最中、そんな棒を持ち出す様な人が今後同じ事をしないなんて保証はどこにも無い。そんな危ない人の側に私は居たくない」

気まずい空気が襲った。

それもそうだろう。

ただ話をしていただけにも拘わらず一方的に罵声を浴びせ、更には得物まで持ち出したのだ。

完全にダラス側の敗北であった。

「貴方の娘、リュカは死にました。私はリュカじゃない。話は以上です」

「ま、待て!リュカ!」

魔法を解き、これ以上話すことはない、と背を向けて家を出れば動けるようになったダラスがシュンの右手を掴もうと手を伸ばした。

「ぐはっ!!?」

刹那、ダラスが衝撃と共に飛んだ。

「おっさん、諦めろ。言ったろ?こいつは俺の妹だ。手ェ出すなら昨日の様に手加減しないぞ」

シュンと繋いでいない左手がパキリと鳴った。

身体能力を上げる魔法で、力を強くしたらしく、ダラスは昨日より派手に飛んだ。

「言っていなかったが俺は魔法が使える」

レイルがそう言うとダラスの服の一部がスパパパッと、刃物で切ったかの様に何箇所も綺麗に切り落とされた。

「次は腕が斬り落とされるかもな?」

シュンにその腕を伸ばせば切り落とす、と確かな脅迫にダラスだけでなく、周囲も恐怖で黙りこくってしまった。

その場を離れてももう誰も何も言わず、追ってくる者もいなかった。


「この町にはもう来ることないねー」

「当たり前だ」

町を出て人目の付かないところまで歩く三人。

シュンを挟み、仲のいい兄弟の様に手をつないでいる。

「二人ともありがとね」

「別に」

「今更お前が居なくなると生活が大変になっちまうからな」

「ふはははっそうやって私を捨てられない様に謀ってるんだよ」

シンとレイルはハッとした。

まさかそうやって自分たちから必要とされる為に無理してやってきたのか!?と。

「…」

「…」

「…え?何で黙るの?冗談だよ?そこは“捨てねぇよ”って言ってよ?あれ?これ捨てられるフラグ?」

「お前の冗談、分かりづれぇよ」

「…はぁー…」

一度父親に捨てられたのだ、トラウマになっていてもおかしくはない。

そんな素振り一度も見せたことは無いが、心の奥底までは分からないのだ。

「…捨てねぇよ。絶対に。嫁に行くまでちゃんと見てやる」

「嫁にいけたらな」

「今いいところだったのに。シン、一言余計」

優しくてイケメンを捕まえるんだもん!と夢で会ったリュカに対抗して嬉々として理想を思い描くシュンだが、何処と無くシンの表情は暗い。

(いつか人のモノになるのか)

幼い妹がいつかこの手を離して行ってしまうのだと思うと、無意識に握る手に力が入った。

その日までこの手を引くのは自分の役目であれば良い、とそう願った。




「成る程、あのシンという者はアルファード国の王子を殺したお尋ね者か。少女の方は元は奴隷だったか…」

ここはロザリール国の貴族の屋敷。

数ヶ月前シュンにより海に突き落とされた老紳士、フレイザー・アーリッシュの邸宅である。

彼は国王暗殺未遂を犯したレイルと共に居たシン、シュンの両名を調べていた。

思いの外苦戦する情報収集であったが、知れればどうということのないものであった。

しかし、フレイザーは腑に落ちない。

奴隷を経験したにも拘わらず、透き通った純粋な瞳をしたシュンと、人を殺した者にはない無垢な心を持つシン。

果たしてそれは真実なのだろうか、と。

「気になりますね…」

「更に追ってみます」

「そうしてもらおう。特にあの、シンと言う少年の出自が気になる」

「御意」

立ち会ったのはほんの僅かな時間だが、お尋ね者にしては洗練された立ち振る舞い。

孤児などではなくあれは相応の身分のある者の振る舞いであると、長年の経験が告げていた。

「…その二人を匿う元王宮魔導師…彼にも何かあるのかな?」

何かを感じ取ったフレイザーはレイルの罪状についても調べるように配下に言いつけ下がらせる。

一人になった老紳士はふと小さく笑った。

「鬼が出るか蛇が出るか…。再会を楽しみにしているよ…シュン…」

浮かべる表情は好々爺だが、その腹の中は誰にも分からない…。






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