STEP:0 ゲーム廃人のクズ高校生が異世界に行くようです。
下らない。実に下らないな。笑えてくるぜ。
「はあ、提出物も何も出さずテストの点も一桁・・・。もう注意や怒ってどうにかなるレベルじゃないよねこれは。一体、何があったんだい?」
「すみませんでしたぁぁぁぁぁ」
俺は直ぐに謝った。自分が悪いという自覚しかないからな。
「いや、もう謝られても困るね、これは流石に。私とて君を進級させたいから色々と手は尽くしてあげていたのに流石にこれはもうどうにもならないよ。」
そう、今は高校二年三学期の終業式後だ。俺は成績を返されて、10段階評価でオール1という素晴らしい成果を残していたのだ。
俺は、運動神経はよかった。別に運動が好きというわけではないが。
だが、この高校には体育がない。俺が適当に高校を決めてしまったせいで体育のないところを選んでしまっていたのだ。
「そ、そこをどうにかおねがいしますーー。留年なんて、したくありません。」
俺はその場で土下座をして、必死に悲願した。年下のやつらとなんて一緒に授業を受けていられるか。
「悪いのは君だ。そしてこの成績ではもう君は120%進級できない。さあ、どうする? もう一回二年生をやり直すか、学校をやめるか。」
まあ、そりゃそうなるよな、いくらなんでもこの成績は酷すぎる。勿論、自覚はありますよ。
「先生、聞いてくれ。俺が今年こんな酷い成績を取ったのには原因があるんだ。」
「ほう、なんの参考にもならないとは思うが・・・どうぞ。」
俺は、ニッとつい笑みをこぼしてしまった。そして、
「ゲーム中毒という、不治の病になってしまったのだ」
と、言い放った。
「じゃあ、そういうことだから一応君は留年するという形で名前を残しておくけど、退学したくなったら言いにきなさい。」
って、スルーですかああああ。
教師は、俺の華麗な病宣告を華麗にスルーした。
そして、学校からの帰り道。
はあ。俺、弥生来夏は留年か退学かどちらかを選ばなくってしまいました。はい。
「って、どっちも嫌に決まってんだろぉぉぉぉぉ」
だが、こればかりは本当に俺が悪い。高校一年の頃は、割とテスト前はちゃんと勉強して提出物も出していたので平均より上の成績だった。
そして、高校二年になり俺はとあるゲームと出会ってしまった。King ArthurというpcのMMORPGだ。
このゲームは、自分で勢力を作るか、どこかの勢力に属すかを選び遊ぶものだ。
俺は、好奇心もあり自分で勢力を作った。だが、ぼっち状態から始めたためしばらくは俺一人だけの勢力となっていた。
勢力には領土があるのだが、その広い世界もいろいろな勢力が存在しているため領土不足となっていたのだ。
勿論、俺の勢力の領土などない。
だが、俺はめげずにそのゲームをやりこんだ。
このゲームは、自分でアイテムを使ってNPCを作り出すことが可能だ。
それを駆使して、俺の勢力は三ヶ月程度で40人(39人ノンプレイキャラクター)になった。
そして、領土を手に入れるべく色々と戦争をふっかけていったのだ。
俺がこのゲームを始めてから、10ヶ月ほどで世界の10の大大陸のうち一つを俺の勢力のものにしたのだ。
この頃には、もう完全なゲーム廃人と化していた。
学校は、一ヶ月の4分の1程度しか行かなくなり、ゲームは一日平均20時間くらいはやっていたと思う。
もう学校なんて留年してまで行きたくないし、退学するしかないかな。
俺の心の中の9割はそう考えていた。
そして、家に帰宅した。
「ただいま~」
「おかえり、来夏」
ニッコリとほほえむ、俺の母。
天使みたいなほほえみだ、今日は何かいいことでもあったのかな。
そう都合よく解釈することにした。
俺の母はほほえみながら、
「さあ、あなたの成績を私に見せてごらん」
訂正。
急に悪魔のようなほほえみに見えてきた。
うーん。これは非常に不味い自体だな。
俺の母は俺がゲームに没頭してろくに学校に行っていない事を知らない。母は休みが少なく、休みの日以外は朝早くに家を出て夜遅くに帰ってくるためだ。学校に登録してある電話番号も母は携帯がすぐに取り出せないだめ、家の電話になっている。
「え?成績なんて貰ってないよ」
俺は平然と何食わぬ顔で嘘をついた。
「あれれ、可笑しいな~~今日は、終業式のはずなんだけどな~~」
「あれ?そうだったけ?終業式なんてあったっけ、忘れちゃったな~~」
俺の母は、ほほえむのをやめ睨むような顔に豹変して、
「いいから、見せろ。」
「はい、わかりました。」
俺は、オール1の成績表を恐る恐る母に見せた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
しばらく間をおいたあとの「は?」という一言。恐らく状況が把握できていないのであろう。
ま、俺も子供ができてその子供がオール1なんていう成績表を見せてきたらそうなるだろうけどな!
「え?ちょっと・・・え?まって、ごめん、何書いてあるか分からないわ、この紙」
「だ、だよね~~ちょっと、俺具合悪いからもう寝るね。おやs...」
ダッシュで自分の部屋へ向かおうとした時、首裏をつかまれた。
「まてや、こらぁぁぁぁぁぁ」
俺の母の顔は、もう鬼と豹変していた。
「ぎゃああああああああああ」
もう、悲鳴を上げるしかないよね、うん。
時は、真夜中。俺は母にこってりとしぼられてきた。
そして、ついさっき俺のpcは粉々になった。
俺はベッドにダイブした。
もう、何もかも嫌だ。俺は取り返しのつかないことをしてしまったと改めて実感した。
「いっそ、King Arthurの世界が現実でこっちの世界が偽者になってくれたらいいのにな。」
そう、叶いもしない現実逃避のようなことを呟いて目をつぶり眠りについた。
「・・・きよ。」
何だ?何かうっすらと俺の耳に声が聞こえる。
「・・起きよ。」
そうハッキリと耳に聞こえたので、俺は目を開けた。
そしたら、そこには一人の少女が立っていた。
「ぎゃa」
とっさに叫ぼうとしたが、不思議と声がでない。とても気持ち悪い感覚だった。
「やっと、起きたか。」
おかしいな、俺は霊感がないはずなのに。なぜこんなにハッキリと見えて声までハッキリと聞こえてくるのだろう。
そして、10分ほど経過した。
流石に俺も落ち着きを取り戻した。
「お前は、誰だ?」
不思議と今度はちゃんと声がでるようになっていた。
「ふむ、やっと落ち着いたか。我の名はゼウス。エストピアの神である。」
エストピアというのは、King Arthurの世界の名前だ。
「な・・・エストピアだと・・・。King Arthurの世界の名前と一緒じゃないか。」
「うむ、その通りじゃ。我はあの世界の創造主だ。」
何わけのわからないことを言っているんだ、この少女は。
「えと、King Arthurをお前が作ったってことか?」
「いや、それは少し違うが・・・。まあそういうことにしておくとしよう。」
そういうと、少女は急にニヤッとして、
「のう、少年。単刀直入に聞くぞ。お主は生きる世界を間違えたとは思ったことはないかの?」
生きる世界を間違えただって・・・?はっ、笑わせるな。
そんなのなぁ、
「常に思ってるわーーーー」
俺は声を上げて叫ぶように言い放った。
「ふふ、そうであろう。我はそうだと思っておったぞ。では、少年よ、お主エストピアに来い」
え?どういうこと?ちょっと何を言っているか理解できない。
お子様の戯言だろうか。
「いけるものならいきたいね。だが、俺の手元にはもうpcはない・・・」
「よし、いきたいと言ったな。では今すぐ連れて行ってやる。少し眠れ」
ちょ、いきなり何・・・と言う暇も無く急に視界が真っ暗になり、意識が遠くなっていくのを感じだ。