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1.赤ずきんちゃん

いつの時代も、数多くの物語が語られ受け継がれていた…。

誰かが言った…「物語は生き物であり、絶えずその姿を変えようとしているのだ」と。

だからこそ、物語が勝手にを変わらないために管理者が必要だ。

彼らの事を人々はこう呼ぶ…物語の管理をしているストーリー・ガーディアン(SG)と…

(「ここは・・・どこだ・・・」)

オレはただ一人立っていた。周りには何も無く、ただ漆黒の闇が広がる世界・・・光が無いにもかかわらず、自分の姿がハッキリと見えるから、おそらくこれは夢なんだろう・・・

オレは歩く事にした、しかし、行けども行けども全く景色が変わらないので自分が本当に歩いているのか不安になる。しばらくすると、ふと後ろの方から変な叫び声が聞こえた。後ろを見ると暗闇の中に光る赤い目が見えた。

(「なんだ、あれ・・・」)

目はこちらに気づき、大口を開けて叫びながら近づいてくる・・・怖くなったオレは急いで逃げる事にしたが距離が徐々に縮まって来た。あわや呑み込まれそうになった所で、夢は終わった。

「・・・ラタ・・・アラタ!」

「?ん」

オレは頭を起こし、人目を避けて寝ていた棚の上から声のする方へ顔を出した。

声の主は、幼馴染であり、相棒のシオリだった。

シオリは長い黒髪を後ろで縛り、腰に手を当て起こっていた。

「また、こんな所で寝て」

「シオリ・・・おはよう」

「‘’おはよう‘’じゃないわよ、まったく。訓練をサボって、司令官、怒ってたよ」

「やべっ、忘れてた」

オレは急いで棚と天井の間の昼寝スペースから急いで飛び下り、部屋から出た。

ここは図書回廊、ストーリー・ガーディアンズの本拠地である。SGであるオレらの任務は世界各地にある物語の管理・保護である。

見習いとして配属されたボクたち新人は、今は最終訓練の段階で、試験に合格すると本格的にSGとして任務に当る事となっている。

「なんで、あんな所で寝てたのよ」

「ん~オレさ、座学より実際に身体を動かす方が性に合うんだよね」

「もぉ~、そんな事だとSG試験落ちるよ。まったく昔からアラタは・・・」

怒るシオリの台詞を打ち消すかのように突然、警報が鳴り響いた・・・

「な、なんなの、この警報・・・」

「分からない、これも訓練の一種なのか」

オレ達が困惑していると、放送が入った

‘’至急、SG候補生たちは司令官室へ集合せよ、繰り返す、至急、SG候補生たちは司令官室へ集合せよ‘’

「「!」」

「行くぞ、シオリ」

「あっ、待ってよアラタ」

急ぎオレ達は司令官室へと向かった。部屋に入ると既に他の候補生たちが並んでおり、オレ達も横に並ぶと横のドアから強面で大柄な髭の男性が入って来た。

彼がSGの司令官であり、教官でもある-レーガン司令官である。司令がオレ達の前に立つと候補生の一人が合図をした。

「気を付け!敬礼!」

候補生たちは自分の右ひじを曲げ、腕を胸の前に出した。司令は合図をし、代表者は再び合図をした。

「直れ」

「皆、よく集まってくれた。非常事態だ。突然、管理している本たちが真っ白となり、それに伴い、人間世界でも本の中身が消えるという異常が起こった。原因は不明。今、SG総動員で解決に当っているが、人手が足りない。そこで、最終訓練に入ったお前達にも任務に入って貰う」

候補生たちにざわめきが起こった。

「静かに、君達はこれからSGとして二人一組となり、それぞれ物語の中に入って原因解明をしてくれ。以上だ。質問は?」

「「「ありません!!」」」

「よし、それではガーディアンズ、出動!!」

「「「ロジャー」」」

オレ達は指令室を退室すると急いで物語の中にダイブする準備をした。

物語にダイブするにあたり、支給される備品をチェックした。

支給されているのはスーツ・ブーツ・ブレスである。

スーツはどんな環境の物語の中でも一定の温度を保ち、身体能力を高めてくれたり、銃弾などからも身を守ってくれる優れものである。

ブーツは跳躍力などサポートをしてくれる。

出撃準備を終え、廊下に出ると既にシオリが待っていた。

「お待たせ、行くか」

「うん」

ダイブルームへと行くと一人の白衣の女性が出迎えた

「やぁ、お前ら待っていたぞ」

「アカリさん」

彼女の名前はアカリさん。オレ達がダイブするのをサポートしてくれる研究者の一人である。

「ほら、今回お前らがダイブする本はこれだ、受け取れ」

アカリさんは細長いプラスティックケースを投げた。

上手くキャッチし、中身を見ると紅い鍵が入っていた。

「どんな物語ですか?」

「それはダイブしてからのお楽しみだ、早くしろ。お前達が候補生では最後なんだ」

「えっ、そうなんですか」

「ああ、他の奴らは既にダイブし、調査に当っている、さぁ、早く!」

オレ達はせかされるまま、ダイブルームの奥の部屋へと進んだ

部屋の中には、木製の扉が一枚あるだけの部屋だが、ここから物語へとダイブする。

オレ達が緊張していると

‘’「気を付けろよ、何か様子がおかしいから。無理だと思ったら緊急脱出するんだぞ」‘’

扉の横のガラス窓からアカリさんがマイクを通じて言ってくれた。

「「ロジャー」」

「行こう、シオリ」

「うん、アラタ」

扉の前へと進むとケースから紅い鍵を取り出し、それをカギ穴へと刺し込んだ。

‘’ガチャッ‘’

鍵が開くのを確認し、扉を押し開くと中は光眩しく先が見えなかったが、オレ達はそのまま、進み光の中へと入った。

光の抜けるとそこは森の中だった。

「・・・ここは」

「今確認するね」

シオリはブレスを確認した。

「どうやら、ここは‘’Red Riding Hood‘’の世界・・・。日本語だと‘’赤ずきんちゃん‘’よ」

「赤ずきん・・・って、狼に食べられる話だよな」

「アラタ、簡略化し過ぎ・・・赤ずきんちゃんはグリム童話が有名だけど、それよりも100以上前のペロー童話集にも出てくる作品よ」

シオリはオレにグリム童話での赤ずきんちゃんの物語の説明を始めた。

むかし、むかしある所に小さな女の子が折りました。その女の子はおばあさんがこしらえてくれた赤いずきんがよく似合い、いつも被っていたので‘’赤ずきんちゃん‘’と呼ばれるようになった。ある日、赤ずきんちゃんは病気のおばあさんの為に森の中の家までお菓子と葡萄酒を持って行くようにお母さんに頼まれました。お母さんに「寄り道しない様に」言われた赤ずきんちゃんは「ちゃんとするわ」と指きりをして出発しました。

赤ずきんちゃんが森に入りかけると一匹の狼が「どこへいくの?」と声を掛けてきました。「おばあちゃんの家よ」と答えると、狼は心の中で「この子はおいしそうだ・・・ばあさんと両方一緒に頂こう」と考え、狼は赤ずきんちゃんに言いました。「この先にきれいな花がいっぱい咲いているよ」。赤ずきんちゃんはおばあさんに花束をこしらえて行ってあげようと思いつき、寄り道をしてしまいます。その間に狼はおばあさんの家へ行き、家に入るとあんぐりとおばあさんを飲み込みました。そして、お婆さんの服を身につけてベッドに寝てカーテンを引いておきました。赤ずきんちゃんは花を集めるだけ集めて、もちきれないほどになってからおばあさんの家に行きました。戸があいたままになっているので変に思いながら中へ入り、おばあさんの近くに行きました。ベッドに横になっていたおばあさんはずきんをすっぽりと目まで下げ、なんだかいつもと様子が違いました。「あら、おばあさん、なんて大きな耳なの?」赤ずきんちゃんは聞きました。「お前の声がよく聞こえるようにさ」おばあさんが答えます。

「あら、おばあさんなんて大きなお目なの」「お前がよく見えるようにさ」

「あらおばあさんなんて大きなお手て」「お前をよく掴めるようにさ」

「なんて気味の悪い大きな口だこと」「・・・お前を食べるためさ」

狼はベッドから飛び出すと一口で赤ずきんちゃんを飲み込みました。

その後、お腹を膨らませ寝息を立てる狼を猟師が見つけ、狼のお腹を挟みで切り始め、赤ずきんちゃんとおばあさんを助け出しました。赤ずきんちゃんは代わりに大きな石を狼のお腹に詰め込みました。目を覚ました狼は跳び出そうとするが石の重みでへたばってしまいます。そして、猟師は狼の毛皮を剥ぎ、おばあさんは赤ずきんちゃんの持って来たお菓子と葡萄酒で元気を取り戻しました。でも、赤ずきんちゃんはもう二度と寄り道をしない様にと心に決めました。


「・・・という話なの、わかった、アラタ?」

「ああ、で、ペロー版はどんな話?」

「ペローの方では食べられて終わりなの・・・その代わりに教訓が載っているんだけどね」

「そうなんだ」

すると、遠くの方から助ける求める声がした。

「誰か・・・誰か、助けて」

オレ達は声の方を向くと遠くから一人の少女が走って来た。その頭に赤い頭巾を被って

「なぁ、シオリ、あれって・・・」

「赤ずきんちゃんね」

「だよな」

赤ずきんを被った少女がオレに抱きついて来た。

「大丈夫?」

「お願い・・・助けください・・・」

少女は息を切らせながら助けを求めて来た。

「一体どうしたの?」

「森を歩いていたら・・・突然、変な男が・・・」

赤ずきんちゃんが指差す方向を向こうとした時、辺りに銃声の音が響いた・・・

オレは後ろにあった木を見ると銃痕が残っており、再び前を向くと人影が白い煙を上げながら銃を構えていた。その人影は恰好からして猟師に見えたが、唯一つ違ったのは、顔の部分が黒い靄で覆われていた事だった。

「シオリ・・・あれって」

「猟師さんね、恰好からして」

猟師は再び銃を撃とうと準備をし、構えた。

それと同時にオレ達は赤ずきんちゃんの手を握り、走り出した

「逃げろ!!」

猟師が何発も銃を撃って来る。

「な、なんで猟師に追われてるんだよ」

「分からない、でも確実に私たちを狙ってる・・・」

オレ達は森の奥へと逃げ進んだ、しかし、しばらく走ると奥は高い岩に囲まれた部分に出た。

「やばっ・・・逃げ場、ないじゃんか、どうしよう」

オレが困っていると岩の上から声がした

「こっちだ、お前ら」

岩の上を見ると二足歩行の狼が手を伸ばしていた。

「狼さん・・・」

赤ずきんちゃんが安心したように言った。

「お譲ちゃん、早く、じゃないと、奴が直ぐそこまで来ている」

狼の言う通り、徐々に猟師が近づいて来た。

「アラタ・・・ここは狼さんの言うとおりに」

「ああ、赤ずきんちゃんから早く」

「はい」

オレは急いで赤ずきんちゃんを持ち上げた。

持ち上げられた赤ずきんちゃんはそのまま狼の手を掴んだ。狼は力を込め赤ずきんちゃんを引き上げた。それを確認してからオレ達も岩を登った。

なんとか、猟師を撒くことに成功したオレ達は狼の案内に従った。

「どうやら撒いたみたいだな・・・大丈夫かお譲ちゃん」

「うん、ありがとう狼さん」

「お前らも大丈夫か?」

狼がオレ達にも声を掛けた。

「はい、なんとか」

「一体なんなんだよ、あれ・・・」

「猟師だ・・・」

狼は答えた。

「どうしてあなた、追われていたの?」

シオリが赤ずきんちゃんに聞いた

「わ、わかりません・・・私・・・狼さんに案内された花畑で花を摘んでいたんです・・・そうしたら急に襲われて・・・」

「オレはバアさん家に向かう途中で襲われたんだ。いつものアイツじゃなかった」

「で、でもここまでくれば安心ですよね、狼さん・・・」

「お譲ちゃん・・・それは何とも言えない、あいつはオレ達を殺そうとしているんだ・・・」

「?どうして分かるんですか・・・。!もしかして私のおばあちゃん・・・、狼さん、おばあちゃんは無事ですよね」

「・・・」

狼は何も答えない・・・沈黙は肯定だ。赤ずきんちゃんはその場で泣き崩れてしまった。

「水を持って来る、少年。手伝ってくれ」

赤ずきんちゃんをシオリに任せて、狼に頼まれオレは一緒に水を汲みに行った。

その途中で、狼は言った。

「お前らSGだろ」

「!どうしてそれを」

SGの事は物語の登場人物には秘密である。

「オレさ、この物語では結構古い方なんだよ、死ぬとまた新しい人格で生まれ変わるのを見た事があるんだ」

確かに狼の言うとおりだ、物語は絶えず繰り返され、受け継がれる。もちろん、物語の登場人物たちが生きているように手違いで登場人物が死ぬこともある。死ぬと記憶がリセットされ再び復活リポックする。そしてその手違いを防ぐためにSGが管理調整を行う。

「お譲ちゃんは、リポックされたばかりで、こればアイツにとって最初の物語なんだ」

狼は少し悲しそうな顔をした。

「狼・・・猟師はどうしてあんな風になったんだ?」

「分からない、突然、黒い靄があいつを襲ったんだ。そして顔を靄で纏うと登場人物を襲いだした」

「なるほど、その黒い靄が事件の鍵だな」

「そう言えば、黒い靄が猟師から離れるのを見たぞ」

「どういうこと」

「オレ、あいつを後をつけたんだ、一度、滑って転んで気を失ったんだ。そしたら黒い靄から大福みたいな見たことも無い生物が現れて、黒い靄が消えたんだ。で、その生物がアイツに乗っかると再び黒い靄が出たんだ」

「靄を引き剥がせれば猟師を助けられるんだな、ありがとう狼」

「ふん、なんでもいいから早く解決してくれ・・・おっ、ここが湖だ」

オレ達は水を汲むとシオリ達の元へと戻った。


「シオリ」

赤ずきんちゃんはシオリの膝を枕にして寝ていた。

「アラタ・・・」

「赤ずきんちゃんはどうだ」

「うん・・・泣き疲れたみたい」

その時、腕のブレスが振動を出しながら鳴りだした。

「はい、こちらアラタ」

‘’「…ラタ…こ…た、アカネ…」‘’

雑音が酷かったが、名前だけは聴こえた。

「アカネさん」

「…ラタ…える…。黒い…ヤが…因み…なの」

「えっ、よく聞こえません、アカネさん」

どうやら、こちらの通信は届いていないみたいだ

「黒…モヤ…を…掃…くれ!」

そこで通信が切れた。

「アラタ…黒モヤを何かしてって言ってたね、アカネさん」

「うん、黒モヤってあれだよな、猟師の顔を覆っていた」

「でも、どうやって掃うの?私達にあるのはこのスーツとブレスだけだよ」

「確か、ブレスに色々な機能があったハズ…」

オレはダイヤルを回し、ブレスの機能を調べた

「えっと…通信機能に、道具の転送機能…脱出機能…あっ、これショックガン機能がある」

「でも、確かショックガンの強さって牛一頭分を倒す位しかないよね」

「そうか…使えないか…気を失わせられれば、靄が剥がれるのは分かっているのに…」

「アラタ、ならこういう作戦はどうかしら。狼さんも力を貸して」

「どんな?」

オレ達はシオリの作戦を聞いた。聞き終えると狼は同意した。

「…分かった。オレはそれでいい」

「いいのか?」

「ああ、オレも早く物語の続きをしたいからな」

「それじゃ、始めますか」

作戦はこうだ…。スピードのある狼を囮にし、猟師を誘い込み、そこで気を失わせる作戦だ。

赤ずきんちゃんは念のため、ここに隠れていてもらうことにした。

オレ達は先程、狼に助けてもらった岩場で隠れて待機していた。

しばらくすると、遠くから足音と銃声が聞こえて来た。

「行くよ、シオリ」

「うん」

オレ達は準備をした。岩場から顔をのぞかせると狼が猟師と向き合っていた。

狼は領主が撃つ銃弾を避けた。そして銃弾が全部無くなったのを確認すると狼はオレ達に合図した。

「今だ!!」

オレ達は事前に用意していた切り倒した木や岩をスーツの力を借りて、軽々と持ち上げると勢い良く、猟師へと投げつけた。

岩や木に猟師が押しつぶされた。

「お前ら、もう止めろ!オレまで危ねぇよ!」

狼が声を荒げた。

「や、やり過ぎた」

急いで、下へ降りると岩や木を退かした。

「よ、良かった、猟師、生きてるみたい…」

「うん」

猟師が気を失って倒れおり、その顔は靄が無くなっていた。その代わりに、近くには黒い生物が同じ様に倒れていた。

そいつはこぶし大の大きさでスライムみたいに球体状の形をしており、全身真っ黒だった。

「なんだ、この生物…」

オレは黒スライムをつまみ上げた。シオリも近づいた。

「こんな生物、どの物語でも見た事が無い」

「あっ、目を覚ましたぞ」

オレは摘んだまま、ツンツンしようともう片方の指を近づけた。その時、黒スライムはオレの指に噛みついて来た。

「痛ってぇ~!!!」

オレは突然の事に黒スライムをどこかに投げてしまった。

「ちょっと、アラタ。あのスライムは」

「しまった。え~っと」

辺りを探した。すると黒スライムは何と狼の頭の上に乗っていた。すると狼が苦しみ出した。

そして、二足歩行だったのが四足歩行になるとメキメキと音を立てながら体格が倍以上に大きくなった。

「な、なにこれ…」

オレ達は絶句してしまった。

「ア、アラタ、どうするのよ」

すると、狼は静かに言った。

「ほぉ~、これは…なかなか良い物を手に入れた…」

しかし聞こえてくる声は先程の狼とは別の声だった。

「狼さん…」

「お前ら、よくもやってくれたな、この礼は倍にして返させてもらうぞ」

狼は勢い良く吠えると物凄いスピードで襲いかかって来た。

間一髪の所で横に避けると狼はそのまま、木をなぎ倒した。

オレは傍にあった倒木を掴むと狼の頭めがけ跳び、振りかざした。

しかし、狼はそれよりも早いスピードで身体を反転させ尻尾をオレにぶつけ、吹き飛ばした。

「うっ…」

「アラタ」

シオリが近づいて確認した

「大丈夫」

「ああ…スーツのおかげでなんとか、だけど、凄い衝撃…」

またしても狼は襲いかかって来た。シオリはオレの前に立つと狼目掛けてショックガンを撃った。

「かゆいな…かゆいぞ、娘」

ショックガンがまったく効いていない様子だった。

「どうしよう、アラタ」

「なんとかして、狼を助け出さないと」

「でも、アイツのスピードじゃ、物を投げても避けられるし…」

オレの中に何かが閃いた。

「そうだ…シオリ、良い作戦がある、手伝ってくれ」

「どんな」

オレはシオリに耳打ちをした

「分かった」

オレは立ち上がると狼に言った

「お前の攻撃こそ、痒すぎるぜ、毛むくじゃら」

「なに…」

「そんなんじゃ、オレは倒せないぞ」

「っふ…面白い、ならば、貴様からかみ殺してくれよう…」

狼は吠えると同時に襲いかかって来た。オレは避けると一人森の奥へと全力疾走をした。

狼はオレを追いかけてくる。

森を抜けると先程の来た湖へと出た。そこで、オレはそのまま、湖に向かって走り、ギリギリの所で高く飛び越えた。すると、狼もオレの後を追って跳んだ。

「今だ、シオリ」

オレの合図と共に別行動をしていたシオリが空中に居る狼に向かって岩を投げつけた。

空中では身動きが取れない狼に岩がクリーンヒットし、狼はそのまま、湖へと落ちた。

そして、オレは空中、シオリは地上から湖の中に居る狼に向かってショックガンをありったけ撃ちこんだ。

水は電気を通し、ショックガンの威力が倍となっており、さすがの狼も苦しんだ

「ぐ、ぐぁ~…」

狼はそのまま、水に沈んだ

オレは対岸に着地し、シオリと合流した。湖の中からゆっくりフラフラと狼が出てくるのが見えたが、狼はそこで、倒れ込んだ。

すると、狼から何か透明な物体が落ちると狼は大きかったその身体が見る見るうちに小さくなり、元の大きさへと戻った。

オレ達は急ぎ、狼の元へと向かった。

狼は木を失っているだけで、横には透明なクリスタルが落ちていた

「アラタ、それは?」

「なんだろうこれ?」

オレはクリスタルを拾い上げ、かざしてみた。すると、中には先程の黒スライムが小さく入っていた。

「これって、さっきの黒スライム…」

「どういうことだろう…」

「分からない…だけど、こいつが何か握っているのは確かだよ。取り敢えず本部に持って行こう」

「うん」

遠くからオレ達を呼ぶ声が聞こえた。

「皆~」

「赤ずきんちゃん」

「凄い落としたけど…大丈夫。って、狼さん!」

赤ずきんちゃんは狼を揺すった。

「…お譲ちゃん」

狼は目を覚ました

「良かった」

「オレは一体…。そうだ、あの黒スライムに操られていたんだ」

「記憶があるんだ」

「うっすらだけどな、なんか暗い淋しい気持ちになっていたのは覚えている」

「そうか」

オレ達はその後、猟師の元へと向かった。猟師にもケガは無かった。

「取り敢えず、これで物語が始められるね」

「ああ、ありがとうな。お前達…」

「でも、おばあちゃんが…」

赤ずきんが泣きそうな表情になったが狼が言った

「大丈夫、すぐにおばあちゃんは戻って来るよ」

「本当!?」

「ほら見てごらん」

狼が指差す方向に猟師に手を引かれ、おばあちゃんが歩いて来た

「赤ずきん…」

「おばあちゃん!!」

赤ずきんちゃんはおばあちゃんに駆け寄った。

その光景を見てから狼は再びオレ達の方を向いた。

「ありがとうな、お前ら助かった。これで物語が再開できるよ」

「でも、赤ずきんちゃん…大丈夫かな」

「大丈夫だよ、基本物語が終了すると記憶がリセットされるから」

「ん?じゃ、なんでお前は記憶があるんだよ」

「オレは日記を付けるのが趣味でな、ある日のオレが書き残していたんだよ、SGの事、この世界の事…」

「そうなんだ…」

「ほら、早く戻れ、じゃないと物語が‘’めでたし、めでたし‘’で完結できないから」

「分かった。戻ろう、シオリ」

「うん、アラタ」

オレ達はブレスダイヤルを脱出機能に合わせ撃った。ブレスから出た光は何もない空間に光跡を残しながら扉を描いていった。これが図書回廊へと戻る光扉である。

オレ達は皆に別れを告げると光の扉を押し開き、光の中へと消えて行った。

光を抜けるとそこはダイブルームだった。

「お帰り、二人共」

「ただいま、戻りました」

「どうやら、無事、赤ずきんの物語が白紙から戻ったようだ」

アカネさんは持っていた本を見せてくれた。確かにそこには文字と絵が描かれており、皆が知っている赤ずきんちゃんの本だった。

「良かった…」

「ところで、二人共、物語の中で黒い靄を手に入れなかったか」

「あっ、これです」

オレは狼を倒した時に落ちていたクリスタルをアカネさんに手渡した。

「やはり…」

「アカネさん、これは一体」

「どうやらこれが、原因らしい…詳しい事はこれからだが、司令がお呼びだ」

「「ロジャー」」

オレ達はダイブルームを後にし、レーガン指令の元へと向かった

「よく、戻ってきたな、アラタ、シオリ」

「「はい」」

「お前たちも気づいていると思うが、どうやら、今回の一件、黒い靄が関与していることが様々な物語への調査で分かった。黒い靄が何なのかはまだ不明だ、そして、この黒いスライムが入ったクリスタルを帰った候補生はお前たちだけだった。よくやった」

「ありがとうございます」

「だが、まだ白紙の物語が多く存在する。引き続き、調査を続けてくれ。以上だ」

「「ロジャー」」

オレ達は指令室を後にした。

「アラタ…」

「うん?どうした?」

「あの黒い靄…私怖い…」

「大丈夫、今必死で皆、調べてるから、きっと何か分かるよ。それにお前はオレが守るよ」

「本当」

「ああ、オレ達は相棒だろ」

「…そうね…相棒ね…」

そう言うとシオリは先に行ってしまった。

あの黒い靄やスライムの正体はまだつかめていない、だけど、物語を紡ぎ守るのがオレ達ストーリーガーディアンズの使命だ。

これからもオレ達は様々な事件に巻き込まれてしまうが、それはまた、別の機会に語ろう…


それでは次の物語へ、Let’s Go ダイブ!!

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