4話 ステータス
父さんの黒い笑顔のオプション付きで無慈悲な連行を受けた俺は、神殿に着いていた。
一応言っておくが、俺は無実(ry 。
周りを見渡すと、神々を祀る柱と蝋燭が神秘的な雰囲気を醸し出している。
「ルシウス様おめでとうございます。無事に洗礼の儀を終える事ができました。」
自然に対応する神父から本当に天界での時間を止めてくれていたのだと実感する。
それにしても時を止める力なんてなんて反則もいいところだと思う。
俺もいつかは使えるようになってみたいものだ。
神父に丁寧にお礼を述べ、待ってくれているエイナ姉さんとリューク兄さんの方へと足を運ばせる。
程なくすると無事に合流を果たしたので、その足でそのまま馬車へ向かう。
馬車に乗ると我慢できなかったのか、エイナ姉さんが命令口調で言ってくる。
「ルシウス早くステータスを見せなさい。」
どうやら魔王様は、まだ健在ならしい。
俺の希望の勇者は、一体どこにいるのやら、そんな事を思いながらも渋々とステータス魔法を使う。
絶対服従の忠誠は、なかなか解消できないものだ。
「ステータス」
そう唱えると、目の前に半透明な板が現れた。
【名前】 ルシウス・デ・ニルフィール
【種族】 神族 【年齢】 10 【性別】 男性
【称号】 神の子 寵愛を受けし者 男爵家次男
【ランク】2
【体力】 F ( C )
【魔力】 F ( B )
【敏捷】 F ( C )
【攻撃力】 F ( C )
【防御力】 F ( C )
【対魔力】 F ( B )
【スキル】
アイテムボックス Lv.3
幸運 Lv.2
礼儀作法 Lv.1
算術 Lv.1
【魔法系スキル】
ステータス魔法
生活魔法
【ユニークスキル】
神眼 Lv.2
神智 Lv.2
時空魔法 Lv.2
【加護】
全智神の寵愛
魔法神の加護
商売神の加護
時空神の加護
幸運神の加護
英雄神の残り火
成る程、基準がないから自分のステータスがどれ程な物かさっぱり分からない。
取り敢えず反応を求めてエイナ姉さんとリューク兄さんの方を見てみると二人して頭を抱えていた。
もしかしてイマイチ微妙なステータスなのだろうか。
急に不安と焦りが襲ってくる。
「なんなのよこのステータス。」
俺は、エリナ姉さんの叫び声を聞いて絶望を感じるしかなかった。
やはり、自分のステータスは悪いものだったのだ。
こればかりは、仕方がないと思いながらも、憧れていた英雄への道が閉ざさて、どうしようもない程落ち込んでいくのが分かる。
もう立ち直れないかもしれない。
「こんなの反則だわ。チートもいいところよ。」
「ああ。多少なら目を許してやろうかと思っていたが、これは酷過ぎる。ルシウス。君は、才能という凶器を振り回すのがそんなに楽しいのかい? 」
続いてきた言葉が予想外ばかりか、自分の考えていた事とは真逆の事を言っている。
自分の枯れ細った心に恵みの雨が降り注いでいく。
若干リューク兄さんが非難の言葉を浴びせてきているが、そんな小さい事はどうでもいい。
「もしかして俺のステータスが良かったのか? 」
「良いも何も、まずランクが2になっている事。ユニークスキル持ちで加護の数が六個っておかしいわよ。」
「それに、神眼と神智、全智神の寵愛と英雄神の残り火は、おそらく歴史上でも初めての持ち主だと思うぞ。ついでに称号も意味わからん。」
ーーーー 散々とエリナ姉さんとリューク兄さんにステータスの説明に加え、何故だか気分が良くなる非難とブーイングをこれでもかというほど受けながらも分かった事を整理していく。
まずステータスの説明を中心に整理する。
体力などの基礎値は、一般的に戦う事を生業としている者の平均値がD、一人前がC、一流がB、ある程度の功績を持つ英雄がA、一国の頂点に立つ者がAA、大陸の頂点に立つ者がAAA、そしてSから神々の領域に入る事。
基礎値の隣にある( B )となっているのが期待値でそのランク帯での成長限界とされており、ランクアップするごとに値が上がっていく事。
スキル、魔法スキル、ユニークスキル、加護は、洗礼の儀を終えても新しく覚えたり、付与されていく可能性がある事。
次に非難とブーイングの元凶を整理する。
普通はランクが1である事。
ユニークスキル持ちは、滅多に現れず、いたとしても一つしか持たない事。
加護持ちは珍しくないものの、多くても精々が二、三個である事。
ユニークスキルの神眼と神智、そして全智神の寵愛と英雄神の残り火は、最早どういった効果があるか分からない事。
俺はこういった、内容をとても清々しい気分で聞いていた。
現時点では普通の者たちと大して変わらないものの、大器晩成型で潜在能力がかなり高いのは大変素晴らしい事だと思う。
そうこうしているうちに馬車が止まった。
どうやら家に着いたようだ。
馬車を降り、三人で我が家へと入った行くと、メイドや執事のと共に父さんと母さん、そして弟のネルルと妹のルルネが出迎えてくれていた。
うん。実に微笑ましい。
俺の弟と妹は、どうしてこんなにも可愛らしいのだろうか。
「ルシウス兄しゃまおかえりなしゃい。」
「ルシウスお兄ちゃんおかえり。」
「ネルルもルルネもただいま。」
そういってまだ恥ずかしいのか母さんの影に隠れているネルルの金髪の頭とその手を繋いでおるルルネの銀髪の頭を優しく撫でる。
二人して気持ち良さそうに反応してくれる。
これからは毎日撫でてあげれると思うと舞い上がりそうな気分になる。
先程から今日は、気分の良い事ばかりが続いている。
これも幸運がついたおかげかもしれない。
「なあルシウスどういう事なんだ? 」
戸惑っている二人に耳打ちで説明する。
勿論、長い金髪で白いドレスの可愛らしいネルルが弟で真っ黒な執事服身を纏った短い銀髪のルルネが妹だといういう事を忘れずに言う。
すると二人が「「ふぇ? 」」と魔の抜けた声を漏らし、徐々に驚いた顔を形成していく。
しかし、“きょとんとしている”ネルルとルルネの様子を見ていると徐々に驚いた顔から慈愛にあふれた満足気な表情へと変わっていく。
あの時の俺もこんな顔をしていたのか思いながらも、今なら心が読めるのではないかとちょっとした悪戯を思い付く。
「へぇ、よく分かったね。」
ビクっと一瞬大きく震えた二人は、口をぱくぱくと動かし何か言いたそうにしている。
さらなるチャンスが降ってきたと思い、すかさずに言う。
「ふふ。愛の力だよ。」
後ろで父さんと母さんが声を上げて笑い、ネルルとルルネが未だにきょとんとしていて、エリナ姉さんとリューク兄さんは今までに見たことが無い程情けない顔をしている。
こうして我が家に新しい暖かな日常が舞い降りてきた。
蛇足かもしれないが、エリナ姉さんとリューク兄さんが「愛とは一体なんなんだ。」そう呟いていた事は、おそらくこれからもずっと忘れないだろう。