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冒険者へ LV.1から始まるファンタジー  作者: 森林樹木
ランクF  An adventurer who does not hate(人嫌いな冒険者)
5/32

5   LEVEL1-5

「あんたの名前、エルナっていうんだな」


 エルナからカードをヒョイッとコソ泥のように盗むと、ウォンは名前の欄を見た。

 ステータスは運以外自分より高い。ウォンはそれを、ゴミ箱に投げ捨てると、自分のも捨てた。


「何をしてるんですか!まだ職業も決めてないんですよ!」


「いいじゃん、商人にでもなって勝手に破たんしとけ」


エルナがゴミ箱を漁って、自分のカードを探すのを見ながら、ウォンは他人事のように地面を蹴っていた。

ゴミ箱を逆さにすると、ウォンと同じようなクズステータスのカードが山ほど出てきた。そのほとんどがレベル1で、ステータスもどれも3桁目に届いている者はなかった。


「ないないないない・・・・・・あった!今度からは止めてよ!それと一つ聞きたいことがあるんだけど・・・」


「ん、何?」


「さっき言ってた村人Aって何なの?」


「え?・・・あれ?何だろう・・・すまん知らんわ」


言われてみれば、この言葉聞いた事があるのに、何処で聞いたのか、どういう意味なのか分からない。

だけど、確かなのは、ずっとずっと昔に聞いた言葉だという事だ。


「それよりだ、あんた半日以内に職業決めとけよ。それじゃ俺は帰るわ。あんたも男に気を付けてな~」


ようやく終わった。これで独り身になれた。誰かと一緒にいるのは、少し抵抗がある。


 それは、昔のトラウマもあるんだが、一番なのは報酬の山分けだ。こればかりは何とも言えない。パーティーだと、せっかくの報酬も人数分に分けられるし、相手が強いとさらに多く持って行かれる。だが、独り身だとどうだ。自分の報酬は100%自分の物なのだ。


 ウォンは役所から出ると、ポケットから金とゴブリンを倒したときに落としたドロップアイテムを手に持った。


「だいたい520ギルとアイテム、・・・これどのくらいの値段になるんか?」


 ドロップアイテムはゴブリンの角だ。悪くはないのだが、どちらかといえば、棍棒の方も持ってきていた方が良かったと後で後悔してしまうものだ。

 この街は、役所が顔のようなものだ。この建物を中心に円を描くように各々の建物は広がっていく。


 ウォンは、とりあえずそのドロップアイテムを質屋に鑑定してもらうことにした。役所からは、歩いて数分の所に開いているし、何件も開いているから冒険者は自分の気に入りの質屋に行く。また逆に、お得意さんに沢山来てほしい店の方は、相手によっては高く引き取ったり、物によっては安く買わせることもある。


「俺はいつもここだが・・・だれも来てないのは変わんないな」


 建物と建物の路地のような場所に、ウォンの気に入りの質屋はある。

 理由は簡単だった。誰も来ていない、それだけだ。


「おっちゃん!いるか?」


「あーいるぜ!今回はどんなゴミを売りに来た?」


「止めろ。そういう事言うのは。こっちが悲しくなる」


 これがいつもの挨拶になりかけている事に自分たちは薄々気が付いている。普通路地はジメジメして、暗いはずだがここは暖かく湿ってもない。いつもそう思いながらここに来るのだが、この中年の男は理由を教えてくれない。多分魔法か何かだろう。


「それじゃー、これ頼むわ。ゴブリンの角」


 ウォンは男に角を2個見せた。


「ほほー。左右両方揃っているのか、見た感じ、少し欠けているが悪くない」


 男はウォンから角を受け取ると、メガネを掛け鑑定を始めた。

 その間、店の様子を伺いながら、鑑定が終わるのを待った。そして、しばらくすると鑑定は終わったようだ。


「うーっし。おい兄ちゃん。こっち来な」


「そっか、決まったか。で?どんくらい?」


「そーだな。500ギルでどうだ?悪くはないだろ?」


 ちょっと物足りない気がしたが、これくらいだろうとウォンは黙って縦に首を振った。

 すぐに、アイテムと金は交換され、ウォンの持ち金は500ギル増えた。


「そんじゃ、またどっかで来るからなー」


 それだけ言うと、ウォンは男に一言挨拶して店から去った。


 あとやるべき事は、決まっていた。それは腹ごしらえだろう。朝の飯はあのエルナとかいう女に邪魔されて獲物をとり逃したし。その後のゴブリンだ。

 太陽はもう南に向いていた。どのくらい飯を食っていないんだ?たしか、昨日の昼からだろうか?


「という事は・・・あ、一日中何も食ってないんだ俺」


 路地から抜けると、大通りに出て飯屋を探した。

 よく見たら、5件に一個は飯屋がある。この通りはあれか?競い合ってるのか?


 一番手頃な店を見つけると、ウォンはその中に入っていった。そして、適当な席に着くとメニューから一番安い物を頼んだ。


「なーなー知っているか?王女が消えたらしいぜ」


「なんだそれ、またどっかに遠征討伐でもしてんじゃねーの?」


 隣の席から何やら気になる話が聞こえてきた。飯が来るまでの暇つぶしに聞き続けた。


「それもそうじゃないんだ。ここ最近王女の様子が変だったらしいって」


「どこがおかしいんだ?」


 少し気なって来たな。人に興味がない俺だが、さすがに王女とかには少しばかり興味がある。

 ウォンはもう少しもう少しとその耳を男たちに近づける。


「なんというか・・・説明しにくいんだが・・・」


「そうか、って、あれ?王女の名前って何だっけ?」


「あぁ、たしか、エルナ・パルデシアって名前らしいぜ」


 ふーん。そっか。・・・・・・ぁあ?今なんつった?エルナ・・・パルデシア・・・だと?


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