4 LEVEL1-4
「なんで、いつもなら・・・ハァ・・・素手で・・・ハァ・・・」
「はぁ?あんた素手でやろうとしてんのか?ふざけるのもほどほどにしとけよ」
ウォンはズボンを叩いて砂や草の種を落とす。
女は、ここに来たのは初めてのような感じで、街を見るやおどおどしている。
「私は・・・村人ではありません・・・違います」
女はボソッとウォンに聞こえる声でそう言った。
ウォンはそれを聞くなり、役所の方へ歩き出した。理由は簡単だった。ステータスの確認だ。何かしら戦闘があればすぐに役所に向かうのが、ウォンの日課になってしまった。
「どこに行くの?」
「あんたに名前を聞こうとしても無駄だわ。役所で通した方が占い師に聞くより速い」
二人は、役所に向かう。相変わらず大きな建物だと感心するが、どうもここの管理はウォンにとってあまり気に入る物ではない。全て、ランク付けで評価され、それに応じて対応も違う。例えば、ウォンの場合ランクFだから、一番左の受付に向かう。ランクが上がるごとに右にいき、対応の仕方も丁寧になっていく。だが、ランクFは最低限の事はやってくれるが、だいたいは押しつけだ。夕べのように丁寧語しゃべってくれる人もいるが、だいたいは適当にやって終わりだ。
「さーて、今回こそは上がるか?」
ウォンは受付に行くと、書類に職業の証明を見せた。すると、受付嬢はステータスカードとはまち針を差し出した。
待ち針をつまむと逆の手の指先にそれをチクリと刺した。そして、そこから流れた一滴の血はカードに落ちた。カードに乗った血はみるみるカード全体に広がり、カード書かれた枠に数字が浮き出てきた。
生命力:39
魔力:12
腕力:23
守備力:23
瞬発力:42
賢さ:50
運:20
LEVEL:1
Ex:39
ランク:F
「なんだ?あんま変わんな・・・おい!なんだこれ!運が下がってんじゃねーか!説明してみろ!」
ステータスの変化に納得のいかなかったのか、ウォンは受付嬢にそのカードを見せつけた。
「知りませんよ。んなこと。私たちが知る訳がないじゃない。別に運が下がる原因でも拾ったんじゃないの?」
運が下がる原因?
ウォンはそれを聞くと、女の方を見た。
「やっぱ、あんた何もんだ?さっき言ったよな?『私は村人じゃない』って。なんだ?疫病神か?それとも貧乏神か?」
「どっちも違うって!見てなさい!」
女はそう言うと、ズカズカと右の受付の方へ歩き出した。
「ステータスカード見せて!」
「すみません。職業証明はできますか?」
受付嬢は優しく女に言った。
しかし、それを証明できず、あたほたしていると、受付嬢はカウンターベルを五回鳴らした。
すると、女は後ろを振り向いた。そこには長い列ができていた。
「ないのでしたら、発行できますので、そこでお願いします」
受付嬢はそう言った。さすが、ランクが違うだけあって、対応の仕方も違う。
「ねー信じてよ!」
女は、まるでな自分が知らない事件に巻き込まれて無罪を主張するような、そんな態度をとっている。
「知らんし、あんたが強かろうが弱かろうが・・・いや、弱いんか。っという、まさか自分の職業も分からんて事じゃないだろうな?!」
まさか、そんな事もあり得ないだろう。だが、この服装はどう見ても、村人だ。
「じゃぁ、あんた村人でよくね?」
「それだけは駄目!」
女は、ウォンの言葉に強い反対意思を見せる。それだけの意志があるなら、もう少し違う物に見せても良いんじゃないか?
それより、ずっと思ってたが、こいつの顔どこかで見たことがあるんだよな。気のせいかもしれないけど、こいつの言ってる、『知らない方が身のため』と関係してるのか?
「面倒だなー・・・ったくあーーーー、お!あそこ行って来いよ」
ウォンが指で指したのは、普通の受付ではなく、ポツンと別の場所から孤立した受付があった。
女は周りを伺いながら、そろりそろりとその受付まで歩いて行った。
はっ。どうせ、村人だろ。何がいつもなら素手で倒せるだ。笑わせんじゃねー。
ウォンはそう思いながら、女が受付に歩いて行くのをニヤニヤしながら見送った。
「あのー・・・ステータスの確認をしたいんですが・・・」
「あ、はいはい。こちらにお望みの職業と・・・の前に取り合えず、これを」
受付から中年のおっさんが現れた。
おっさんは何か古い本を読んでおり、表紙の文字は掠れて何についての本かは分からなった。
女にカードと待ち針を渡し、おっさんはまたそれを読み始めた。
「・・・・・・イタッ・・・」
指先からプクリと小さい赤い血が出てきた。それは、カードに垂れ、ポタリポタリと落ちていく。
血はカードに染み渡り、文字と数字が浮き出てきた。
名前:エルナ・パルデシア
性別:女性
可能職業:村人・冒険者・商人・龍使い・拳闘士
生命力:54
魔力:35
腕力42
守備力:53
瞬発力:36
賢さ:46
運:10
LEVEL:1
Ex:0
ランク:F
「・・・・・・・・レベル・・・1?どゆこと?」
エルナは自分の職業を見て、愕然とした。
その様子を見て、ウォンが近づいて行く。そして、面白半分でエルナのステータスカードを覗き込んだ。
「どしどしたーー?何かあったのかーー?ってげっ」
なんだ?こいつもレベル1じゃねーか。笑わせやがって。それより、こいつのステータスが俺より上ってのが気に食わないな。
ウォンはエルナの肩を叩いた。
「そう言う事だ。商人か村人でも選んどけ」
ウォンはそう言うと、自分のポケットに突っこんでいるカードをもう一度見た。顎を触り、しかめっ面でエルナのと見比べる。運だけが自分より下と言うのが、幸いだった。
「うーんーがー低ーいー!!」
エルナはカードを見て、嫌そうに言った。
よく見ると、運以外だいたいウォンより上だ。
「まぁ・・・あれだ。商人は向かないんだな」
自分より運が低いエルナに半分嫌味でそう言った。
正直、この顔が結構面白かったのが印象的だったから言えたことだろう。