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冒険者へ LV.1から始まるファンタジー  作者: 森林樹木
ランクF  Cave of origin(原点の洞窟)
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31  LEVEL UP

事から2時間前・・・


 そこにあったのは、手紙二人宛てだった。

 もう一つの物は良しとして、一つはウォン宛ての物だった。


「もう一つは・・・変わった名前だな」


 サクラ・マツザカ。

 そういえば、王都から極寒の北の方には変わった名前の部族がいる聞いた事があったが、こいつもそこの奴なのか?


 それは、それとしてあの火竜を倒したのだ。そろそろあれが来ても良い・・・頃・・・では・・・。


「ッツーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 今度は頭痛まで来やがった。

 なんだ?体の痛みの上に、さらに頭痛と来た。これはもはや痛みを通り越して拷問だ。


「イッテーーーーーーーーーーーーーーーー!!!レベルアップの代償が痛みって何だこりゃあ?!」


 こんなもの、誰もが与えられる痛みと考えてみれば、毎日何処かで誰かが感じるモノ。どうして、皆こんなことしてるんだ?

 俺だって、これを早く知ってたら、早期に考えてたろうに。


 ウォンは、上半身砂ぼこり塗れ(まみれ)になりながら、転げまわる。

 だが、ここの熱さのせもあってかなかなか痛みは治まらない。


 穴の中から、消えていく一つの家族を見る。そう言えば、ドロップアイテムを拾い忘れてたと思い出した。


 しばらくして痛みが引くと、火竜の死体と火竜の幼体の浮いていたマグマの所まで行く。

 それを見ながら今回の勝因を考えてみる。


 鳥籠。天敵のない場所。そうか、とウォンは確信した。


「こいつはレベルが低かったのか・・・」


 回想の低い場所には、強い魔物がいると決めつけていた。だが、違った。

 詳しく言えば、そもそもが強いだけ(・・・・・・・・・)で天敵と呼べる敵とも戦った事もない火竜はレベル8の俺と互角であった。又は、ステータスが同じくらいだったということだった。


 上にあるあの入口のような場所は何なのかが気になる。

 火竜の胴体があった場所に落ちているドロップアイテムを拾うと、マグマに沈んでいったモノは諦めた。

 ポケットに例の二つを入れようとした時、あの石がひっかかった。


 あの時は使えなかったが、今はどうなるだろうか。

 左肩の痛みはまだ続いている。

ウォンは石を左肩に添えた。

すると、不思議な事に痛みは引いて行く。ここでようやくウォンは確信した。


多分、この石は魔物を倒したことで初めて「力」を発揮する。「力」と言うのは、体の修復だろう。修復と言っても、無くなった腕を生やしたり、砕けた骨を直したりするだけで、呪いを解いたりすることはできない。これはエルナから聞いた事だ。


「便利だろうけど・・・魔物関由は面倒くさいな」


 めんどくさいが、戦闘にあたっては魔力要らずの無くならない回復アイテム。使い捨てのポーションと比べたら、有り難い物だ。


 だからだろう。トロールが欲しがったのは、それが理由だろうな。と、するとゴブリンがこっちに来たのも説明できる。しかし、グールの姉弟やあの火竜は欲しがろうとしなかった。多分、賢さが高い魔物は、理性を保てるという事だな。


 問題を変えよう。魔物が欲しがるものは何だ?魔物を倒したことで「経験値」のような何かを得ているのか?いや、違う。それを回復に、経験値を得たところで回復は出来ない。とすると、この石は魔物を倒したことでこの石に吸い取られた「魔力」を「治癒力」に変換しているのだ。


 一人で納得すると、もう用はしばらくないと石をポケットにしまった。


 それはそれとして、それじゃあグールに勝てた理由は何なのかは分からなくなってきた。

 向こうから殺してきたのなら、それなりに強いはずだ。いくら弱点の鉄でも、ガキ一人を喰い、俺の腕を喰ったのだから、体力がない事にはならないはずだ。いや、レベル3の俺が、勝つ負けるなんて話じゃない。その前にグールは・・・いや、今更考えても過ぎた話だ。止めよう。


 ただ言えるのは、ウォンは「勝負運」が意外と強いと言うだけだった。


 手紙も、あの上に昇ってから読むとしようか。それにこの「サクラ・マツザカ」も気になる。

 壁に貼ってある、効果のなかった、使えなかった札を剥がし集めた。


 結果、手元に集まったのは元の10分の1にもならない数になってしまった。それも、大半は補助系のもの。「浮」「操」「擬」の3種類の副属性ばかりだ。


 ならば、やってなかった事。自分に貼ってみてはどうだろうか。

 だが、札はそんな簡単な物ではなく、どの属性にも含まれない生物は札を貼っても無駄だった。試しに例の言葉を唱えても効果がないのが証拠だ。


 って、ことは結局こうなる訳だ。


「いやーーーー。レベルアップってのはこういうのがうれしいよなーー」


 先ほどよりも、火竜と遭遇した時よりも簡単に昇って行く。

 あの石を使えば完全に体力も回復だ。まぁあの魔物を倒したから得られた治癒力だろうが、これさえあれば無限に戦闘できんじゃね?


 そう思いつつも、火竜への札の総攻撃のせいで壁の岩が脆くなってしまっている。

 岩の表面に手を触れれば、亀裂で割れた部分はすぐにではないが、壊れてしまう。


「出来るだけ、慎重に行かんと・・・っな!!」


 これは、力の調整が必要だな。

 ウォンは岩を掴むと慎重に、次の岩へと腕を伸ばす。


 しかし、意外と途中からの亀裂の入っていない物は多く、簡単に昇り切る事が出来た。


 昇り切ると、腰に手を当てウォンは「やり切った」とばかりに唸った。だが、そこは地獄とほど等しいほどに熱いものだった。

 灼熱地獄。その言葉が一番合っている。


 熱という物は上に昇る物だと本で読んだことがあった。そう思い出しながらウォンは穴の奥を眺める。


「それより、奥はただの本当に壁なんだな」


 ウォンの言葉通り、そこは壁。違うと言えば、壁の造りが違う。


 いつか、ダンジョンの探索に昔のパーティーに連れらた時に、次なる階層への鍵は簡単な物ではなかった。だが、これの壁に掛けられている鍵を見る限りそれは、もはや誰からでも解けるモノだった。


「まぁ、別に解けるに越したも事はないが、ここから次に繋ぐ階層の奴がないってことは、ここは最終階層って事なのか?」


 最終階層が、戦闘経験皆無のドラゴンってどうなのだろうか?

 そのうえ、敵なしの子持ちとなると、これから来るかもしれない上級者たちに何と言えばいいのやら・・・。


 とりあえず、鍵を解くと、63階層に昇った。


 そしてその階層に行くと、汗を滝のように流れたあの熱さが、元からなかったように感じなくなってしまった。


「・・・領域の様なもんでもあんのか?」


 周りを確認する。

 64階層からの明かりは感じる。敵は今のところない。

 だとすると、読むなら今の方が良いだろうな。


 ウォンは、ポケットの入れていた手紙を開いた。


 ウォン・シャルディック


 私は君の事を知っている。

 君は、なぜ知っているのだろうと思うだろう。

 だが、彼らは知っているんだよ。運命という物は、明日の事も来年の事も10年後100年後、一人一人の物語を知っているんだよ。

 私がこれを書いているのは、私が彼らに殺される七日前だ。

 娘にも読んでもらえただろうか?

 フフ・・・違うな。

 突然だが、娘に私の生死についてはまだ言わないで欲しい。

 ただ、娘には「遠い場所にいる」とだけ言っておこうと思う。だから君は娘の「私の捜索」の手伝いをして欲しい。

 二度と会えぬ私を探してくれる娘に私は泣きつきたいものだが、それは叶わぬ夢。

 私は君を生き返らした理由だが、それは君に対する贖罪だ。

 君は憶えていないだろうが、私は前世の君を知っている。君の自殺の理由も。

 だから、いや、だからこそ君には選んで欲しい。

 このままでいるのか。それとも強くなりたいのか。

 娘は君の成長の大きな鍵となる。

 私はこの選択肢だけは見ていない。君の選択が間違っていない事を願うとしよう。

 PS、娘は絶品の美少女だ。君に見せるのもおこがましいほどにだ。

 だから、仮に娘の協力をするのだとしたら、娘に何かあったら許さんからな。協力しなくても、何かあったら君のせいにするからな。許さんからな。


 マナブ・マツザカ


 これを読んだウォンの感想は・・・


「選択の余地なしだな」


 協力しなくても、このサクラ?って奴に何かあれば、俺の責任。逆も然り。

 それに、この親バカということも分かった。

 つか、何だよ、途中の「フフ」って、気味ワリー。

 ウォンは、次にサクラ宛ての手紙を手に取る。


 やはり、これも筆記者の頭のレベルが低いのか、ただのひどい親バカなのか文におかしなことばかり書かれていた。


「俺は、こんなアホに助けられたのか」


 半分以上の落胆もあるが、助けられた以上・・・というか、あの時言われた言葉があるではないかとウォンは思い返す。


『王都から西端に位置する森にあるダンジョンに来て欲しい!そこに苦しんでいる者がいるんだ』

『私の娘だ』


「やっぱ、選択一個じゃねーか!糞ったれ・・・」


 これはもはやウォンにとって選択肢とは呼べない物だった。

 恩は返す。それはウォンにとってポリシーでもある。借りた恩は返す。そうしなければ後から面倒な事になる。昔から似たような経験をしてきたウォンにとって変わらない事実だ。


「魔物を倒せば、回復できる。回復した体でまた魔物を倒せる」


 それは、一生できる狩のような物だ。

 そう嘲笑いながら1階層まで昇って行くのだった。



 その頃、宿屋ではクルスが未だ眠っていた。


 ウォンとエルナが出て行ってから数時間が経っているが、意識が帰ってこないクルスには関係のない事だった。

 だが、それでも生きている以上、誰かに胸を刺されれば殺される。紛れもない事実だ。


 窓は開きっぱなし。月は雲に隠れ、カーテンを開けていようとも閉めていようとも、それは変わりのないことだ。


「全く・・・このおっさんは、いつまでエルナ姉ちゃんをたぶらかす気だ?」


 外から若い声が聞こえた。

 それは2階でありながらも、あっさりと跳び窓枠に乗ることが出来るものだった。


「せっかく、他の兵士は、全員王都に帰してやったのに、お前とあの弱っちーのが生きてたら意味ねーっつーの!」


 声は、怒りと高揚がまざり、憤怒に等しい物があった。


「俺はなー、あんたの事が大っ嫌いなんだ・・・だからな、あんたを殺して―――」


「誰だ!」


 扉から、宿屋の主と思える人物が現れた。

 金で雇われたのだろうか。足音は聞こえなかった。まさか、ずっとそこにいたのだろうか?


 声の主は、舌打ちをすると窓から飛び降り逃げて行った。


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