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冒険者へ LV.1から始まるファンタジー  作者: 森林樹木
ランクF  Cave of origin(原点の洞窟)
26/32

25  LEVEL8-4

 数十分前~


 それは、エルナと幽霊の娘の捜索を始めようとした矢先のことだった。

洞窟の外から何やらキーンという高い音がした。その一定になる金属音に気になり、見に行くと何やら赤く光るものがあった。


 その音は、多分、洞窟に降りる時にエルナが気になったのはこれのせいだろう。

 なぜ、今さっきまで気が付かなかったのかは今頃考えてもしょうがない。ウォンは、エルナの捜索よりこっち音のする方に近寄る。


 何がある訳でもないが、それはしばらくすると光り、またしばらくすると消える。音も、光が輝くにつれ音も鳴り、光が消えると音も鳴り止む。

 多分、俺が先ほど気が付かなかったのは、これのせいだろう。

 その光は、洞窟の入り口から数メートル離れた岩の積んである場所の傍の地面にあった。


 掘ってみたが、その光は消えることなく、また現れた。

 それよりも、これは何なんだ?

 見た感じ、何かの発光体がここで光っているだけにしか見えないのだが。


ウォンは、腕を組み、「うーーん」と唸って見せる。


「見つけたぞ・・・ウォン・シャルディック」


 後ろから聞き覚えのある女性の声が聞こえた。その声はわざと隠れていたらしく、木の裏から姿を現す。


「なんでこんな所に・・・」


 そいつの正体は、ルシカだった。


「まだ中に入らなくてよかった。お前を最も苦しむ。誰もそうそう味あわない苦しみをさせてやる!」


「ムーブメント!!」


 突然、ルシカはウォンに右手をかざしそう叫ぶと、ウォンに向かって突撃してきた。

 ウォンは逃げようとしたが、足が動かない。


 足元を見ると、土が足枷をするようにウォンの両足を動かそうとしなかった。


「くそ!札か?!」


 足を必死にもがくが硬くて無駄だ。


「無駄だよ!あんたはここで・・・死ぬ!!」


 ルシカはウォンの胸に手を置いた。


「今日が命日だという事を願うよ! じゃーね」


 次の瞬間、ウォンの真下に魔法陣らしき物がが展開された。その光はあの先ほど光っていた発光体の光に似ており、そして、ウォンの体はそれに引き寄せられていた。

 落ちて、消える瞬間、ルシカはこう言った。


「目的達成ね!」


 痛くはないが、地面に体が埋まっていく。

 しかし、視界がなくなってしまったその瞬間、何か熱い物が背中に伝ってくる。すると、どことも分からない壁からウォンは出てきた。


 尻餅をついて、ウォンはジンジンと痛むその尻を摩る。すると、ジワジワと尻と手が熱くなってくる。


「アッツ!何だここ!」


 溶岩があちらこちらに吹き出し、今にもこちらにも飛んで来そうで怖い。

 上着ととりあえず着ていた服も脱ぎ、上半身裸になったのに、まだ暑い。


 出来るだけ、マグマや火が寄り付かない壁に体を押し付ける。


 駄目だ。


 周りの温度に熱されて、壁や地面に触るだけで火傷しそうになる。

 背中と指が少し火傷しそうになり、すぐに引っ込めた。


「そうだ!水水!水で何か役に立つ札は?!」


 札で、「水」と書かれた札を探し出した。

 だが、役に立つもの無さそうだ。あるのは、「浮」「弾」「操」「死」「呪」「爆」「斬」「擬」の8つが書かれた札が2~3枚ずつ入っている。


 という事は、「水」を含んだ他の五大元素を含めると、総数で数十枚では済まなそうだ。

 見ただけで数十枚に見えたのは、札自体があまりに薄いためなのだ。2~3枚の札が1枚に見えたりした。


「使い物にならねーな」


 捨てはしないが、少しばかり乱暴に箱に収めた。

 じゃあ、風ならどうだろう?


 この熱気を「火」と「斬」の札で斬りつければ、少しは涼しくなるんじゃないか?そんでもって、出口も見つかるんじゃ・・・。


「口より行動だろうな」


 ウォンはその熱にやられた金属の箱に慎重に触り、ふたを開ける。

 さっきまでは、何とか出来たのに、やはり時間が経つと金属は熱を持ってしまうな。

 とりあえず、熱いのを堪えながら箱からその札を探し出す。


「これでいければいいんだが・・・っておい」


 これってどう使えば良いんだってんだ?


「火」なら燃えるモノ。

「木」ならもちろん植物だろう。

 ならば、「風」は何にはっ付ければいいんだ?

 空気か?空気ってモノなのか?


「そういえば、あれはできたんだよな・・・」


 蔦にはっ付けた札を投げ、唱えたがとりあえず出来た。

 ならば、空気さえモノ(物質)と認識すれば、出来るんじゃないか?


「じゃぁ、物は試しだな」


 そう言うと、ウォンは札を丸めると、中央に向けて投げた。


「スイッチ!」


 一瞬、息が出来ないほどの熱風がウォンに襲いかかる。

 喉がやられるんじゃないかと思ったが、中央に背を向けていたおかげで背中が熱いだけで済んだ。


「くっそ!!、めっちゃアチーー!!」


 それもすぐ終わり、最後には熱風は止んだ。

 ウォンはその場に立ち上るうと、急いで辺りを見回す。が・・・


「こりゃ、俺の運も、今日の分は使い切ったな」


 辺りはマグマの水溜り?いや、マグマ溜りになっており、移動することが出来ない。


「やばいな。急いで見つけなきゃ・・・ん?」


 何か、目の前にあるマグマが突然、沸騰が始まった。それは普通の事かと思ったが、それはどんどん大きくなり、それは現れた。



現在~


「どうして、そんなことが出来るの!」


「分かりません。分かるのは、この力は遺伝と言うだけです。とーさんからの話だと、私は小さい頃から黙ってやる事くらいはできました」


 黙ってやることが出来たって事は、無詠唱が出来るって事?!


 威力が強い魔法に事にかなり驚いたのか、その幼さで無詠唱ができる事に引いたのか、エルナは苦虫を噛んだような表情で、サクラの顔を見た。


「サクラちゃんはその64階層の人の場所まで行ける?!」


「地図ありますか?」


「うんうん?ないよ?」


「じゃあ、・・・取引です」


 サクラは、歩きながらエルナの顔をみる。

 その取引と言う言葉はこの少女に似合わないとエルナは思ったが、今はその取引の言葉の方が気になった。


「それって何?」


 二人は立ち止まると、真剣な眼差しで互いを見る。


「おにーさんはとーさんを一緒に探してください」


 おにーさん・・・か。まだそれを言うのね。顔から見て私の事を女とは思えないのかしら?

 それを堪えると、エルナはのその気持ちを棚に置いて、話を続ける。


「その前に、あなたのとーさんって人はどんな人なの?」


「私のとーさんは・・・まお、あ・・・えーっと、そのー」


 今、この子。「まお」って言わなかった?それって・・・魔王のこと?

 自分でも思いもしない言葉がエルナの頭を過る。


「えーっと・・・そのとーさんって人がどうしてここにいるの?」


「私がいる所には、必ずとーさんが来てくれるから!」


 なるほど、この子は天然なのね。


「あなたが迷子になったら、いつも来てくれるの?」


「うん!いつか移動魔法に失敗して変な所に行った時も助けてくれたんだもん!・・・でも、いつまで待っても来てくれないの」


 魔王に娘がいたなんて話を聞いた事がない。

 ただ単に、名前に「まお」が最初につくのかもしれないし、言葉をつぐんだのも何か世間では知られちゃいけない人なのかもしれない。


 ちょっとしたことで誤解してしまうのは良くないとエルナは反省した。


「それじゃあ、探そっか。その代わりだけど、その64階層にいる人の命を助けることはできる?」


「さっきので体力はもう半分もなかったけど・・・せめて頑張ります!」


 半分もないか・・・いける・・・グールも倒したウォンだもん。大丈夫、それまで生きてくれる!!!

 そう思うしかエルナにはできなかった。いや、まだできることはある。


「だけど、ごめんね。私の方を先にしていい?」


「うん、いいよ!とーさんならいつでも来てくれるから!」


 とりあえず、エルナは鞄から瓶を2つ出した。

 それをじっと見ると、一つをサクラに渡した。


「これ飲んどいた方が良いよ!中級の魔物までなら寄り付かなくなるから。結構、おいしいよ?」


 しかし、サクラがそれを飲んだ時、すぐに吐き出して瓶も落としてしまった。

 まぁ、ちょっと刺激な物も入ってるし、おこちゃまには早かったか?


 エルナは、瓶の中の液体を飲みながら、横目で舌を出して擦ってるサクラをクスクスと笑った。


「ダメかも・・・というかこれ嫌いかも・・・ゴメンね」


「いいよ。お金は消えないもん。どこかで戻って来るから」


 その意味を理解できないのか。サクラは首を横に傾げた。


「まぁ、そのうち分かるから」


 瓶にコルク蓋をすると、それらを鞄にしまった。

 そして、サクラにもう一度聞いてみた。


「ウォンの場所って分かる?」


 そう言うと、サクラは真下から少し右にずれた方向に指を指した。

 まぁ、64階層っていうから、本当に真下なんだろうな。


「ここから一直線に行けたりしないかなー?」


「私にそんなことが出来ると思ってるんです?」


 ですよねー。さすがに出来ないよねー?


「障害がなければ、一応そんぐらいなら簡単なんだけど・・・」


 出来るんかいっ!!


 エルナは、何というか、すごい突っ込みたくなったが、まぁ黙った。

 まずこの4階層からどうやって見つかってる20階層までとりあえず降りようか。


「地図は持ってる?」


 持ってないって!

 エルナは、少し怒る気持ちを抑えながら、口をつぐむ。


「・・・それじゃぁ、まず5階層行こっか」


「うん」


 こんなあどけない少女をこんな危険地帯に連れてきて、クルスに知られたらなんて言われるんだろう?


『エルナ様。とりあえず、孤児院まで連れて行きましょう。そして黙りましょう』


 うん、あの人には黙りましょう。

 じゃあ、ウォンならなんて言うんだ?・・・いや止めよう。アウトな発言しか返ってくる気しかしない。


「おにーさんが探している、その人ってどんな人なの?」


 とうとうエルナはしゃがみ、サクラの顔を半ギレ状態の笑顔で見つめる。


「ねぇ、私は女です。『おねーさん』なんですけど?」


「へ?違うの?だってそのむn―――」


「皆が皆、大きい訳じゃないのよ?憶えといてね?」


 エルナは、サクラの頭をポンポンと叩くと、立ち上った。

 この時、サクラは悟った。「あの笑顔は、二度としゃべってはいけない顔だ」と・・・。


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