24 LEVEL8-3
さて、結果から言おう。
洞窟の入り口の前に着いた。というか落ちた。
山の手前に大きな自然に出来たこの大穴はまるで、ウォン達を迎え入れるかのようにある。
そして、そのウォンとエルナは、その洞窟の目の前にある大木の枝に落ちた。
理由は簡単だ。
上空で二人があの札を貼った木の上で移動中にエルナの注意が反れたのだ。
もう少し、最後まで洞窟の前で降りてからそっちに目を向ければ良い物を・・・。
全く、人間の「無条件反射」という物は恐ろしい。
「おい、さっきのはもう少し我慢とけ」
全くだ。7歳でもこのぐらいは耐えれるぞ?いや、無理か。
ウォンは、何とか木から降りると、真上で枝を蹴ったり叩いたりしてバタつかせているエルナを見上げた。
幸い、松明は地面に落ちており、この木に燃え移ることはなかった事はよかった。
引火したところで何がある訳じゃなさそうだが、まぁ、燃え移るのは言い過ぎたか?
「ちょっと!助けてよ!」
「冒険者レベル3だろ?そんくらい自分でやれるだろ?」
さて、思った事も言った事だし、行くか。
ウォンは、後ろにある例の洞窟の入り口の前まで来た。
なぜだろうか。このデカい口から悪寒しか漂ってこない。これはあれか?さっきまで夏の暑さにやられたから、突然の洞窟の寒さに体の体温が一気の下がったせいだろう。
未だ、木の上で暴れているエルナを呆れた目で見る。
こいつを助けた方が良いのか?
「おーい。大丈夫かー?・・・」
「う~~ん・・・う~~ん・・・う~~ん」
聞こえないようだな。そういえば人間って、好きな言葉より嫌いな言葉気になっている言葉の方が耳に入りやすいらしいな。
「・・・・・・まな板」
「ぁあ?」
よろしい。聞こえてるな。
突然の険しい顔になったエルナに退いたが、こいつに会って初めてキレたことに、「軽いな」という感想しか浮かばなかった。
「とりあえず、5秒で降りろ」
「えぇ?!」
「じゃなきゃ、どこの誰ぞに強姦にあっても、俺は無視して行くぞ?」
それを聞くと、エルナは必死な思いで木に腕をしがみ付きながら、ぶら下がった。
まぁ必死なのかはよく分からないが?
それはそれとして、ようやく尻餅をついてなんとか地面に落ちると、エルナはこっちに走って来た。
「それじゃ、行こ?」
さっきの態度はどこに消えたのやら。
エルナはウォンの背中をバンッと叩くと、そそくさと中へと進んでいった。
さて、問題だ。このまま俺が黙ってここに居たらどうなるだろうか?
実験だ。
30秒後・・・
なんと、あいつは未だに気が付かないようだ。
しかし、それも数秒で気が付くだろう。
ウォンは座り込み、傍に落ちている小石を蹴飛ばした。
5分後・・・
「あいつはアホか?馬鹿か?」
あいつは、人の気配の有無さえ角印さえできないのか?
それとも、あいつは俺の事を何とも思ってないのか?
さて、待つか。
そう思いながら、ウォンは軽金属の箱にある札をまるで札を数えるかのように指で弾いていた。
30分後・・・
「さて、俺も行くか」
これは決してエルナの事が心配だとかそんな事ではない。
俺がここにいるのも飽きてしまっただけだ。
帰っても、クルスの事もあるし、あのよく分からん幽霊の男の娘の件もある。
地図もなければ、剣やいつものダガーさえない。あるのはこの何十枚の札くらいだ。
残念な事に、このオリジンケーブは攻略が完了されいないのだ。
それもこの名前の由来なのだろうか?
そこはどうでも良いのだが、ようやくたどり着いたかと思えば、新たな道が現れるのだ。そして、またたどり着けると、その壁は崩れ、新たな道が姿を現す。
敵自体は弱いと聞いたが、それは強い奴からの視点であって、特に戦った事のないウォンからして見れば何とも言えない。
洞窟の中には、確か面倒な魔物が階層の最後にいたよな。
まぁ、今の所、階層も21くらいまで見つかったらしく、20体のその面倒な魔物も倒されたらしい。
「さて、スライムくらいはここにいるんじゃないか?」
と言いつつも、手にあるのは使い捨ての札くらいで、剣みたいなダガーとかはない。
せめて戦闘系の最弱の魔物でいないものだろうか?
言っていることと、考えていることが違うウォンであった。
「だが、まぁ。・・・行くか」
せめて、鼻から地竜なんてのがでなければ、いいのだが?
さてさて、私はなぜここにまで来てしまったのだろうか?
「ここどこーーーーー?!?!」
エルナは、ただ今、洞窟の奥地に来てしまっている。
未だ、魔物にもぶつからずにいたのは奇跡と言えるだろう。
エルナは、蹲って丸まった。
後ろにはウォンの姿がない。先ほどから話しかけていたのは無視していたのではなくそもそもいなかったことに気が付いた時は、さすがにショックだった。
顔も真っ赤になるが、これを見せてウォンに言われる言葉は、だいたい想像がつく。
『・・・・・・もう松明要らないな』
違う。何かが違う。ウォンはそんなこと言わないだろう。
なんだ?先ほどからの会話からウォンはどんなことを言っていた?
『・・・・・・まな板』
う~~ん違うな。こればかりは違って欲しい物だ。
カツン・・・カツン・・・カツン・・・
奥地から誰かの足音が聞こえる。
誰?!誰なの?ウォンなの?先に行ってたの?
「と~さ~ん?どこにいるの~~?ねぇ~~どこなの~~?」
やばい、これは危険な香りがする。
この声は幼い少女のモノだ。こんなところになぜいるのだろう?
いや待て、もしかしたら魔物が誘惑しているのかもしれない。
警戒しつつ、エルナは手に持っていた松明を声のする方へ投げつけた。
すると、小さい声で「ひぃっ?」なんて声が耳に入った。だが、まだ警戒を解いてはいけない。暗い所で生息している魔物でも火には驚くだろう。
エルナは立ち上ると、その声のする方まで壁に伝って歩いて行く。
「と~さ~ん?」
声から考えるに、まだもう少し先だろう。エルナは松明の光に向かう。
意外と、その声の主の場所は近く、すぐに見つかった。
正体は、幼い少女でフードを被っている。服はあまり見たことのない物だ。
しかし、まだ味方とは限らない。エルナは挙動不審で怯えているその少女に話しかけてみる。
「あなたはどうしてここにいるの?」
「ここはどこ?」
一つ目の質問からからぶった質問が帰って来る。
というか質問返しですか?
声からは、まだ先ほどまで泣いていたような少し声が変になっている。しかし、過呼吸ではないのとその汚れた靴から見ると、随分歩いていることが分かる。
「フーーー・・・ここはオリジンケーブってとこなんだけど。あなたは誰?」
「オリジン・・・ケーブ?」
お願いだから、私の質問にも答えてくれー。
エルナは上っ面の笑みで、さらに質問を掛けてみた。
「あn―――」
「お、兄さんの・・・名前は?」
お兄さん?
その言葉にを聞くと、一気に後ろを振り返る。
目の前にいる私ではなく、なぜ後ろにいるウォンに話かけるのだと。
そこの時点、怒りは3分の1まで上がっていた。
しかし、後ろにあるのは、どこまでも続く闇だけで何もない。
「ねぇ、お兄さんって・・・まさか私の事?」
少女は首を縦に振った。その表情には悪気はないとすぐに分かった。
悪気がないと分かっていても腹が立つことだってある。
「ねぇ・・・ごめんね。私は女なんだけど・・・どうして私が男だと?」
「それは・・・その・・・む、むn―――」
「やっぱやめて!言わなくていい!!」
少女の口を押え、その解答を拒む。
そして、ようやく聞きたかった質問を投げかける。
「えーと。あなたの名前は?」
「松坂 桜じゃなくて・・・サクラ・・・マツザカ・・・です」
サクラ・マツザカ変わった名前ね。
名前からは、どこの地域の者かは分からない。
それに最初に言った名前。姓と名を逆に言った。間違えたのか?いや、普通間違えることはないだろう。自分の名前をそうそう間違えることはないだろう。
「サクラ・・・ちゃんはどうしてここにいるの?」
一番聞きたかった言葉だが、どうしてもその名前についてそっちの方が知りたく思えた。
多分、この少女サクラ マツザカは魔物ではないだろう。
これは確信が持てた。
さすがの魔物も、魔法で自分の体を人の姿に変える事も出来る。が人間の名前にそんなおかし物を使う魔物はいないだろう。
「分からない・・・です」
「一応聞くけど、サクラ・・・ちゃんは女の子なんだよね?」
「・・・うん」
わーー腹が立つなー。
そろそろこの笑顔も引きつって来た。
サクラはフードを深く被ると、立ち上った。
「おとーさんを知らない?」
「ごめんね。私は知らないなー?」
こんな時なら、ウォンはなんて言うんだろう?
『あぁ?とりあえず来た道帰れ。』か
『捨てられたんじゃねーの?よかったなーようやく親の束縛から放たれたなー』
みたいな事でも言うのかなー?
あれ?私は何を考えてるの?この数日で私はウォンの何を知ってるっていうの?
「お兄さんは、どうしてここにいるの?」
お兄さんじゃない。おねーさんだ。あとでそこだけは躾けておこう。
「へ?・・・そう!ウォンよ!あの人を置いてっちゃって!私ったら!」
「ちょっと待ってて」
そう言うと、サクラは地面に手を置いた。
そして、落ち着いたのかサクラは深呼吸をして目を瞑り、囁いた。
「ライフサーチ」
エルナから見るとただフードを被った少女が地面に手を置いて膝をついているかのようにしか見えない。
「ここら辺の近くには人は一人。あなたの物ですね。ですが、この階層には・・・やはりあなたしかいません」
「そっか・・・黙って帰っちゃのかな?」
ひどいな。
「ちょっと待ってください。この階層にはいませんが、下の階層、64階層くらい下に一人、いましたけど、もうそろそろで死にますね」
その死にそうって・・・まさか!
エルナは真剣な顔になった。
「どうしたんですか?」
「ねぇ、あなたは・・・レベルどのくらい?」
こんな少女に何を聞いてるんだ私は?している訳がないだろ?!
エルナはサクラに視線を送る。だが、サクラは突然フードを外しすと、近くに落ちていた少し大きめの石を見た。
「レベルってよく分からないけど、これくらいは普通に出来るよ」
そう言うと、サクラは石に手をかざした。
「ブレイク」
次の瞬間、さっきあったその石は木端微塵に破壊され、砂になってしまった。
エルナの顔に汗が伝う。
「・・・あなたは・・・何者なの?」




